Decouvertes en Valle du Rhoneの試飲会にて

〜 ローヌの2004年とは? 〜

(2005.3.19―23)

 

 

 書き手として、産地で行われる移動試飲会に魅力を感じることの一つが、最新のミレジムを試飲する機会に多く恵まれること。しかも大抵会場のスタンドには、生産者本人が立っている。通常は生産者のカーヴまで行かなければ瓶詰め前のものは試飲できないのだし、それ以前に生産者自身とアポイントが取れないこともあるのだから、これは本当にありがたい。

 そこで今回の試飲会の目的は、「ローヌの2004年とは?」を知ることである。もちろんまだ2004年ミレジムを語るには時期尚早なのだが、とにかく2004年をできる限り試飲し(全ての生産者がサンプルを出しているわけではない)、2004年の感想を生産者達に直接伺うことにした。

 

 まずは、収穫直後にローヌ委員会などから届けられた収穫状況は以下(フランス食品振興会発行メールマガジンhttp://www.franceshoku.com/ より抜粋)。

 

(ローヌワイン委員会webより)
9月の初旬は日照量が豊富で、最低気温、最高気温ともに例年を上回った(最低気温は+2.5度、最高気温は3度)。最も暑かった95日は、気温が33度を超えるなど夏のような天候が続き、ぶどうの成熟が進んだ。熟期が早い区画では収穫が始まっており、最初のキュヴェのアルコール発酵が始まっている。

ぶどうの熟度が上がっておりアントシアンの溶出も早く、アロマや色の凝縮が期待できる。果実200粒の重さは、どの区画でもほぼ安定しており、全品種計で、1996年から2003年の平均よりも5%軽い。
フェノール類については、アントシアンがすべての品種で著しく上昇している。816日の第1回目のサンプル採取検査から、以下のとおり上昇した。
グルナッシュ +37%、カリニャン +57%、シラー +33%、サンソー +34%、ムールヴェードル +61%

99日付、Les Echos
より)

コート・デュ・ローヌの収穫は95日に開始。
旱魃の影響と、haあたりの収穫量を51hlから45hlに制限したため、2004
年の収穫は昨年より少なく、例年並と予想される。

9/24、シャトーヌフ・ド・パプ メゾン・ド・ヴァンより http://www.chateauneuf.com/index.html

920日、シャトーヌフ・ド・パプの収穫は最高潮に達した。9月末に好天に恵まれたおかげで、ぶどうが最高に熟すまで焦らずに待つことができた。早熟であった昨年とは異なり、2004年の収穫日は1960年代と同時期で、「例年並みに戻った」といえる。2004年はグルナッシュの年という意見もすでに聞かれ始ている。

 

 そこで、当の生産者達の意見である。今回、南・北ローヌともに多く聞かれた意見を簡単にまとめると、

 

― 十分な糖度と高いPH、満足のいくフェノール類の成熟。これらがあり非常にバランスの良いミレジムであると同時に、収穫量も確保できた。また複数の銘柄を有する場合は、順調に熟成が進めば、各銘柄別に瓶詰めできそうである。

 

となる。そしてその理由としては、以下が挙げられた。

 

   2003年以降乾燥傾向にあったことと、ミストラルのお陰で病害が少なく、目だった雹害も無かった。よって収穫前の大雨や洪水に打撃を受けた2002年、酷暑と乾燥の2003年に比べて、久しぶりに全ての過程がとても順調に(普通に)進んだ。

   8月後半の雨は、むしろ乾燥傾向にあった畑やブドウの成熟を助けものだった。雨によりブドウが急速に膨張するケースや一部に腐敗果も見られたが、それも事前に余裕を持って取り除ける程度であった。そして何よりも9月の好天(最高・最低気温の寒暖差の大きさを含む)が、十分な酸を残しながらフェノール類の成熟も含めた完熟の状態にブドウを導いてくれ、収穫を急ぐ必要もなかった。

 

ここに何人かの生産者達の声を、抜粋したい(もちろん生産者達からも「まだ断定はできないが」というお断りは付いている)。

 

ドメーヌ・デュ・モンティエ(コンドリュー、コーロ・ロティ、サン・ジョゼフ)

現時点で2004年は、近年で最も嬉しい。特に北ローヌが素晴らしかった1997年を思いだす。9月は本当に素晴らしかった!日照量の豊かさ、昼間の高温と共に冷たく乾燥した北風。ブドウの最後の成熟期に必要なもの全てが揃っていた。ワインは完璧な糖と酸のバランスと、豊かなアロマを備えている。

 

ジャン・ミシェル・ジュラン(コンドリュー、コーロ・ロティ)

2002年、2003年という特殊なミレジムが続いた後に、やっと本来のクラシックな味わいと、普通の収穫量を取り戻せたのが2004年。

 

シャトー・ライヤス(シャトーヌフ・デュ・パープ)

とてもクラッシック、かつ全てが順調に進んだミレジム。過去2年のように、「心配で夜も眠れない」ような困難さが全く無かった。

 

シャトー・ラ・ジャナス(シャトーヌフ・デュ・パープ)

良質な酸とミネラル。テロワールが素直に表現されたミレジム。

 

ドメーヌ・ノートル・ダム・デ・パイエール(ジゴンダス)

タンニンが細かく豊かで、骨格があり、同時に酸のレベルも高い。色合い、アロマの点でも理想的だ。

 

