〜 Les vendanges 2006 Domaine Claude DUGAT〜 2006年 ブルゴーニュの収穫風景 その2 ドメーヌ・クロード・デュガにて
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今回はデュガ家に向かう前、大きな不安材料があった。それは「2006年 ブルゴーニュの収穫風景 その1」で書いた「7月末にジュヴレイのグラン・クリュを局所的に襲った雹害」である。この雹害は7月28日に起こり、特に「シャペル・シャンベルタン」と「グリオット・シャンベルタン」の被害がかなり大きかったという。当時ジュヴレイにいた人によると、
「老練ヴィニュロンと話している時、黒い空が近づいてくるのが見えた。『ありゃ、凄いのが来そうだね』とそのヴィニュロンが言った通り暫くすると、室内にいても地響きを感じるような雨が降った」
「室内は窓際から浸水。こっちの雹は本当に局所的だから、グリオットとシャペルは難しいんじゃないかなぁ」
ご存知の通りこの二つのグラン・クリュは、ドメーヌ・クロード・デュガの宝物であり、毎年初日の午前中に収穫を終えてしまう小さな区画だ。「今年は中日に一日だけ参加させて欲しい」とドメーヌに電話をかけた時、電話越しに聞こえるマリー・テレーズ(マダム・デュガ)の声は、「収穫だけでなく、お昼でもなんでも好きな時に立ち寄ってちょうだいね!」と全くの心配を感じさせない、とても朗らかなものだったのだが、、、。
雹害が最小で済んだ! |
ドメーヌには24日の昼過ぎに到着。この日の午後はAOCジュヴレイ・シャンベルタンとAOCブルゴーニュにまたがる「シャン・フラン(Champ Franc)」の収穫作業。デュガが所有する区画の中では国道東側の平地という地味な畑ながら、まずはブドウの質に安堵した。それは2005年のように畑に入るやいなや「クロード、今年のブドウは綺麗すぎる!!!」と叫びたくなるものではなかったが、それでも今回ブルゴーニュ入りしてから見てきた様々な畑のブドウと比べると、随分と綺麗に見える。色は2005年のような黒々としたものが全体的には少ないが、それでも小振りで、質の良いタンニンを予想させる味わいだ。また品質を求めるヴィニュロンが歓迎する「ミランダージュ」を起こした房も結構多い。マリー・テレーズ曰く、
「今年よく見られるカビや腐敗果を最小限に抑えられたのは、夏期のヴァンダンジュ・ベルトやエフォイヤージュが適切だったので、風通しを維持できたからだと思う。でもブドウが所狭しとひっついているような畑なら、一気に被害は広がったんじゃないかしら」
そして休憩時間、クロードに恐る恐る尋ねる。
「あの〜、今年は雹害が酷かったときいているのですが、、、」
「ああ、私のところも遭ったよ」
「特にシャペルとグリオットが、かなり酷かったと、、、」
「でも私の区画の被害はトレ・プー(ほんの少し)だった。他に『マルシェ』など、幾つかのAOCジュヴレイ・シャンベルタンでも遭ったけど、やっぱりトレ・プー」
「じゃあ、各グラン・クリュを仕込むのに、問題は無いのですね?」
「うん、無いけど?」
クロードの様子は「なんでアキヨはこんなに心配しているんだろう?」と言わんばかりの平然さ。一方デュガのヴァンダンジャー(収穫人)は半数以上が常連だが(「今年のブドウはどんな感じ」ということも感覚的に知っている)、
「うん、確かに雹害でやられたブドウもあったけど、大した数じゃなかった。強いて言えばシャペルの方が少し多かったかな?とにかくクロードがOKを出したブドウなら、おれ達は信じて収穫すればいいのさ。ははは、アキヨは心配性だなぁ!」
なんか良い意味で拍子抜け。確かに酷い被害に遭った生産者もいるのだろうが、少なくともデュガは強運を持っていたようだ。百聞は一見にしかず。ネットや噂話(?)に振り回されすぎては、やはり個々のレベルは見えないもので、ともあれ「健在、グリオットとシャペル!」にほっとする(本当に酷い雹害は実だけでなく株などもズタズタにし、修復にかなり時間がかかるとも言うので、この点でも最小限の被害で良かったと本当に思う)。
貴重なベテラン・クーパー。無駄なく丁寧、そして早い |
先代・モーリスは、今年も畑へ頻繁に顔を出していた。 |
午後の休憩は、「ああ、今日もあともう少し!」の疲労も少々漂う。でも楽しい時間。 |
朝一のひんやりとした湿気が心地良い。エトロワ(AOCジュヴレイ・シャンベルタン)にて |
選果の大切さ |
収穫時の昼食時は、結構皆がワインを飲む。もっとも基本的に欧米人はアルコールに強く、何よりも「飲み過ぎ」は昼からの肉体労働を辛くするので、節度ある飲み方ではあるが。
「一杯だけ飲もうかな。あ、でもグラスに半分くらい、ほんの少しね」
