〜 Les vendanges 2009 Chez DUGAT

2009年 クロード・デュガでの収穫風景 
(2009/9/12)

 

 

弊HPで、2003年以来、ほぼ毎年紹介しているクロード・デュガの収穫風景。今年も収穫の初日となった9月12日、カメラを持って畑に入った。

 デュガ家の長男・ベルトランに「なぜ、私たちのドメーヌの写真が撮りたいの?」と尋ねられた。ふと返答に困った。たしかに他にもドメーヌはあるというのに。だが私はデュガ家の収穫風景が好きなのだ。ごく単純に、純粋に。

 2003年、酷暑の年に、「一年を通して畑仕事を取材させてほしい」という私の申し出に、快諾してくれたのは当主のクロード。何もかもつつみ隠さずに見せてくれ、畑仕事に役にも立たない私に、一つずつ作業を教えてくれた。そして迎えた収穫は、想像以上に生き生きとしていて楽しかった。

 ワインの取材は思い通りにならないことも多いけれど、年に一度のデュガ家の収穫に足を踏み入れると、「ワインが好きで、この仕事を続けていて良かった」と、つくづく思う。収穫は一年の集大成で、そこにある活気や真剣さに触れると、「ワインを大切に飲みたい」という気持ちが、初めてワインを飲んで感動した時のように湧き上がる。

 デュガ家の収穫風景を、写真と一緒に楽しんでいただければ幸いです!

 

シャルム・シャンベルタンにて

 デュガ家の初日の収穫は、シャペル、グリオット、シャルムの3つのグラン・クリュ、そしてプルミエ・クリュのラヴォー・サン・ジャックであることが例年通り。条件の良い畑は早く熟すことや、収穫期間中に起こりうる雨などのリスクを避けるためだ。

 

収穫開始。カゴや収穫ハサミをめいめいに持って、畝に進むクーパー(収穫人)や、ポーター(収穫されたブドウを運ぶ人) 畑での朝食、カスクルート(バゲットを割って具を挟むサンドイッチ)。早朝から働いて、お腹が空いて、好きに具材を挟んで食べるサンドイッチは、世界で一番美味しいサンドイッチかも?

 

皆、カスクルートに手が伸びる!

朝だけれど、ワインも少々(飲み過ぎないように、水で薄める人も)


 

カスクルートに用意されたワイン。デュガ家のワインではなく、まぁ水のように軽いピノ

 

小振りに黒く熟したピノ・ノワール

 

収穫作業を、効率よく指示していく長男・ベルトラン

収穫されたブドウ。綺麗です!

 

収穫人。陽気にチョキチョキ切っていく デュガ家で通年勤務する一人。「今年のブドウは綺麗だよ!」

 

ブドウの集荷をバンで仕切るのは、次女ジャンヌ。 ブドウを切る、運ぶ、、、が、順調に進む。

 

醸造所にて

 

グリオットの発酵槽は、10HLの小さなステンレス・タンク

ブドウの到着を待つ醸造所。約5haほどしか畑を持たないデュガ家の醸造所は、驚くほど小さくシンプル、清潔。マセラシオン・ア・フロアも行わず、天然酵母による発酵を待つ。余計な人為的介入は全く行わない

 

シャルムの発酵槽は、30HLのセメント・タンク

 

選果作業

 

選果台を守るのは長女・レティシャ。色の薄いブドウなどは容赦なく廃棄する。赤ワインに見合わないと判断されたブドウでロゼを仕込むドメーヌもあるが、デュガではそれも無し。理由は単純で、「品質の高いブドウを使って、赤ワインを造る。それだけ」。デュガのロゼがあれば、それなりに売れると思うのだが(しかもグラン・クリュやプルミエ・クリュのロゼだったら!?)、そういう打算はまったくない。

 

グリオット・シャンベルタンにて

 デュガ家の畑には、とにかく家族が全員揃う。当主クロードも先陣を切ってブドウを摘み、それが収穫チームの士気を上げるのだ。

 

各クーパーが一ブドウ列を一人ずつ担当して、収穫が始まる

 

デュガで通年勤務する従業員曰く、「今年のグリオットのブドウは特に綺麗だよ!」

 

長男・ベルトラン。初めて会った7年前より、随分と風格が出てきたと思う


 

畑が似合うムッシュー、クロード・デュガ。だらしない(?)格好のクロードというのは見たことがないが、畑でこの短パンや、トレーナー、靴がビシっと決まる。畝にかがむ姿も、やっぱり堂に入っていてカッコ良い(座り込むと言うことが、まったくないのだ)。収穫に来る人たちは、ワインを全く知らない人も多いが、「これはピノ・ノワールだよ。この土地ではピノ・ノワールしか植えていないのだけれど、畑によって違う味わいのワインに仕上がるだ」などと、ニコニコと教えているのが、また何とも匠の余裕だ

 

昼食にて

 単調な収穫作業に、モチベーションとメリハリ、体力をくれるのがお昼ご飯。デュガ家のマダム、マリー・テレーズと、クロードの姉たちが腕を振るう。外食のフレンチは、何日も続くと疲れるものだが、家庭のご飯は疲れないものだと毎回思う。優しくて、何度でもお代わりしたくなる味わいなのだ。収穫太りしてしまったことも多々ある。

この日のメインは、ブッフ・ブルギニョン。ホッコリとしたジャガイモと、愛情と時間をかけて柔らかく煮込まれた牛肉。ちなみに前菜は新鮮なトマトと、ツナのサラダ。デザートはチョコレートやバナナのケーキ。ワインも進む(飲み過ぎないようにするのが、一苦労?)!


 

ラヴォー・サン・ジャックにて

 デュガ家のワインで、少し毛色の違う風味を持つラヴォー・サン・ジャック。勾配がやや強いこの畑は、収穫するには案外とラク。収穫初日が、無事に終わっていく。

病害の少なかった今年は、収穫時期になっても、葉はまだ光合成が十分に可能な青々としたもの

やはり、なんとも綺麗なブドウ

 

収穫されたブドウのカゴを、丁寧にバンに積んでいく。ここ数年、ブドウが潰れないカゴでの運搬が、ブルゴーニュでは目に見えて増えた。デュガ家ではこの運搬方法は2005年より。

 

 

 クロード・デュガのワインは、市場で高いのが難である。しかしある生産者曰く、「1本のワインを手にすると、その年の記憶が走馬燈のように思い出される」。ワインの美味しさには、現場の努力や雰囲気が詰まっている。農産物であるワインの素晴らしさを忘れたくないな、と、収穫の現場に立つ度に思うのだ。