L'Anniversaire
des Caprices de l’Instant パリのワインショップ、「レ・カプリス・ド・ランスタン」21周年パーティ 〜 あらためて「ワインが好き!」になった1日 〜 |
パリのワインショップ「レ・カプリス・ド・ランスタン(les Caprices de l’Instant)」(以下、カプリス)が、さる
2010年10月24日、ワインショップ創立21周年を祝してパーティを開いた。パーティと言っても、ささやかなものではない。朝の10時から夜の10時まで、60種類以上ものワインが、カプリスとバスティーユにある3箇所のレストランや、カフェ、バーで、食事やシャルキュトリー、フロマージュと共に振る舞われたのだ。ちなみに「無料」である。一ワインショップが催すパーティとしては、今時ありえない破格の大盤振る舞いだ。
久しぶりにHPに記事を書こうと思ったのは、カプリスがやはり、素晴らしいワインショップであるからだ。パリには200件を超えるワイン屋があるが、個人的に最もお世話になっているのはカプリスである。
日曜日の午前中ながら、皆「ワインを飲むぞ!」と気合いたっぷり |
朝シャンにしては、なんと豪華な、、、! |
なぜ20年目ではなく、21年目にこのパーティを開いたか?は後述するとして、今一度カプリスを説明したい。パリに来る多くの知人から「パリでお薦めのワインショップは?」と尋ねられた時も、私は即答で「カプリス」と明言している。
カプリスが創業したのは1989年。当時はジェラール・クロワゼ氏(以下、ジェラール)が一人で立ち上げた。1995年に、現在のオーナーカヴィストであるラファエル・ジムネズ・フォーヴティ氏(以下、ラファエル)が加わった。私がジェラールとラファエルの二人に会ったのは2002年だが、二人のカヴィストの熱さに圧倒された。二人のタイプは違うけれど、とにかくよく喋る!しかしそれは販売トークではない。純粋に「ワインの良さを伝えたい」という気持ちから、言葉が次から次へと溢れてくるのである。
2006年、ジェラールは南仏へ引退し、ラファエルがオーナーとしてスタッフを率いているが、「フランス一熱いカヴィスト」度は、年々加速しているのではないだろうか。その熱さには、生半可な心持ちでは立ち向かえない。こちらの「ワインを知りたい、買いたい」という気持ちが「1」ならば、ラファエルは「3」で返してくる。よって私は、自身のテンションが低い時には、このショップに足を向けることができない。ラファエルの機関銃のような語り口に、圧倒されてしまうからである。ともあれカプリスは、たった1本のワインを選ぶ時にでも、とことん親身である。
話は逸れたが、ワインショップの要はワインのセレクションである。カプリスのセレクションは、ラファエルの身を削るような試飲があるからこそ成立している。ラファエルとは様々な試飲会で同行するが、彼ほど真摯に試飲に取り組む人を他に知らない(話が逸れついでにもう一人挙げれば、「リアルワインガイド」の徳丸編集長である。ラファエルとは違うアプローチを取るが、徳丸氏の試飲も真似できるものではない)。試飲で大切なのは、一に体力、二に集中力である。ラファエルはこの二つが、決して途切れることがない。終日恐ろしいほどのハイテンションで試飲をこなしていく。「顧客に適正な価格で、素晴らしいワインを紹介したい」という気持ちが、ラファエルのハイテンションな試飲を支えている。そして驚くのが、試飲で大切な3番目の要素、記憶力。ラファエルは記憶力がずば抜けている。銘柄と味わい、いつ何処でどのような状況にて飲んだのかを、刻銘に記憶しているのだ(これは私が、最も真似できないところだ)。その結果として、カプリスには知名度に囚われない、顧客のために選び抜かれたワインが揃う。
ラファエル・ジムネズ・フォーヴティ氏と、彼の右腕、グレゴリー・スキャッフ氏。ボーヌの街中にて |
話をパーティに戻そう。なぜラファエルはこのパーティをしようと思ったのか?ラファエルは言う。
「ショップの経営は顧客に恵まれて上手く行っている。カプリスが21年存在しているのも顧客のおかげ。ならば顧客にお礼する場を設けたかった。僕は人が好きだし、カヴィストの仕事はとても人と近い。顧客と一緒に、ワインと食事をわいわいと楽しめればと思った。カプリスに来る人は、オープンマインドであってほしい。
ワインとは皆と分かち合う文化で、コンヴィヴィアリテ(人と人との和)だ。パーティではデイリーワインもグラン・ヴァンも同じように出したが、ワインは一部の著名生産者だけが造っているものではなく、色々な人が造っていることを知ってほしかった。低価格のワインも、高額なワインも、それぞれに楽しかっただろう?逆に言えば、『安いから品質もイマイチなんじゃないか?』と怖がることもないんだ。安くても美味しいワインはたくさんあるし、楽しみ方はいくらでもある。
