オスピス・ド・ボーヌ 2009 

149eme Vente aux Enchères des Vins des Hospices de BEAUNE

〜 一樽あたりの平均落札価格は、前年比20,38%アップ 〜

  (Beaune 2009.11.15)

 

 





  148回オスピス・ド・ボーヌ競売会が11/15(日)に開催された。

 2009年は良作年であると早くも推測されているが、価格に関しては輸出のメインを占める英国と米国のブルゴーニュワイン輸入が量・金額ベースで前年より大幅に下降していることが、オスピスに与える影響として懸念されていた。結果は以下。

 

     蒸留酒含む落札総合計: 5,005,168ユーロ

     ワインのみの落札総合計: 4,998,100ユーロ

     ワインのみ落札総樽数: 799樽

     ワインの一樽あたりの平均落札価格: 6,255ユーロ(前年比 20,38%増)

 : 5,451ユーロ(前年比 31,12%増

 : 9,885ユーロ(前年比 2,82%減)

 

競売会では、最初に落札された樽が前年比で9%アップするなど、幸先の良いスタートを切った。その後も本来のチャリティ・オークションらしく良い雰囲気の活気に溢れ、結果としては量(昨年よりも255樽多い)・落札総合計・一樽あたりの平均落札価格(前年比 20,38%増)揃って、近年では最高のものとなった。これは2009年の前評判が高く、前日の試飲でも前評判が確認されたこともあるだろうが、2005年より運営を任されているクリスティーズの手腕も忘れてはならない。オスピス側とクリスティーズ側の呼吸も合い、今年からは個人の愛好家も入札しやすい仕組みとなった(そのため、匿名の入札も増えている)。もっともブルゴーニュの2009年度の輸出状況は厳しく(後述)、毎年ながら、オスピスの価格がそのまま市場価格を占うバロメーターとなるものではない。

 

おなじみ、会場風景


 

クリスティーズの運営も5年目。この風景もおなじみになってきた

 

2009年の味わいは?

 オスピスが開催される週末は、オスピスのワインだけでなく、他の生産者の2009年を試飲する機会もある。2009年は3年ぶりに8月が好天に恵まれた年で前評判が高く、私自身も試飲を非常に楽しみにしていた。そしてこの時期の試飲は大まかな印象でしかないが、前評判の高さは確かなものであるようだ。生産者からの見解は12/15発売の「リアルワインガイド」に紹介するので、ここでは割愛するが、現時点では特に赤に期待が持てると感じている。

 赤は全般的にとても色合いが濃く、香りには熟した赤いベリーやブラック・チェリーのニュアンスがある。2004年に感じたな青いヴェジタルさ、2007年に感じた細さが無く、果実味に集中力があり、タンニンは丸くシルキーで、余韻には豊かな果実味が残る。完熟して健全なブドウから出来ていると感じさせるもので、イメージで言えば「太陽に恵まれた暖かいワイン」。だが若干、酸が低いのではないだろうか。同時期に同様の条件で試飲した2008年のリンゴ酸が高く、一言で言えば「酸っぱい」と感じたのは対照的だ(もっとも2008年も、マロラクティック発酵を終わった後に、味覚で感じる酸がどの程度に落ち着くかは分からない)。またしっかりとした骨格を伴うスケール感で言えば、2005年よりもややコンパクトかもしれない。この時期に何かを言うのは尚早だが、2005年よりも早くから楽しめるスタイルを想像する(2005年はとにかく「閉じている」期間が長い)。もっとも何かと評価の高い2005年に関しても、生産者自身が「ブルゴーニュらしくない」と批判的(?)な発言をすることもあり、ここからは生産者がそれぞれどのようにワインを導いていくのかを待たなければならない。

 白に関しては、熟した洋梨や白桃の香りが顕著で、とてもヴォリュームがある。ただし酸は全体的に低いのは赤同様で、赤以上に酸の高低が生産者により分かれており、ブルゴーニュらしい冷涼さやミネラル感をどのように熟成で導けるかが、一つの鍵になるのではないだろうか。

 ともあれ赤・白ともに、2009年が好天を享受したミレジムであることは間違いない。

 

ずらりと並べられた、オスピス・ド・ボーヌの試飲用サンプル

オスピスで最初に試飲したのは、ペルナン・ヴェルジュレス プルミエ・クリュ。とてもチャーミング



 

プレス用の試飲会場にて

2009年の傾向を説明するのは、オスピス・ワインの責任者、ローラン・マス氏

 

ブルゴーニュにとっての、日本の市場

 ブルゴーニュワイン事務局のレポートによると、ブルゴーニュにとって日本の市場は、不況にも拘わらず安定傾向にある。

 しかし不況の影響を受けて、ブルゴーニュの輸出の減少は深刻だ。特に二大輸出国である英国とアメリカの落ち込みが激しい(輸出されるブルゴーニュワインの2本に1本は、このどちらかの国に向けたものである)。

2008/09年度(8月―7月)の全世界への輸出は、量ベースで24,4%減、金額ベースで24,7%減。うち英国向けは金額ベースで35%減、米国向けは金額ベースで40%減。英国は市場が飽和状態で、購買力が落ちており、輸入業者によると回復に34年かかると見られている。また米国は消費が回復しておらず、消費者が価格に敏感である状況が続き、国産の一部の高級ワインは安定しているものの、伸びを見せているのは低価格帯の国産ワイン消費やアルゼンチンなどの輸入ワイン。ブルゴーニュワインに対してはユーロ高の影響や、今年から本格的な販売が開始される2008年を買い控えて、前評判の高い2009年を待つ可能性もある。

 一方日本向けは、量ベースで3%、金額ベースで5%の微減に留まった。前年と変わらず、量では世界第4位、金額では世界第3位。アジアでは最も安定した市場だ。

 この日本の市場に対して、ブルゴーニュワイン事務局は以下のように分析している。

     石油価格やユーロの高騰で、2008年がすでにワイン輸入業者にとっては厳しい年であった。

     消費者が価格にシビアになり、700−1500円(店頭価格)のワインに関心が高まっている。この価格帯で対抗できるブルゴーニュワインは少ない。

     ディスカウント・ショップの台頭により価格の引き下げが起こっているが、ワインは単なる「アルコール飲料」とは扱われていない。

     ワイン消費量は年間2,5リットルと限られているが、ワインが食事や文化、楽しみと繋がっており、一般に開かれたワイン学校も多く造詣が深い。

     ブルゴーニュワインに関してはシャブリの知名度もあり、消費は白の方が多い55%。しかしワイン全般で見れば赤48%、白43%、ロゼ8%で、赤・白・ロゼの消費比率は年々バランス良くなっている。

ブルゴーニュにとって、日本には決定的なマイナス要因がないといったところか。

日本の消費者の関心が、今後どの方向に向いていくのか。それが最大の鍵となる。