Bardeaux Primeurs 2004
〜ボルドー・プリムール 2004レポート その1〜 (Bardeaux 滞在期間2005.4.4〜4.9) |
去る4月4日(月)〜7(木)、ボルドーで恒例のプリムールの試飲会が、各組織やシャトー毎に開催された。ボルドーでもフランスの多くの他産地同様、異例のミレジムであった2003年の後、2004年は「栽培から醸造まで、ごく常識的に進行したミレジム」というのが大方の意見だ(もちろん各シャトーには、ミレジム毎に異なる努力はある)。そしてその結果ワインのスタイルは、特に前年と比べると「クラシックに回帰した」と言える。
収穫までの天候を含めた2004年ミレジムの概要、そして5大シャトー情報は別の媒体で紹介したいのでここでは省略し、今回は特に記憶に残ったシャトーのミレジム情報とテイスティング・コメント(いわゆる「有名シャトー」のみの紹介になるが、全てを羅列すると数百にも上り、、、)、その他の傾向等を、2回に分けて簡単に報告したい。
(以下セパージュは、カベルネ・ソーヴィニヨン:CS、カベルネ・フラン:CF、メルロー:M、プティ・ヴェルド:PVで記載。比率などの情報は全て2004年のもの。また各シャトーともセカンドワイン以降のカテゴリーは記載省略)。
シャトー・シュヴァル・ブラン(サンテミリオン) |
セパージュ比率、、、CF:55%、M:45%
収穫時期、、、9/20〜10/5
シャトー側のコメント、、、
2004年の右岸は、収量を抑えることが出来たかどうかが分かれ目。天候では全体的に乾燥していたこと、そしてブドウの最終熟成時期である9月上・中旬の高温が特徴で、カベルネ・フランに優位なミレジムになると思う。
「余韻の長さ」、「フランとメルローが完璧に引き立て合うバランス」という点では2000年に匹敵する。
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著者のテイスティング・コメント、、、
黒く熟した果実と、高貴なキノコに変化する要素に満ちている。そして奥にある綺麗な酸とピュアなミネラル。驚異的に細かく上品な甘味を持ったタンニンは、新樽の存在を感じさせないほどに圧倒的かつ官能的。フィネス、エレガンス、ヴォリュームの見事な調和。余韻の長さも見事。
個人的には、マルゴーと並んで、2004年を代表するシャトーになり得ると思うのだが(かのパーカー氏のポイントでは、2004年はラトゥールやパヴィが最も高評価で、シュヴァル・ブランはオー・プリオンやル・パンと同等であり、僅差でラフィットやマルゴー、ペトリュス等が後に続く)。
シャトー・オーゾンヌにて。 |
シャトー・オーゾンヌ(サンテミリオン) |
セパージュ比率、、、CF:50%、M:50%
生産本数(予定)、、、18000本(例年は22000本。またシャペル・ドーゾンヌは6000本)
平均樹齢と収量:50年、32hl/ha
著者のテイスティング・コメント、、、
密度の高い果実味と、舌に溶け込んでいくようなタンニンの細かさ、同時に土や血のニュアンスに近い力強さ。ユーカリやミントを思わせる清涼感もある。アルコール度数も十分にあるのか、タンニンとアルコールが喉の奥を抜けていく時の甘い熱さに、ワインの持つエネルギーやポテンシャルを感じる。繊細と言うより、男性的な「力」が印象に残るミレジム。
シャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランド(ポイヤック) |
セパージュ比率、、、CS:53%、M:36%、CF:4%、PV:7%
収穫時期、、、CS:10/7〜14、M:9/27〜
シャトー側のコメント、、、
9月の素晴らしい日照量と昼間の高温、対して夜間の冷え込みと、全体的な乾燥。これらの気候はメルローには高いアルコール度数を(約13−13,5度)、そしてカベルネ・ソーヴィニヨンには豊かなフェノール類の熟成をもたらした。
著者のテイスティング・コメント、、、
う〜ん、ポイヤック!だ。熟したカシス、鉛筆の芯に近い鉱物感、花びらの厚いピンクのバラ、ミルクや塩(海)を感じるミネラル、ビャクダン。そういった香りを裏打ちするように、噛めるような豊かなタンニンがありながら、しっかりとした酸とミネラルが、ワインに上品な立体感をもたらしている。特に口腔でワインを転がしている時の二次関数的な盛り上がりはドラマティックで、最後は十分な余韻の長さに浸ることができる。個人的には1級であるムートンよりも、ポイヤックらしさと、ワインの格、という点で遙かに上回る出来だと思っている。
また2004年は、全体的にどのシャトーも「セカンド・ワイン」のレベルが非常に高い印象があるが、「レゼルヴ・ド・ラ・コンテス」は、「パヴィヨン・ルージュ・ド・シャトー・マルゴー」、「アルター・エゴ(パルメ)」、「ラ・ダーム・ド・モンローズ」と並んで、秀でたセカンドであると思う。
