〜 Les vendanges 2006 〜 2006年 ブルゴーニュの収穫風景 その1 「生産者間でかなりのバラツキが見られそうな2006年」 |
9/24〜27の4日間、収穫時期のブルゴーニュへ。今回はドメーヌ・クロード・デュガでの収穫作業の参加は一日のみだったが、コート・ド・ニュイ〜コート・ド・ボーヌと幅広く畑を訪れ、生産者の意見を伺うことができたと思う。
ところでブルゴーニュ入りする前に、2006年の作柄については不安材料が主に3点あった。それは、
@ 「裏話9月」でも書いた8月の涼しさと湿気、9月半ばの雨
A
収穫期間中の不安定な天候
B
7月末にジュヴレイのグラン・クリュを局所的に襲った雹害
である。
一方「フランス食品振興会発行メールマガジンhttp://www.franceshoku.com/」によると、ブルゴーニュの全般的な評価は、
美味しい期待:ブルゴーニュ2006 (ブルゴーニュワイン事務局)
Millesime 2006 en Bourgogne:une
delicieuse attente (B.I.V.B.)
06年のシーズンは、一年を通じて天候が気まぐれであった。長く厳しい冬のため、発芽は遅れた。6、7月が暑く、この遅れを取り戻すことができ、開花と結実は早く進んだ。しかし8月の天気がはっきりしなかったため、成熟の速度は緩んだ。8月中旬から実施しているBIVBのぶどうの成熟度調査では、ぶどうの主成分は見事に成熟に向かっている。
ブルゴーニュの南部は9月1日に収穫公示を行ったが、実際の収穫日は生産者各自の判断に任されている。ブルゴーニュのその他の畑は9月中旬頃の公示となるであろう。クレマン・ド・ブルゴーニュ向けの収穫は9月6日より始まった。
BIVBのバルダッシーニ会長は、「2006年のヴィンテージについて評価するのはまだ早いが」と前置きしながら、「ぶどうの成熟の進み具合と天候に注意しています。収穫が終わるまでは何もわかりませんが、自信はあります」と話している。
なお、収穫量は2005年とほぼ同じレベルの150万hlと予想されている。まだ収穫が始まったばかりだが、2006年は希望に満ちている。
(9/11付、ブルゴーニュワイン事務局プレスリリース)
なお、収穫公示日は以下のとおり。
-クレマン(ソーヌ・エ・ロワール県): 9月1日
-マコネ(地区名)、コート・シャロネーズ、クーショワ、オート・コート・ド
・ボーヌ(ソーヌ・エ・ロワール県):9月1日
-マコネ(村名)、コート・シャロネネーズ(除プイィ・フュイッセ):9月1日
-プイィ・フュイッセ9月8日
-クレマン(コート・ドール県): 9月11日
-AOC シャテイヨネ:9月15日
-AOCコート・ド・ボーヌ:9月18日
-AOCコート・ド・ニュイ:9月20日
-AOCオート・コート・ド ・ボーヌ、オート・コート・ド・ニュイ:9月23日
(ブルゴーニュワイン事務局 webサイトより)
ではブドウの状態である。
常に収穫時までの生産者のケアが、最終的なブドウの出来を大きく左右することは言うまでもない。ただ今年はやはり8月・9月の天候が、全般的に腐敗や白ブドウには灰色カビ病を蔓延させた。特に9月半ばの雨とその後の厳しい残暑は、ドミニク・ギュヨン氏(シャトー・ド・ポマール栽培責任者)によると、「高い湿度と気温。例えれば日本の夏に近い状態。灰色カビ病に弱いシャルドネでは、たった数日で被害が広がった例もある」。
実際シャルドネの畑では、私の見た限り「貴腐化しそこねた」ような茶色、最悪の場合はどす黒い(?)顆粒がかなりあった。一方ピノノワールは2005年のようなまさに「ノワール(黒)」な色づきではなく、「ピノ・ブルー」といった感じのやや薄い色づきのものが多い。また腐敗果も2005年に比べると随分と多く見られ、多くの生産者から「(選果が決め手となった)2004年並に注意深く選果している」という声を聞いた。しかし2004年との違いは、収穫までのケアが適切であった場合、糖度やフェノール類の上昇は結果としては良好であったということか(デュガでもかなりブドウを食べたが青さやえぐみが全く無く、滑らかで上品なタンニンが期待される味わいだ)。
