Bordeaux Primeurs 2005

〜ボルドー・プリムール 2005 レポート その2〜

(Bordeaux 滞在期間2006.4.3〜4.7)

 

 

 「ボルドー・プリムール 2005 その2」では、直接訪問したシャトーのミレジム情報と、早すぎる時期の試飲ながら簡単なテイスティング・コメントを紹介したい(5大シャトー情報は別の媒体で紹介したいのでここでは省略)。

 

以下セパージュは、カベルネ・ソーヴィニヨン:CS、カベルネ・フラン:CF、メルロー:M、プティ・ヴェルド:PVで記載。比率などの情報は全て2005年のもの。また各シャトーともセカンドワイン以降のカテゴリーは記載省略。

 

シャトー・シュヴァル・ブラン (サンテミリオン)

  セパージュ比率、、、CF:55%、M:45%

  収穫時期、、、9/12〜9/27

   シャトー側のコメント、、、

1月から9月までの降雨量はたったの343mm(前年同期は572mm)。この乾燥はブドウの成熟〜収穫は期間を早め、またブドウ粒は自然に小さく凝縮したものとなった。そして結果的に過去2年も乾燥していたことから、ブドウ樹の根がより地中深く張っていった。

ブドウの成熟度は、天然アルコール度の数値を見ても過去にない高さ。ただし9月の涼しさが酸を維持したので、酸の爽やかさも持つワインは、ジャムのような重さを持つものではなく、純粋に「熟した果実」が感じられる。またメルロだけでなく、カベルネ・フランにも有利だった年。

  著者のテイスティング・コメント、、、

黒い果実の香りは深く複雑。黒バラやホールの黒コショウ。またなぜか芳ばしい「和」な要素、甘辛く焼いた煎餅や、焼いたアンコ、黒ゴマがある。

タンニンの質は滑らかで細かく、全く乾きが見られない。また上品な甘味と共に「旨・辛味」や、余韻まで伸びるミネラルを伴った酸の存在が、ワインを端正に見せる。ただし香りに感じられるほど、現時点では果実の求心力が無い。

 

シャトー・オーゾンヌ (サンテミリオン)

  
  セパージュ比率、、、CF:55%、M:45%

  生産本数(予定)、、、18000本(シャペル・ドーゾンヌは6000本)

  平均樹齢と収量:50年、34hl/ha

  著者のテイスティング・コメント、、、

赤い生肉など鉄を感じる香り。赤〜黒の果実の豊かさ。森林や苔、将来黒トリュフに変わりそうな土や植物のニュアンス。樽香もワインにあるミルクっぽい香りと相まって、朝のカフェオレとクロワッサン、トリュフ・ド・ショコラのような非常に心地良い上品なもの。とにかく香りの複雑さは驚異的。

一方口当たりはタンニンの粒子の細かさ、噛めるような質感、深みが際だっており、鼻に抜ける香りは黒バラ。素晴らしく長い余韻は2005年らしいアルコールの十分な存在感、酸、ミネラルでバランス良く構成されている。

2005年、左岸の王者がラトゥール、ラフィット、ムートンならば(とんでもない伏兵はグリュオ・ラローズ)、彼らに間違いなく肩を並べるか、もしくは追い越さんばかりのポテンシャルを秘めているのがオーゾンヌだと思う。

ちなみにオーゾンヌのコンサルティングはミシェル・ローランだ。映画「モンドヴィーノ」で随分とイメージを損なった彼であるが、コンサルティングとオーナーの仕事が上手くかみ合うと素晴らしい結果が残ることを認識させてくれたワインでもある。

 

ヴィユー・シャトー・セルタン

  セパージュ比率、、、CF:20%、M:80%

  収穫時期、、、9/12〜

  シャトー側のコメント、、、

ブドウの成長期は非常に乾燥していたが、病害の無さに加えて成長の順調さが出色で、7月の上旬から収穫期まで畑では特に何もすることがなかったほど。また通常よりやや長めの醸造期間、続くマロラクティック発酵もきわめて順調に進んだ。樹齢の違いを顕著に感じた年でもある。

  著者のテイスティング・コメント、、、

カシスや黒サクランボ様の黒い果実に、牡丹の花、甘草、丁字、ホールの黒コショウ。墨のような落ち着いた香りもある。

味わいにはタンニンの細かさが、豊かなアルコールの甘味と相乗しあい、噛めるようなポムロールらしい豊かさがあるが、決して甘ったるく帰着しない。酸や辛味、繊細さも兼ね備え、バランスの良さが秀でている。

 