とは隣りに座っていた長女・レティシャ。彼女は例年、「選果台・隊長」であり、他に選果を行うのは恐らくクロードと同じくらい収穫を経てきたクロードの姉・フランソワーズと、やはり常連の女性達である。レティシャが続ける。
「だって私が最後の場面でドメーヌに相応しくないブドウを見逃したら、品質が落ちるでしょ。集中力が切れたら終わり。責任重大なのよ。今年は2004年と同じくらい慎重に選果している。そうする必要がと思うから」
今年はやはり他ドメーヌからも「選果が大切」との声を聞いた。ドメーヌにより、腐敗果・未熟果・乾燥果を取り除くだけでなく、小振りや本当に色の濃いもののみを選びたい、、、など選果の理由は様々だろう。しかし「選果台の出番無し」とまで言われた2005年と比べると、2006年の選果事情はやはりかなり違うようである。またデュガの場合、少しの雹害とこの選果の厳しさで、収量は例年より低めが見込まれているようだ。
あらためて、ポーターの底力 |
今まで収穫人を「ヴァンダンジャー」と一括りにし、どちらかと言えば、「熟練の摘み手」の貴重さを書いてきた弊HP。しかし正確に書けばヴァンダンジャーには当然ながら「クーパー(摘み手)」と「ポーター(運び手)」がいる。そこで今回は、この頼もしいポーター達にスポットを。
ポーターはブドウ列に散開したクーパー達の「収穫カゴ」が一杯になれば、それを受け取り、車まで運ぶ(デュガなど一部の「こだわり派生産者」は、近年は運搬中に「雨と日光」の影響を受けないバンを使うことが増えた)。単純かつきつい力仕事だが、近年はこの「ポーターの働き」も作業効率にずいぶんと影響すると感じている。そして今回の「デュガ・ポーター三人衆(?)」。いや、今まででベストでした!まず全員が若くて元気。どうしてもこの仕事はオジサンだと、一日の後半には疲れが出て「あ〜、今行くから」が多くなってくる(この間、クーパー達は待ちぼうけ)。しかし若者は違う。ガンガン運び、次々と新しいカゴを持ってくる。どのクーパーの摘み取りが早いかも収穫開始の数日後にはキチンと把握していて、早いクーパーのカゴ交換も抜かりない。また非力な女性クーパーにとって彼らの背中にカゴを乗せるのは結構たいへんなのだが、女性の前では膝を付き背を低くして「サヴァ(大丈夫)?ちゃんと乗っかった?」のにくい心配り。陽気な盛り上げ役でもありながら、実は「パワー&スピード」で仕事きっちり。素晴らしい!
まぁデュガという基本的に和気あいあいとした収穫チームで、こんなことに感心している私は「やっぱり日本人だなぁ」と思いつつ、、、。
〜 愛しのポーター達 〜 |
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若いけれど、彼はベテラン・ポーター |
頼もしいポーターの背中 |
これだけ背負って、長い畝を何度も往復。元気な若者にしかできません、、、 | |
それでも明るい、ポーター達。畑の雰囲気を盛り上げる |
さて、最終的にデュガでは9/23に始まった収穫は9/28に無事終了。私は終了日前日にパリに戻ったので、例の「終了後、クラクションを鳴らしながら村中を凱旋」の雰囲気を味わえなかったのが残念。しかしイレギュラーな参加でも受け容れてくださったデュガ家に、まずは心よりのお礼を。ありがとうございました!
そして醸造・熟成が順調に進みますように!!!
収穫風景 〜 番外編 〜 |
クロードもデジカメ持参!休憩時にて。もっとも写真に撮られていることに気付くと照れるクロード。離れた場所から望遠で撮った私はまるでクロード・マニア!? |
デュガでの収穫も酷暑の2003年以来、今回で早4回目。そして私の目的は毎回ながら「ブドウの出来や収穫の雰囲気を感覚的に知ること」と「写真撮り」だ。
ところで収穫の時期とは観光客も多く訪れ、彼らは畑での作業風景もカメラに納めていく。だが「収穫しながら」ポケットに忍ばせたデジカメで写真を撮る日本人の存在は、当初はかなり珍しかったようで、休憩時間には「どんな写真を撮ったの?見せて!」となることも多かった。しかし時代は変わる(?)。今年は何人かのヴァンダンジャーがデジカメや携帯持参で、休憩時間は記念撮影タイム。そう、「カメラ=日本人」だったのは大昔。「デジカメがごくごく当たり前」になった最近はパリでも観光客のみならず、パリジャンだって日常を撮りまくる。
休憩時間、いつも通りカメラを取り出しファインダーを覗く。ん?ファインダー越しに見えるのは、デジカメを構えたクロード!撮影画面を確認しながら、パチリ、パチリ。その様子がいつもの手慣れた畑仕事と全く違って初々しかったので(失礼!)、つい私も「デジカメ・クロード」をこっそりパチリ。クロードが撮った収穫風景、かなり見てみたい気がするのだが?(ちなみにクロードのお母様・ポーリーヌは一眼レフを使いこなし、自分で現像も出来てしまう。家族を撮った写真は愛情に溢れていて、文句なしに上手く感激する)。