そして白ワインの場合は、基本的に「収穫後すぐに破砕・圧搾される=果皮との醸し期間が無い」ので、果汁の状態さえ良ければワインの品質には悪影響は無さそうだ。白に期待を持つ意見も多い。
この時期にワインの出来を占うのは余りにも早い。また収穫期間中の天候も、最終的には9/26辺りから数日は完璧な「収穫日和」に恵まれたが、その前週の不安定さがどのようにブドウに影響を与えたかは、夏期の畑の手入れ(特に今年なら、完璧にブドウ房への風通しが守られていたか)など様々な要因に左右される。「生産者の日々の努力」「天候の気まぐれさ」「収穫時期の見極めの妙」「適切な選果」、加えて雹害の有無といった「運」の複雑な組み合わせ。生産者間でかなりの品質のバラツキが予想され、一般論として「2006年は〜である」と推測するのがとても難しいミレジムであると思う。
クロード・デュガの畑(AOCジュヴレイ・シャンベルタン「エトロワ」)にて。2005年より全般的に色づきは浅いものの、小ぶりで健全なブドウが多いのは流石! |
クロード・デュガ氏。今年も自ら畑に立ち、収穫人にとってはまさに「畑のお父さん」
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個々の生産者のレポートであるが、ドメーヌ・クロード・デュガに関しては弊HP「2006年 ブルゴーニュの収穫風景 その2」で、また他の生産者に関しては別媒体で書くことになりそうだ。ただ「コント・リジェ・ベレール」のジャン・ミシェル氏からは、2006年を理解しやすいコメントを詳しく頂いたので、ここに紹介したい。ちなみに「ラ・ロマネ」の価格の高騰ゆえ、最近は少々訪問を控えていたこのドメーヌ。しかし3月に行われた「レ・グラン・ジュール・ド・ブルゴーニュ」などで近年のワインを試飲すると「美しく美味い」にますます磨きがかかり、なかなか一般消費者の手に届かない価格であることが尚更残念になる。またジャン・ルイ氏の溢れる情熱と自信も健在だ。
〜 ジャン・ルイ氏談 〜
2005年と2006年が天候で最も異なる点は、前者が「全てが順調に進んだ」のに比べ、後者は「全くイレギュラーであった」こと。
今年の夏期の作業での新しい試みは、6月中旬〜7月上旬に通常の「エフォイヤージュ(除葉)」だけではなく、余計な「枝ごと」丁寧に取り除いたこと。これは枝や枝になった不要なブドウに廻る栄養分を少しでもメインのブドウ房に手中させることが目的だったが、結果としては湿度の高かった8月・9月に、完璧な風通しを与えることになった。
9月上旬は快晴と夜間の冷え込みという理想的な天候が訪れたが、8月の天候は畑にカビの兆候をもたらした。カビは放っておくと蔓延する。よって収穫直前まで畑を見回り、カビの発生した房は随時摘み取り、摘み取った房は畑の中に残すことなくドメーヌ内で処分した。
最終的に2006年に多く見られる「腐敗果」は、私たちのドメーヌでは収穫時には問題にならなかった。しかしそれでも選果は非常に厳しいものだった。なぜなら2006年は健全ながら色づきが「ノワール」と言うより「ロゼ」を帯びた薄いものが多く、それらを混入させたくなかったからだ。よって選果台に設置している照明をより「色の識別」が容易に出来るものに変え、一方で選果人たちには「それでも迷うブドウがあれば味見し、少しでも未熟に感じられるものは破棄する」ことを徹底させた。
平均収量は厳しい選果が必要だった2004年よりもやや少なく、32〜38hl/ha。一方糖度は2005年より上がり、アルコール度換算すると「ラ・ロマネ」で13,9度、最も低かった「ル・コロンビエ(AOCヴォーヌ・ロマネ)」でも13,1度。また酸度は2005年と同じレベルを保っており、フェノール類の分析値も良い。2005年と違う個性ながら、そこには2006年ならではの非常に良いバランスが生まれると見込んでいる。