Chateau de Beaucastel

〜シャトーヌフ・デュ・パープの、品種別平行テイスティングにトライ〜  

(Courthezon 2005.3.22)


 

 

 ソムリエ試験勉強で泣かされた一つ(?)が、シャトーヌフ・デュ・パープの13品種だった。ボルドー、ブルゴーニュの暗記でかなり頭が疲労してきた時に挑むシャトーヌフ・デュ・パープのページには、聞いたことのないような品種がズラリと並ぶ。どうしても最後の2〜3品種が毎回記憶から消され「なぜこんなに植えるのか?」などという、全く自分勝手な恨み言が出たものだ。しかし「自分の舌で13品種の違いを実感したい」と思い続けていたのも事実で、それが今回やっと、シャトー・ド・ボーカステルにて適ったのである(それでもテイスティングできたのは11種類であったが)。

 

 最初にもう一度、13品種を振り返っておきたい。

 

(赤)

グルナッシュ・ノワール、シラー、ムールヴェードル、サンソー、テレ・ノワール、クーノワーズ、ミュスカルダン、ヴァカレーズ

(白)

グルナッシュ・ブラン、ルーサンヌ、クレーレット、ピクプール、ピカルダン

 

 しかし品種を書き出していると、これらを畑で見分け、それぞれに合った手入れをしていることに、まずは驚いてしまう、、、。

 

テイスティング

今回のテイスティング銘柄は以下、全て2004年(テイスティング順に記載。テイスティングしたキュヴェはマロラクティック発酵中であったり、また瓶詰め前のワインは一日単位で味わいを変えていくこともあると聞く。よって以下に記す各品種に対するごく簡単な印象の違いも、数ヶ月後に同じキュヴェをテイスティングしたら異なるものになっているだろうことを、一応お断りして)。

 

(白)

 マルサンヌ(シャトーヌフ・デュ・パープの13品種には含まれない)

レモンの皮のような、少しオイリーなニュアンスと余韻に残る苦み、そして鮮烈な酸

 ピクプール/ピカルダン

マスカットや黄色いリンゴを囓っているような、果物そのものの美味しさ、親しみやすい酸

  クレーレット

青リンゴや白桃のみずみずしさ、余韻に残る僅かな苦みと、親しみやすい酸

  グルナッシュ・ブラン

熟した洋梨や少しの青いハーブ、ポワロー葱などの根菜のニュアンス。石鹸のような少しオイリーなニュアンス

  ルーサンヌ(樹齢の若いもの)

オレンジの花、とても熟したマスカットやリンゴの蜜、青いハーブ。丸みのある口当たり。

  ルーサンヌ VV

樹齢の若いルーサンヌより濃厚なフローラルさ(椿、ユリなど)、丸く凝縮した甘味、余韻に残る細長い酸

 

(赤)

  テレ・ノワール

ガリーグ(特にローリエ)と漢方を混ぜたような野趣

  サンソー

上記のテレ・ノワールの印象に、果実味と挽いた黒コショウ感が加わり複雑さが増す

 クーノワーズ

巨峰の濃厚さ、ガリーグの奥に、はっきりとしたミネラルや酸。

  シラー

フローラルさが抜きん出ている(特にスミレ)。他に鉄っぽいミネラルや、ホールの黒コショウ、丁字。なぜかポイヤックに通じるようなミルクっぽいニュアンス。

  グルナッシュ・ノワール

黒い果実の重厚さ(特にブラック・チェリー)。チョコレートのような細かく旨味のあるタンニン、そして余韻のアルコール感の強さと長さ。

 ムールヴェードル

上記のクーノワーズの印象と共通点があるが、よりスポイシーかつ、重心が重い

 

コート・デュ・ローヌ・クードゥール・ド・ボーカステル 1989

 上記の各キュヴェが、ボーカステルのどの銘柄に用いられるのか、またおおよその比率などは伺っていない(現時点で完璧に決定されているものでもないだろう)。だがやはり主品種として有名なものは一言で言えば「複雑性」が増し、またこれはあくまでも私の個人的な感想だが、高貴さとフローラルさというのは時に密接に関係していると思う(特にジュヴレイ・シャンベルタンやヴォーヌ・ロマネをテイスティングした時、この関係を強く感じる)。しかし一方で、私が名前を忘れがちな(?)品種の個性も強烈であった。ともあれこれらの違いを熟知してアッサンブラージュできる経験に、改めて感服である。

 

 ところで今回は、この「品種別」のテイスティングの他に、シャトー・ド・ボーカステルが提供してくれたテイスティングは、

  ペランの一連のラインナップ別テイスティング

  コート・デュ・ローヌ・クードゥール・ド・ボーカステルの垂直(2003、2002、2001、2000、1999、1998、1997、1996、1994、1989)

  シャトーヌフ・デュ・パープの垂直(ボーカステル、2003、2001、1998、1994、1990、1986、オマージュ・ア・J・ペラン 2001)

だった。

シャトーヌフ・デュ・パープの垂直では、2001年までは熟した黒い果実のニュアンスが圧倒的だったが(2004年の品種別テイスティングで感じた各々の個性が果実味に内包され、何か一つだけの香りが突出して感じられることはなかった)、1998年になってやっと香水様のフローラルさやスパイシーさ、少しのアニマル感が果実味を凌駕し始め、ワインが少しずつ微妙なニュアンスを持ち始める。この傾向は1990年で一旦中断するが(おそらくミレジムの持つ力ゆえ、熟成がゆっくりと進んでいるのだろう)、最終的に1986年でやっと、黒トリュフのようなクラリとくる複雑な官能も生まれ出す。ミレジムの個性の違いを余り考慮していないコメントではあるが、生産者のカーヴというワインにとっては最高の環境で、ボーカステルのシャトーヌフ・デュ・パープはこれくらいの速度(?)で熟成が進んでいる、という目安にして頂ければ、嬉しく思う。

 

 最後に、この待ちこがれていた品種別試飲を提供してくれたシャトー・ド・ボーカステルと、アポイントを取ってくださったカプリス・ド・ランスタンのジェラールに、この場を借りてお礼を申し上げます!