Les Grands Jours de Bourgogne (偉大なるブルゴーニュの日々)

〜 2004年の美しさとは?  〜

(Bourgogne 2006.3.20〜25)

 

 

 

 今回の「Les Grands Jours de Bourgogne (偉大なるブルゴーニュの日々)」(「フランスの試飲会情報 2−3月」参照)で、多くの生産者が試飲に使っていたのが2004年ミレジム。2004年ミレジムに対する試飲コメントは「リアルワインガイド(11号)」で書いているが、一言で言えば「決して濃くない」このミレジム、私は全体的に好きである。2001年とタイプは違うものの、あのピノらしい繊細さを愛するブルゴーニュ・ファンなら、2004年にもほっと一息付ける味わいを見出すと思う。

 

2004年とは?

 2004年のブドウの成長期・収穫状況に関しては、2004年 ブルゴーニュの収穫風景 〜ドメーヌ・クロード・デュガにて〜 その1 今年のブルゴーニュとは?」で述べており、醸造ではまず厳格な「選果」が必要だった。2004年とは「選果のミレジム」と言う関係者も多い。

 ところで今回の試飲会では各生産者に「選果をどのくらい行いましたか?」と聞いたわけではない。しかし味わい的に選果の差が表れているのでは?と思われるのが、赤・白共通して頻繁に感じられる非常に植物的な「青い」香りである。花ならば茎も入った「花束」、バラではなくチューリップ、熟していないメロン、みたいな感じでだろうか。不快と言うほどではなく、熟成の過程でどのように変わっていくかは分からないが、この「青さ」は2004年に多く見られた傾向だ。

 一方2004年の魅力とは、まずはその「繊細さ」にあると思う。2001年の「繊細さ」がより骨格を持ち直線的な魅力ならば、2004年の方がもっとホンワリとした繊細さだ(しかしそれゆえ、高名なワインでも熟成能力は未知であり、生産者ですらその能力を測り兼ねているようだ)。次が「テロワールの分かりやすさ」。これは酷暑で熟した果実の味がテロワールを隠してしまった2003年とは対照的で、村毎、畑毎の差が素直に味覚に染み込んでくる。

 

 地域的に見るとリアルワインガイドでは「シャンボール・ミュジニィ〜ヴォーヌ・ロマネが最も成功に近いと思う」と書き、実際、今回の試飲でもこれらの会場のレベルは高かったと思う。だがそれ以外で見ると、コート・ド・ニュイ北部であるマルサネやフィサン、一方でコート・シャロネーズも全体的にバランスが良かった。

 一方生産者の力量差が特に顕著に出ていると思われるのが、ポマール、ヴォルネィ、ムルソーだ。全体的に前述の「青さ」や、トップノーズが涼しげな割にアルコールの熱い余韻が目立つ。ミネラル・酸が感じられても、果実味を伴わない。要するに試飲全体を通した時に感じられるバランスがチグハグとした感じなのだが、これはブドウの成熟バランスによるものであろうか?だからこそ、これらの地区の中で、甘・酸・タンニン・アルコールのバランスを保ち、緻密で滑らかな質感に仕上げきった生産者とは、真摯な栽培と醸造センスのレベルの高さを感じさせる。例えば「ロブレ・モノ」(ヴォルネィ)は、ロルモー以外の4つのプルミエ・クリュを村名ヴォルネィに格下げ。また「ミクルスキ」(ムルソー)も通常は区画名付きでリリースする「ムルソー リムザン」を「ムルソー」にアッサンブラージュ、そしてムルソーの区画のブドウの多くを「AOCブルゴーニュ」に格下げしている。「格下げ」が常に最善策というわけではないが、厳しい選果の後に、更に格下げというキュヴェのセレクションを行った両者は、会場でその質の際だち方が最も分かりやすかったし、彼らの2004年は消費者にとっては非常に「お買い得」ではないだろうか。

 他に各会場では私にとって「生産者名と味わい」がまだ一致していない生産者、もしくは全く知らない生産者のワインを、時間と体力が許す限り試飲したが、日本未輸入のワイン達の中にも「きらり」と光る個性を多く発見できたことに、ブルゴーニュの可能性を改めて感じた(これらの生産者のことは、また追々報告していきたい)。2004年は自身のお気に入りの生産者も含めて、「造り手のスタイルを知る」という意味でも興味深いミレジムだ。

 

 ところで少し話が逸れるが、最近いわゆる「ビオ臭」「ビオ味」がやはりどうしても受け容れられない、という方によく会うようになった。これは一般の市場にも「自然派」がかなり普及した結果の一つでもあると思うが、私自身も「ビオ臭」「ビオ味」を冷静に考えた結果、「臭くないビオ」、つまり畑では有機的アプローチを、醸造でもナチュラルを心がけながら、味わいはピュアかつ「クリーン」であるワインを探すようになった。この「クリーン・ビオ」系で試飲する度に進化に驚かされるのが「ドメーヌ・ド・ラルロ」(ニュイ・サン・ジョルジュ)である。このドメーヌの進化が味覚レベルで感じられることは以前にも書いたが(Domaine de l’ARLOT 〜何かが、変わった!〜」参照)、2004年ミレジムの繊細さを味方に付けて、この上なくピュアで透明感に満ちたニュイ・サン・ジョルジュに仕上がっている。「クリーン・ビオ」系の二大生産者がDRCとルロワであれば、この両者のワインを若い時に飲むと「純粋に赤い果実のジュース」のような時期があるが、「ポテンシャルを感じる純粋性」の点で、ラルロのワインは両者を彷彿とさせるのだ。10年、20年という長いスパンでどのような熟成を遂げていくかが楽しみである。

 酷暑で稀少性が高まる200 3年、「最高のミレジムの一つ」の呼び声も高い2005年。この2者に挟まれた2004年は目立たず、また栽培・醸造ともに簡単なミレジムではなかった。

「アメリカとかは、既に『2005年を待つのが賢い』と言うんだ。2004年はとてもブルゴーニュらしいミレジムだというのに酷い話だよ」とボヤく生産者たちとも会う。ともあれ生産者達が通常以上に注意深く仕事をしたミレジムであることが想像でき、しかし一方で蔵出し価格の高騰も聞かれない。個人的には、価格的にも味覚的にも、「消費者に優しいミレジム」なのではと思っている。