シャトー・ド・サン・コム(ジゴンダスなど)

エレガンスとバランス、コンプレキシテ(複雑性)。そしてヴァン・ド・ギャルド(長期の熟成に耐えうる)でもあると思う。

 

また他に聞かれた意見としては、以下がある。

   病害が少なく、品質・収穫量共に安定しているという点で、過去のミレジムに照らし合わせれば2001年と似ているかもしれない(生産者により挙げるミレジムは異なるが、この2001年という意見が最も多かった)

   シラーも素晴らしかったが、グルナッシュがより素晴らしいのではないだろうか。

   やや量産気味であった赤に関しては、最終的に厳密な選果をした生産者がより高い品質を得るはず。一方白は殆ど手がかからなかった(北ローヌ)。

 

 以上、色々な報告や意見を挙げてきたが、自身の舌で全体的に感じたことも、やはり「美しい酸と十分な酸のバランス」「伸びのある果実のアロマ」であった。同時に過去2年、尋常ではない天候に四苦八苦した生産者達にとって、確かに比較的手のかからないミレジムであったのだろう。ともあれローヌ・ファンにとって2004年とは、品質・量ともに安心してリリースを待つことのできるミレジムであるようだ。

 

エルミタージュの丘。春とはいえ、まだ遠目には禿げ山(?)状態。


 

フィリップ・ヴェルジエ(Earl Philippe Verzier、カーヴ・ド・シャント・ペルドリ)のスタンドにて。やはり「とにかく9月の天候が理想的だった」と語る。ところでこのドメーヌのサン・ジョゼフである「キュヴェ・ラ・マドンヌ」(赤)は、いつ試飲してもとても印象深い。

ドメーヌ・デュ・モンティエ(Domaine du Monteillet―Vignobles Montez)。自身の2004年ミレジムの品質に、確信をもつ一人である。

AOCコート・デュ・ローヌ レゼジル(Les Ediles)。味がコンドリュー!?聞けばコンドリューの斜面上部の平地ゆえAOC上はローヌになるらしく、セパージュはヴィオニエ100%である。ブラインド・テイスティングなら殆どの人がコンドリューと言うのではないだろうか?Sear Bonserineのスタンドにて。

 

 

コート・ロティ&コンドリューの会場。ん、バスケットのゴール!?体育館なのか? コルナス&サン・ペレの会場。


 

ドメーヌ・デュ・ヴィユー・テレグラフ(シャトーヌフ・デュ・パープ)にて。グルナッシュもさることながら、2004年のムールヴェードルの「スパイシー&エレガント」が忘れられない(タヒチの国花である白い花、ティアラのような香りがするのだ)。ところで左端にいるのは、フランソワ・ヴィラール氏。研究熱心さに頭が下がる。 シャトー・ライヤスにて。一連の熟成中のワインは、旨味を持ちながら透明感に溢れ、細く長く、時に色っぽい。なぜかDRCや、マルセル・ラピエール、そしてパカレを思いだしてしまった。そう、やはりこれは秀でたピュアさなのだ。 ムーラン・ド・ラ・ガルデット(Moulin de la Gardette)。カプリス・ド・ランスタンのジェラールの心遣いがあり、当主ジャン・バティストさんとは、シャトー・ド・モンフォーコン(Chateau de Montfaucon)のルドルフ達と共に、クルティエであるアルノー氏邸にてディナーを楽しむ機会に恵まれた。しゃべり、食べながら飲む彼らのワインは、試飲とは違いグイグイ(?)進む。ウマイ!写真はジゴンダスの会場にて。


 

「ル・クロ・デ・カゾー ヴァケラス グルナ・ノーブル 2001(Le Clos des Cazeaux Vacqueras Grenat Noble)」。グルナッシュ・ノワールの貴腐?そう、このワインは貴腐が30%入っているそうだ(よって生産されないミレジムもある)。余韻にある、甘味を伴ったアルコール感の伸びが非常に心地良い。 バスティード・デュ・クロー(Bastide du Claux)のスタンドにて。コート・デュ・リュベロン&コート・デュ・ヴァントーの試飲会で悟ったことは、斜面の向きによっては、北の産地かと一瞬戸惑うような、綺麗な酸を持ったワインが多いことで、この生産者のワインもそうだった(現当主はブルゴーニュ出身であり、ご本人がワインに酸やフィネスを重んじていることもあるだろう)

ヴァケラスの会場


 最後に、全ての意見はここにレポートすることはできなかったが(膨大すぎた)、混雑するスタンドで丁寧に説明してくださった生産者の方々に、心よりお礼申し上げます。

 

(参照)

Decouvertes en Valle du Rhoneの日程 (太字は私が参加したもの)

3/19

コート・ロティ&コンドリュー

3/20

コルナス&サン・ペレイ

クローズ・エルミタージュ

エルミタージュ

デュオワ

サン・ジョゼフ

3/21

コート・デュ・ローヌ&コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ(3カ所の会場にて)

コトー・デュ・トリカスタン

3/22

リラック

タヴェル

コート・デュ・ローヌ&コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ

コスティエール・ド・ニーム

3/23

コート・デュ・ローヌ&コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ、ミュカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズ、ラストー

コート・デュ・リュベロン&コート・デュ・ヴァントー

ジゴンダス

ヴァケラス

3/24

シャトーヌフ・デュ・パープ