シャトー・モンローズ (サンテステフ)

  セパージュ比率、、、CS:65%、M:31%、CF:3、5%、PV:0,5%

  収穫時期、、、CS:10/2〜9、M:9/23〜9/27、CF:10/3〜9、PV:9/25

  シャトーにおける、グラン・ヴァン比率、、、73%

  シャトー側のコメント、、、

2003年が酷暑の年ならば、2005年は乾燥の年として記憶されると思う。収穫時期までの降雨量は過去30年平均の約半分。ただ私たちの畑の母岩が保水性の高い粘土質であったことが優位に働いた。

一方気温は、適度な日中と夜間の冷え込みがあり、ブドウはバランス良く成長を遂げた。収穫時期では晩熟のプティ・ヴェルドがメルロの収穫期間中に終わるということもあったが、各区画に合った最良の時期を見極めるために途中で中断しつつ、常に好天の下で行われた。醸造期間中にも全く問題は見られず、マロラクティック発酵も素早く済んだ。最初にワインを樽に移したのは11/17。

2005年はピュアな果実味に満ちた非常にボルドーらしい、モンローズにとっても伝説のミレジムになると思う。

  著者のテイスティング・コメント、、、

豊かな黒い果実や、鉛筆の芯、ウスターソースのような複雑な香味野菜、血に近い鉄っぽさ。マサラ・ティのようなミルクに溶け込んだ甘いスパイスのニュアンス。香りの多彩さに「格」を感じる。

味わいは最初のグリップも強いが、むしろ後半にグングンと伸びる「ワインの持つ力」のようなものに驚かせる。余韻も長く、側にあるジロンド河の存在を感じさせるかのような、「塩」を感じるミネラルが印象的。サンテステフでありながら、ポイヤックの端正さを併せ持つ。

 

シャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランド (ポイヤック)

  セパージュ比率、、、CS:64%、M:29%、CF:6%、PV:1%

  収穫時期、、、9/20〜10/7

  シャトー側のコメント、、、

9/8〜12にかけての雨は裂果を引き起こす可能性があったが、畑は最終的に非常に健康に保たれた。

2005年を他と比較するのは難しいが、1983,1986,1996そして2000といった偉大なミレジムと肩を並べると思う。

  著者のテイスティング・コメント、、、

何よりもまず、フローラル。黒いバラのつぼみやスミレ、牡丹。そしてバランスの良い黒い果実や、鉛筆の芯、森林、ミルクといった香りはいかにもポイヤック。

細かいタンニンと甘やかさは、乾きとは無縁で、旨味に塩を加えたような「芯」のある味わいもあり、特に後半の酸が、ミネラルを伴いながら余韻まで長く伸びる様はエレガントに尽きる。

余談だがプリムールの前週に1996のポイヤック格付け(12種類)をブラインド・テイスティングした時に、私はピションとラフィットを間違えた。最も「端正でエレガント」なものをラフィットと思ったのだが、それがピションだったのだ。2005年は一歩間違えると「濃い」ワインも多くなりそうな中、ピションは自身のエレガントさを余す所無く発揮するのではと思う。

 

シャトー・グラン・ピュイ・ラ・コスト (ポイヤック)

  セパージュ比率、、、CS:78%、M:22

  著者のテイスティング・コメント、、、

なぜかブルゴーニュに感じるような、梅やシソの香り。しかし次に来る鉛筆の芯やプラムのような鉄分の多い果実のニュアンスは、紛れもなくポイヤック。しかし全体的にバラならピンク、またレッド・グレープフルーツやピンク・ペッパーのような爽やかさのある香りであり、個人的にはこの軽やかさはとても好ましい。味わいも香りにあるフレッシュさがあり、軽やかなタンニンと良い調和を保っている。香りと味の一貫性も美しい。

 

シャトー・オーバタイ (ポイヤック)

  セパージュ比率、、、CS:76%、M:24%

  シャトー側のコメント、、、

醸造所を新しくしてから初めての収穫と醸造。発酵層が小さく多数になったために、より区画やセレクション毎に細かく醸造できるようになった。また選果台も振動タイプのものに変更した。カベルネのアッサンブラージュは平均よりやや多め。

  著者のテイスティング・コメント、、、

豊かな果実に、新しいワインらしいパン・デ・エピスや小豆様の甘やかな香り。花ならボタン。しかし奥から固いミネラルもわき出てくる。

タンニンは明らかに熟した果実由来と感じられるもので、全ての要素のバランスが良い。一般的なオー・バタイエの価格を考える時、この味わいは「カリテ・プリ(お値打ち)」ではないだろうか。

