オスピス・ド・ボーヌ 2008 その2

148eme Vente aux Enchères des Vins des Hospices de BEAUNE

〜 価格ダウンの背景にある世界のブルゴーニュワイン輸入状況について 〜

  (Beaune 2008.11.16)



 

 

 近年著しい、ブルゴーニュの著名ドメーヌ・ワインや、ボルドーの著名シャトーの価格上昇。だが今回のオスピスでは、一樽あたりの平均落札価格は昨年より下落。これは今年6月に価格提示されたボルドー・プリムールの結果を追う形となった。

 ブルゴーニュの価格上昇のブレーク・ポイントは、いつ訪れるのか?近年はBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の、フランスの高級ワイン消費が著しく伸びているとはいえ、ブルゴーニュの二大顧客は英国とアメリカ。この二国の今年の消費動向と、昨夏からの金融危機がもたらした景気低迷は、ブレーク・ポイントを導くキーポイントの一つなりそうだ。そこで今回は、英国とアメリカのブルゴーニュ消費の状況を簡単にレポートしたい(資料提供:ブルゴーニュワイン事務局)

 

ブルゴーニュワインの、輸出状況

 ブルゴーニュの輸出状況を、前年比で表すと以下。

(注1) 2007年8月〜2008年7月の、日本への輸出量を1とした場合の数値

(注2) 前年比は、2006年8月〜2007年7月期と、2007年8月〜2008年7月期の対比

 

国名

   2008年度

  輸出量(注1)

    2008年

輸出金額(注1)

   前年比(量) 

         (注2)

前年比(金額)
         (注2)
全世界 12,77

9,04

▲2,3%

3,6%

ユーロ圏 3,49 1,85

▲5,6%

3,8%
ユーロ圏外

9,27

7,19

▲1,0%

3,6%
ヨーロッパ

8,03

4,28

▲3,7%

1,8%

英国 4,00

2,10

▲1,8%

▲0,3%

ベルギー 1,14 0,54 ▲6,4% ▲1,3%
オランダ 0,61 0,37 ▲26,7% ▲5,2%
ドイツ

0,79

0,37 ▲10,8%

▲1,5%

デンマーク 0,37

0,22

▲2,1% 4,5%
スウェーデン 0,39 0,18

30,1%

26,2%

アイルランド 0,30 0,16

3,4%

8,3%

イタリア 0,09 0,09 31,3% 29,5%
ルクセンブルグ 0,07

0,05

12,1% 18,4%
フィンランド 0,06 0,03 24,0% 16,9%
スペイン

0,03

0,03

5,4% 10,7%
オーストリア

0,03

0,02

49,4%

49,6%

第三世界

4,74

4,76

0,1%

5,3%
アメリカ

2,00

2,08

▲5,1%

▲0,1%

日本

1,00

1,00

▲6,7%

▲3,0%

カナダ

0,62

0,43

9,9%

9,1%

      スイス

0,27

0,34

▲6,7%

15,7%

   オーストラリア

0,07

0,10

64,4%

47,8%

   シンガポール

0,03

0,08

34,8%

64,7%

       韓国

0,04

0,09

21,0%

17,3%

       台湾

0,07

0,08

53,9%

63,9%

       香港

0,06

0,07

14,4%

22,9%

    ノルウェー

0,10

0,06

▲23,1%

▲29,4%

     ブラジル

0,05

0,04

51,4%

32,8%

       中国

0,05

0,04

83,7%

59,3%

 

 

この表を見る限り、英国とアメリカの輸入は著しく減少しているわけではない。というのも、前年比が2006年8月〜2007年7月期と、2007年8月〜2008年7月期の対比であるからだ。

ブルゴーニュの輸入最大手の英国のケースを見ると、2007年上半期と、2008年上半期の比較では、量ベースで11,5%減、金額ベースでは7,5%減であり、ブルゴーニュ・ネゴシアン組合会長のルイ・ファブリス・ラトゥール氏(ルイ・ラトゥール)によると、「9月以降の金融危機を考慮すると、年末までの総括は金額ベースで10%減に達するだろう」。背景には金融危機以外にも、インフレによる物価高や、ユーロに対してポンドが下がり、ワイン消費が低迷していることがある。イギリスの「ワイン・インテリジェンス」の調査によると、スーパーやワインショップで売れ筋だった5〜6ポンド(約725〜870円)の層が、4〜5ポンド(約580〜725円)にシフトしたことで、ワインの売上は1/4近く落ちたという。またレストランやパブでも12ポンド以下(約1740円)のワインに売上が集中し、それ以上の価格のワインは販売が滞っている。

第2の輸入国であるアメリカでは、1995年以来初めて、国産ワインの消費量が輸入ワインを上回った。アメリカはワイン消費が順調に伸びている国であるが、その消費が国産ワインに回った形である。この結果をブルゴーニュワイン事務局は、「ユーロ高が最も大きな影響であるが、アメリカで好まれているセパージュには、ピノノワールやシャルドネというブルゴーニュ品種も多く、ポテンシャルの高い市場であることは変わらない」と分析する。

 

不景気でも高級ワインを購入する消費者層というのは必ず存在し、投機的なワインの購入も健在なので、景気の低迷や、ブルゴーニュ二大ワイン輸入国のブルゴーニュワインの買い控えが、一部の著名ドメーヌの価格上昇をすぐさまストップさせることには繋がらないだろう。しかし今まで通りの価格高騰がこのまま続けられる訳ではない、という答えの一つが今回のオスピスやプリムールが示した結果ではないだろうか。