〜 Les vendanges 2009 〜

2009年 ブルゴーニュの収穫状況 その1

2009年の収穫までの推移 「9」のつくミレジムは素晴らしい!?

 
 

ジンクス通りとなるか?

 ブルゴーニュには、「9で終わるくミレジムは素晴らしい」というジンクスがある。過去50年を振り返っても、1959、1969、1979、1989、1999は良作年だった。では2009年にもジンクスは通用するのだろうか?

 コート・ド・ニュイで収穫開始がピークになった9月11日・12日と、その後9月18日〜20日にブルゴーニュに訪れた。畑で収穫を待つピノノワールは、全般的に黒々とした色あいで小粒、食べると十分に甘い。皮も厚く、青い苦みが無い種はカリッとクリスピー。また2008年の収穫時はすでに紅葉・落葉した葉も見られたが、今年は光合成能力がまだ十分にありそうな緑の葉が茂っていて、ブドウも腐敗果がとても少ない。病害が蔓延した形跡が見られず、プリプリとしたブドウは見たからに健康そうだった。

 2009年は8月がとても乾燥して暑かった。2006年以降、「夏の天候が不安定で、収穫前の好天に救われる」天候推移が続いていたが、2009年は夏らしさを十分に享受できたようだ。また収穫前・中に入り、やや天候が不安定になる日もあったが、収穫に大きな悪影響を及ぼすレベルではなく、概ね好天が続いた。

 生産者たちからは、収穫を終えた時点で「1999年と似ている」「2005年を上回るかも」という声も聞こえ始めた。ジンクスはジンクスで、ワインの良し悪しを決定していくのは今後の醸造過程である。しかし2009年に醸造所に到着したブドウが、かなりのポテンシャルを秘めていることは間違いなさそうだ。

 

ジュヴレイ・シャンベルタン プルミエ・クリュ ラヴォー・サン・ジャックよりジュヴレイを眺める。青々とした葉を残したブドウ樹の列が続く

黒々と小粒なブドウ。甘い!(ラヴォー・サン・ジャック クロード・デュガの畑にて)

 

9月11日16時過ぎ、ロマネ・コンティの収穫が始まった。「食べてみて、美味しいよ」と、収穫人たち。この日収穫されたのは、樹齢の低い一区画のみ


 

2009年の天候推移

 2009年の天候推移を要約すると、以下(参考資料:「フランス食品振興会発行メールマガジンhttp://www.franceshoku.com/」)。

 

発芽

まだロゼ色にもならない、醸し前のピノノワールのジュース。糖度を測ると、「1092」という高い数値(ヴォーヌ・ロマネ ドメーヌ・ロベール・シルグにて

厳しい冬の後、3月後半に気温が下がったが、4月中旬まで気温は次第に上がり、例年の気温を越えた。この暖かい気温のおかげで、ぶどうの植物的生長が再開された。発芽は状況や品種により異なるが、47日〜21日頃で、発芽の中間期は過去15年間の平均並で、2005年と似ていた。ただしマコネでは数日遅れている。

 

開花

5月下旬の平均気温は例年より高く、6月は最初の数日間の天候が良かったので、ブルゴーニュの大半のブドウ畑で開花が始まった。コート・ドールとコート・シャロネーズの畑の開花の中間期は2003年に近い。いずれの地区も開花は均一に、素早く広がった。マコネの開花時期は1997年に近い。

6月の上旬に気温が下がったために、ヨンヌ県と、オート・コート・ド・ボーヌ、オート・コート・ド・ニュイの畑では状況が異なり、開花の中間期は、この14年間の平均並で、2000年とほぼ12日違いとなった。成熟の遅い区画では、気温が下がった影響を受け、開花の期間が長くなった。ブドウ畑の衛生状態は、区画によってはベト病なども見られるものの、全般的に良好。

この時点で、夏の天候が順調に推移すれば、収穫は早熟の区画で9月初旬に始まることが予想された。

 

ブドウの色づき

810日前後の猛暑により、ブドウの色づきと成熟が急速に進んだ。このためブルゴーニュワイン事務局では、813日より熟度検査を開始した。
 以降も理想的な天候条件(日照、暑さ)で、順調なリズムでの成熟が進み、果実内で凝縮が始まった。週ごとに潜在アルコール度は1ポイント以上あがり、20089月半ば並みの度数に達した。ぶどうを試食したところ、糖度と酸味のすばらしいバランスが認められ、最高の出来が期待される。衛生状態は健全。

 

 収穫が始まったのは、ボージョレーで8月下旬、コート・ドールで9月5日頃、シャブリで9月半ばからである。また収量は140万ヘクトリットルが予想されており、08年度に対し10%減となる見通し。ブルゴーニュワイン事務局は、「果実味、凝縮感、バランス、力強さ、どの点をとっても09年は優れたミレジムになるであろう。 理想的な天候と剪定により収量を抑えた成果と言える」と発表している。

 実際には、7月に局所的な激しい雷雨が続く週もあり、「これ以上雨が続くと病害の蔓延や、成熟の上昇に影響する」と生産者が気を揉んだシーンもあった。しかし一部で見られたベト病などのマイナス要因も過去の経験から比較すると「ごく想定内」で、天候に起因する切迫した問題が特に生じなかったことと、「乾燥した暑い8月、続く収穫期間中の好天」は、2009年の非常にポジティヴな特徴である。

 

 

気になるのは、ワインの酸か?

 ブルゴーニュワイン事務局の発表や、生産者からの意見によると、「ブドウの糖度」「フェノール類の熟成」に関しては、2009年は高いレベルに達しているようだ。しかし一部からは「酸度の低さ」を懸念する声もある。これは今後の分析結果、また試飲で味覚として感じられるバランスを待たなければならないが、酸は全体的に低めのミレジムであるようだ。特にフレッシュな酸も要素の一つとして重要な白は、酸をどのレベルで残して収穫できたか?という、収穫時期の見極めが、ワインのキャラクターとして反映されるかもしれない。

また収穫時期の見極めに関すると、「何もかもが、順調に一律に進んだ」という2005年に比べ、2009年は区画毎の成熟度にややバラツキが見られ、より慎重に行う必要があったようである。

 

「2009年 ブルゴーニュの収穫状況 その2」では、収穫風景を写真と共に、紹介します!