著名ワインだけをチョイスして店頭に並べるだけなら、ワインショップとして意味が無い。私たちが選んだ無名のワインも実際に一緒に飲んでもらって、顧客が判断することが大切だ」
アンヌ・モレ(ピエール・モレ)。パーティにはエリック・ルソーなど、多くのワイン生産者も訪れた |
流石に子供はワインを飲まないが、「フランスの子供は幼い頃からワインのある風景を知っているのだなぁ」と、妙に感心 |
ショップでは夜10時までワインが供され、顧客の中には熱心にメモを取る人も |
この日パーティに訪れたのは、顧客やカプリスにとっては取引先である生産者も含めて200人以上。しかし普通の試飲会とは異なり、生産者が自身のワインを紹介するわけでもなく、そこに参加した人たちは、同じワインを飲み、同じものを食べ、それぞれが自由に楽しんだ。
「すべての垣根を取っ払いたかった。生産者と顧客、カプリスと顧客、カプリスの中ではオーナーである僕とスタッフたちの上下関係、そしてデイリーワインとグラン・ヴァン。食事を一緒に出したのにも理由がある。評価の高いワインは、ワイン単体で飲んでも揺るぎない美味しさがある。でもデイリーワインは、ワインだけで飲むと印象が弱い時もあるが、食事と合わせることで俄然その魅力が引き立つ。手が届く価格で、毎日楽しめるワインを、これからもどんどん発見して、顧客に紹介していきたい」
ちなみに「21周年」がパーティとなったのは、単に昨年はオーガナイズが間に合わなかったから。また10月24日という日を選んだのは、粋な理由もある。「10月24日は、ビオのカレンダーで言うと『果実の日』。テイスティングにも適した日なんだ。前日は満月だったしね」
さて、22周年パーティは、来年に開催されるのか?それに関しては、
「毎年同じ規模で行うとすると、やっぱり経費がかかりすぎなので無理かも。でもこのパーティは金の問題じゃない。気持ちがあってこそ。参加してくれた顧客や、協力してくれたレストランやカフェとも、また一歩、距離が近くなったように感じている」。やっぱりラファエルは、生粋の、しかもとても熱いカヴィストなのだ。ラファエルは英語も話すし、最近は日本語を少し話すスタッフも加わった。パリに来た時には、コンヴィヴィアリテなワイン選びができるカプリスに、ぜひ立ち寄ってほしい。
私もこの日は、カプリスからスタート、バスティーユ周辺に点在するレストラン、カフェ、バーをスタンプラリーのように廻りながら、10時間くらい飲んで食べていたが、不思議と酔いが回ることもなく、「次はどれを飲もう?何を食べよう?」というウキウキとした集中力が、気持ちよく続いた。一緒にいた友人たちも楽しむことに没頭した。
「ワインを知っていて良かった!」と素直に思え、あらためてワインに惚れ直したのである。
なお、この日にカプリスが出したワインは、写真の後の文末に。
バスティーユのレストラン、Restaurant Le Vieux Chêneにて。ポトフに合わせたワインがスタンバイ |
バスティーユのカフェ、Café du Passageにて。昼間からチーズやフォアグラと一緒にワインを飲む贅沢さ |
Café du Passage。ワイン好きにとって、心地よい空間をいつも提供してくれる |
バスティーユのバー、Resto zinc des Marcheurs de Planèteにて。やはりラファエルのチョイスしたワインがズラリと |
Resto zinc des Marcheurs de Planète。レ・カプリス・ド・ランスタンを祝うパンがカウンターに飾られていた | Resto zinc des Marcheurs de Planète。シャブリの美食に欠かせないアンドゥイエット(手前)と共に、シャブリを飲む幸せ! |
この日のワインリスト
〜カプリスにて〜
Champagne Jacques Selosse Rose
Champagne Bollinger Rose
Champagne Pierre Paillard
2000
Champagne Lenoble
2000
Chassagne- Montrachet 1er C Virondots 1999
Marc Morey
Chablis GC Les Clos 2000 Louis Michel et fils
Batard-Montrachet 2000 P. Morey