シャトー・モンローズにて。 |
シャトー・モンローズ(サンテステフ) |
セパージュ比率、、、CS:64%、M:32%、CF:3%、PV:1%
収穫時期、、、CS、PV:10/4〜15、M:9/27〜10/2、CF:10/7
シャトーにおける、グラン・ヴァン比率、、、73%
シャトー側のコメント、、、
9月の理想的な天気はブドウの成熟を助けただけでなく、腐敗果の発生を防いだ。結果、健康な状態で収穫されたブドウは例年よりも多かったものの(シャトー全体で57hl/ha、425樽の生産予定)、小粒でフェノール類の成熟も素晴らしかった(タンニンの分析値は2003年よりも高く、かつ他の要素とのバランスも良い)。ただし今年はこの収量のために、バリックにワインを移し替える前に既にアッサンブラージュを終える、という、いつもとはやや異なる手法を選択した。ちなみに最初のバリックが満たされたのは、12月中旬。
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著者のテイスティング・コメント、、、
黒い果実、そしてメルロー由来か赤い生肉や、血に近い鉄っぽさ。パン・デゼピスのような甘いスパイスと酵母感、鉛筆の芯やインク、杉林、赤〜黒のバラ。オレンジを噛んだ時のように、タンニンの隙間から酸がピチピチ感じられる元気さが頼もしい。しかし全体的な印象は「元気」よりも「エレガント」。特に余韻の細く長い伸びは、長期の熟成能力を期待させてくれる。
シャトー・パルメ(マルゴー) |
セパージュ比率、、、CS:46%、M:47%、PV:7%
収穫時期、、、9/27〜10/12
シャトー側のコメント、、、
夏の初め、収量を推定した時点で「多すぎる」ことに気づかされたが(春の開花が例を見ないほどの均一さで展開し、そのままブドウ房は問題なく成長したのだ)、摘房などの介入は最小限であった。と言うのもブドウの「活力」を目の前にした時、私たちはむしろオプティミストであったのだ。しかしオプティミストでいられた背景には勿論、今までのミレジムを経て得た、確固たる経験値がある。
最終的には各区画の個性を上手く引き出せた。ブドウは糖度的には未熟でも過熟でもなく、しかしフェノール類の熟成は完璧であったために、醸造自体も非常にスムーズに進んだミレジム。
2000年と2001年、もしくは1996年と1997年を合わせたような印象を、現時点では2004年に持っているが、この例えも決して適切ではない。要するに似ているミレジムは、あるようでない、と言ったところだろうか。
著者のテイスティング・コメント、、、
美しいミネラルと酸ゆえ、果実味の層が非常に複雑に感じられる。鉛筆の芯のような鉱物感、丁字やビャクダン、ボタンといったオリエンタルさ、そしてのバラのつぼみやミント、ハイビスカス・ティのような清涼感。ほんの少しある、やや焦がした赤身肉の脂のようなニュアンスが、これまた不思議とこの絶妙な香りのバランスに、後ろ髪を引かれるような「気になる」特徴を添えている。そう、「来年も、この先も経過を見たい」と思わせる、妙に心を惹かれるワインなのだ。
シャトー・デュクリュ・ボーカイユにて。ボーカイユ(美しい石)の名の通り、箸置きにしたくなるような小石が畑にはゴロゴロしている。オーナーや醸造責任者の、ブルゴーニュ的な「人間の近さ」も魅力的だ。 |
シャトー・デュクリュ・ボーカイユ(サン・ジュリアン) |
セパージュ比率、、、CS:77%、M:23%
糖度(アルコール換算):13度
シャトー側のコメント、、、
2003年の収量を落とした原因が「酷暑」なら、2004年は「開花時期の一致」。1週間で全区画が開花するということは、「ほぼ同時期にブドウの成長が進む=ブドウが栄養を奪い合う時期が一致する」であり、結果50%を除外した。2003年と比べれば生産本数は
10%の増加予定であるが、この数字を一般的に見れば、決して多いものではない。
最終的に「クラシックに回帰した」と言える2004年は、シャトーで語り継がれるミレジムになるのではと思っている。
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著者のテイスティング・コメント、、、
様々な色のバラ、スミレ、ベゴニア、、、フローラルだ。またシナモンの心地よさに始まり、スパイスのニュアンスも完成したソースのように既に複雑。ブドウ由来のタンニンも甘く細かく、旨味すら感じ、余韻にはミネラルが際だつ。個人的に昔から好きなシャトーであるデュクリュ・ボーカイユ。「デュクリュ・ボーカイユ節」を期待通りに聴けて、単純に大満足している。
「ボルドー・プリムール 2004レポート その2」では、
クリュ・ブルジョワ
白ワイン
に関して、報告します。