 

シャトー・デュクリュ・ボーカイユ (サン・ジュリアン)

  セパージュ比率、、、CS:60%、M:40%

  収穫時期、、、CS:9/29、M:9/21、全ての区画の終了は10/6

  シャトー側のコメント、、、

ブドウの成長期は日照量に恵まれ(5月〜9月の日照量は平均の7,5%を上回る約2000時間)、一方で暑すぎなかった(2000年より平均年間気温は−2℃)。そして2000年や2003年同様、非常に乾燥していた。この状態は病害を回避し、ブドウを小粒なものにしただけでなく、ブドウ根は地中深くに張り土地の個性の表現に寄与した。

醸造においては、天然アルコール度で13,5度程度(メルロでは15度を超えることがあり、カベルネで12,5〜14度)まで上昇したが、酸の存在があり、フェノール類の成熟度は歴史的である。

  著者のテイスティング・コメント、、、

良い意味で何かの香りが突出することなく、果実、花、スパイス、鉱物のニュアンスがコンパクトにバランス良くまとまっている。

一方細かなタンニンは瑞々しく、味わいは香りで感じたニュアンスよりも多弁。上昇したというアルコールの暑苦しさも感じられず、このシャトーらしい「しなやかさ」に、「緻密さ」が加わるのではないだろうか。

 
 

シャトー・パルメにて。ボトルは「イメージ」なので2003年のもの。後ろにあるのは2005年度ミレジムの資料

シャトー・パルメ (マルゴー)

  セパージュ比率、、、CS:40%、M:53%、PV:7%

  収穫時期、、、9/22〜10/7

  シャトー側のコメント、、、

収穫前の12ヶ月の降雨量は400mm。これは平均の57%減(例年は925mm)。ブドウ樹の根は水を探してより地中深く張った。またこの乾燥は小粒で十分な成熟度のブドウを我々にもたらした。収穫2週間前に糖度は既に上がっていたが、フェノール類の成熟も待った結果が、9/22を収穫開始日とした。

一方夏期は、乾燥で優秀なブドウがストレスを受けるのを避けるために、ヴァンダンジュ・ヴェルトを非常に厳しく行った。

  著者のテイスティング・コメント、、、

ポイヤックのカベルネを思わせる鉛筆の芯、灰、トリュフ・ド・ショコラ、黒トリュフに変わりそうな土や植物のニュアンス、ビャクダンなどのエキゾティックさ。しかし圧倒的なのは果実の力。細かな層をなして鼻孔に染み込む感じである。

タンニンは細かく滑らか、香りにあった果実味が味わいをより奥深いものにする。時間が経つと共に瑞々しい酸も感じられ、このワインを決して重いものにしない。派手さはなく、偉大といわれる2005年というミレジムを、素直にシャトーのスタイルに合わせてきた感じがある。

 

シャトー・ディッサン (マルゴー)

  セパージュ比率、、、CS:60%、M:40

  収穫時期、、、CS:10/3〜10/11、M:9/21〜9/28

  平均収量:50年、、、42hl/ha

  アルコール度、、、13,7度

  1月末にアッサンブラージュ済み

   著者のテイスティング・コメント、、、

熟した果実や黒甘いスパイス(丁字、黒コショウ)、そして甘草。心地良い甘やかさに満ちた香り。タンニンの細かさも、果実味や甘味を包括して、香りに感じた優しさや大らかさに通じている。繊細さや切れ、崇高さ、といったニュアンスは無いが、過剰に走らない貴重な寛容性が深く心に残る。

格下げが相応しいとまで言われる「ディッサン」であるが、2005年のディッサンは旨味溢れる丸いマルゴーを好む方には、間違えなく早く飲め、しかも熟成も期待される出来だと思う。

 

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シャトー・ラフィット・ロッチルドにて、完全に試飲の世界に入るラファエル。

最後に

今回のプリムールも3年連続で、パリのワインショップ「カプリス・ド・ランスタン」のラファエル・ジムネス氏に同行した。移動やアポイントのオーガナイズ、そして何よりも熟考を迫られる氏との容赦ない(?)会話が、プリムール参加を最後まで意義あるものにしてくれている。

 ちなみにラファエルは10年来ボルドー・プリムールに参加し続け、各シャトーの評価を「顧客のためのプリムール評価」という資料にしてまとめている。「街場のワインショップ」として「素晴らしいワインを、適正な価格で選び抜く」という徹底した姿勢には、毎回ながら頭が下がる。

 この場を借りて、氏に深くお礼を申しあげます。ありがとうございました!!!