Domaine Dominique GALLOIS 

〜ガロワ氏に「世紀の暑い夏」を聞き、2003年を利く〜

(Gevrey Chambertin 2003.9.24)

 


 

ガロワ氏。2匹の巨大な親友と。

 例を見ない酷暑のために1893年以来の早い収穫となったブルゴーニュ地方であるが、そのアペラシオンの一つ、ジュヴレイ・シャンベルタンの中で最も早く収穫を開始したのが、ドメーヌ・ドミニク・ガロワ(注)である。ガロワ氏が収穫を開始したのは8月23日(土)、終了したのは27日(水)であり、その収穫の様子はフランスのテレビでも放映された。

 そこでガロワ氏に今年の収穫とその後の醸造の傾向を尋ねることが、今回の訪問の目的である。

 

(注)

ドメーヌ・ドミニク・ガロワ:

ドメーヌとしての瓶詰めは1989年。面積は小さいがジュヴレイ・シャンベルタンに樹齢の高いポテンシャルのある畑を所有する。斬新な黄色のラベルとキャップ・シールと共に名前がもっと大々的に出ても全く不思議では無い、注目株のドメーヌである。

 詳細は、「生産者巡り Dominique GALLOIS 〜3,5haの畑の中で〜」を参照。

 

Extraordinaire!(驚くべき年)

 

 以下はガロワ氏に尋ねた質問と、その回答である。

 

今年の収穫日を決めたのは最終的にいつですか?

8月の18日(月)。今年ほど予測が激しく変わったミレジムは過去に無い。開花が終わり、気温が高温で推移し始めた6月には例年より10日ほど早い9月13日頃を予測していたが、7月にブドウの色づきが見られた時点で9月6日頃に修正、さらに例の酷暑を経て収穫日を8月23日(土)に決定した」。

―今年の異例に早い収穫日を決定した1番の決め手は?

酸度の問題。酸度の低下が観察された時点で糖度や果皮の色づきも十分なピークに達していたし、他の要素に上昇の兆しが無ければ収穫を待っていても無意味。同時に酷暑と乾燥でしおれ始めたブドウの実や葉も出てきたからね。

 また8月の28日(木)―29日(金)にかけては、雨が降る予測も出てきたんだ。収穫前、収穫中の雨は避けたかった

―テレビであなたが語った「2003年、ジュヴレイ・シャンベルタンにおいては8月に収穫を終えた生産者こそが、良いワインを生み出すこととなるだろう」という言葉は、残念ながらテレビではカットされてしまいましたが、なぜそのように思うのですか?

「収穫を待つ、と言えば聞こえは良いが、このような『異例のミレジム』においての『待つ』という言葉は評判の為のコマーシャルだと思う」

―ヴァカンスを取り過ぎた生産者とか?

「ははは」(この質問には答えず)

―収量はどの生産者も非常に落ちていると聞いていますが、ガロワではどうですか?

「例年の約35−40%減かな」

 ―また醸造も早く進む傾向があったと聞いていますが?

「糖度の高さがあり確かに早め。色素の溶出も早く、デキュヴァージュ(仕込み槽から一次発酵の終わったワインを抜き出す作業)が終了したのは、9月の11日」

 ―現時点でのワインの醸造状況は?

カーヴの隠れ主(?)、カエルのマルセル(ガロワ氏命名)。ガロワ氏曰く、「カエルが寝床にするのは適度な湿気があり、温度が一定である良いカーヴの印」。実際ガロワのカーヴはかなり深い。そのカーヴですら影響を受けたというのだから、今年の猛暑は恐ろしい。

「異例の早い収穫、そして酸度の低さ。内心、最初はどうなることかとひやひやしたものだが、不思議とうまく進んでいる。というわけで今は心配から少し開放された、ってところかな。ただ生産者によっては状況次第で補酸を行う必要もあるだろう。過去のこのようなミレジムといえば1991年が思い当たる(注)

 ―他に2003年の特徴と言えば

畑においては、乾燥のお陰でウドンコ病やベト病対策の散布がミニマムに済んだこと。両方で計4回のみだった。除草剤無し、化学肥料無しのスタイルも、1991年以来健在だよ。

醸造においては、どんなに暑くても決して18℃を超えなかったカーヴが最高で22℃を記録した。この間だけ少し2002年のマロラクティックのペースが乱れたが、今は順調に進んでいる。

極端な出来事が立て続けに起き、過去のミレジムにある全ての経験からの熟考を迫られ、かつその熟考はこれからも生きるであろう、という意味では2003年はまさに『驚くべき(extraordinaire)ミレジム』だと思う」

 

そして今回はガロワ氏のご厚意により、樽に移されて2週間足らずの2003年をテイスティングする機会に恵まれた。

 

(注)1991年もその収量や酸の低さで知られるミレジムである。

 

テイスティング

 

 今回のテイスティングは以下。

バレル・テイスティング 〜2003年と2002年〜

     ジュヴレイ・シャンベルタン

     ジュヴレイ・シャンベルタン プルミエ・クリュ レ・コンブ・オー・モワンヌ

     シャルム・シャンベルタン

ボトル・テイスティング 〜2001年〜

     ジュヴレイ・シャンベルタン

 

 「酸度の低さ」がとにかく問題とされ始めている2003年である。そして私にとってこのような早時期のバレル・テイスティングは初めてであり、当然これらはマロラクティック発酵も始まっていなければ、落ち着きさえしていない。よって今回の2003年における私のコメントは経験値という分析力に欠け、あくまでも感想になってしまうのだが、現時点ではガロワ氏の言葉通り「不思議とうまく進んでいる」のでは、と思われた。

 というのも、ジュヴレイ・シャンベルタンにあるのは生まれたてのワインであるにもかかわらずこのアペラシオンらしい既に濃密なスミレであり、そして驚かされたのはレ・コンブ・オー・モワンヌにある綺麗な酸である。ちなみに私はしっかりと酸の乗ったワインを好む傾向があり、酸というメリハリが欠けたワインには評価が厳しくなる傾向があるのだが、それを差し引いてもガロワの2003年において「酸度の低さ」は特に気にならない。綺麗な酸じゃないですか、と素直に感想を述べると、

「僕にとっても矛盾なんだ。分析値における酸度はやっぱり低い。でも舌に感じられる酸はなぜか良いものなんだよ」とガロワ氏。マロラクティック発酵が今後どのように行われるかによって変化していくのであろうが、既に「プルミエ・クリュ」然としたワインの放つ力にも圧倒される。

 シャルムも酸の質はやはり美しく、スミレ主体のフローラル・トーンや、熟した生のカシス、ミネラル、細かで豊富なタンニン、甘さ等が、今は落ち着きなく、しかしパワーを持ってワインから飛び出してくる。

 ところでガロワでの醸造は、基本的に「放任」。優れた生産者が放任主義であるのは、自分たちが育て上げたブドウの力を信用していることと、ミレジムの差違を個性として昇華させる寛容さに他ならない。そしてブドウに「放任主義を可能とする力」を与えるのは、「収穫の瞬間の見極め」まで続く通年の一つ一つの「適切な」畑仕事である(そこにガロワなら「平均して高いブドウ樹齢」という味方も付く)。

2003年がどう推移していくかもまさに「ブドウの力」であり、そしてガロワにおいて2003年はまずは良いスタートを切っているのであろう。ジャーナリストとして訪問した私に2003年のテイスティングを敢行した氏の確信も、この順調なスタートにあるのではないだろうか?