Meursault PC Genevrières
1999 F. Mikulski
Chateauneuf du Pape
Côte Ronde 2006 Paul
Autard
Chateauneuf du Pape
2006 Janasse
Chateauneuf du Pape
1999 Château de Beaucastel
St Joseph La Madone 2006 P. Verzier
Bourgueil Le Grand Clos 2006
Amirault
Volnay Clos des Chênes 2007 Glantenay
Bourgogne 2005 Ghislaine Barthod
Gigondas 2004 Dom du Cayron
Gigondas Cuvée Ventabren Moulin de la Gardette
2006
Gevrey 1er Cru Les Cherbaudes
2006 Louis Boillot
Beaune 1er Cru Les Cent Vignes
1999 Germain Ch de Chorey
Aloxe Corton Les Vercots 2003 Follin
Aloxe Clos du Chapitre 1993 Follin
Vosne 1er Cru Les Beaux Monts
2002 Grivot
Clos Vougeot 2001 Drouhin Laroze 2
Clos des Lambrays 2002
Clos St Jacques 2003 Sylvie Esmonin
Clos St Jacques 2003 Rousseau
Gewurztraminer Gd Cru Zinkoeplflé
2007 Rominger
Schlossberg Grd Cru 1999 Weinbach
Riesling
Grand Cru Altenberg de Bergbieten
2004 Mochel
Ch Le Moulin 1998 Pomerol
Vieux-Château-Chauvin St Emilion Grd
Cru 1998
Leoville Poyferré 1996
Vacqueyras Lopy 1999 Sang
des Cailloux
Fonseca Vintage 1997
Puligny-Montrachet 2007 Jean Claude Bachelet
Pommard Jarollières 1996
Dom de la Pousse d'Or
〜Resto zinc des Marcheurs de Planèteにて〜
Chablis GC Grenouilles 2003 Michel
Chablis
GC Les preuses 2006 N & G Fèvre
Chablis Forêt 2004 Dauvissat
Meursault Limozin 2002
Mikulski
Meursault 2004 Lafon
Meursault 2001 Morey Blanc
Pernand sous Fretille 2006 Rollin
Vouvray demi sec 2002 Brisebarre
Vouvray demi sec 2005 Huet
St Amour Hamet-Spay 2007
Mercurey VV 2006 Garrey
〜Café du Passageにて〜
Rabaud Promis 1997
Sauternes
Bonnes Blanches 2001 Ogereau
Duval-Leroy 1996 Champagne
Pontet Canet 1995
Leoville Barton 1994
Montrose 1994
Rauzan Gassies 1996
Côte de la Houssaye 2001 Ogereau
〜Restaurant Le Vieux Chêneにて
Gazin 99 Pomerol
Beauséjour Bécot 1994 St Emilion
Châteauneuf du pape
Ch de la Font du Loup 1999
Varennes du Grd Clos 2001 Joguet magnum
Auxey Duresses 1er Cr Clos du Val 1996 M Prunier
Nuits Saint Georges Pruliers
2001 Gouges