Domaine Bernard DUGAT−PY 

〜突然の訪問より、近況報告〜

 Gevrey Chambertin 2003.4.23)

 

 

 

 アポイントの時間は8時。迎えてくれたベルナール氏は既に朝の畑仕事を開始しており、私達を迎えるためにわざわざ畑からセラーに戻ってきたのだと言う。フランスの日が随分長くなったとはいえ7時過ぎにはもう仕事をしているということか。

 今回の訪問は全く幸運な偶然だが(*注:最後に参照)、今までも幾度と無く彼とのアポイントを試みては成立しなかったことを伝えると

「本当にごめんね。応対できれば良いのだけれど1日に訪問の問い合わせが10〜15件来るので、全部断るしか方法がないんだ」という答えが返ってきた。

 確かにそれらに全部答えていると、彼らの貴重な労働時間と微少なキュヴェ(2001年のシャンベルタンは204本である!一樽にも満たない!)はあっという間に無くなってしまう。しかしそのことに関して本当にすまなそうな彼の様子に、やはり高名にもかかわらずあくまでも謙虚な彼の従兄弟、クロード・デュガ氏を思い出す。会う人を虜にしてしまうこの心地よい優しさはデュガ一族に脈々と流れているものなのかもしれない。

 

近況報告

 ドメーヌ・ベルナール・デュガ・ピに関しては既に色々な書物に書かれているので、たった30分ほどの許された時間の中でいくつかの質問を行った。以下がその質問と答えである。

 

「4月10日にニュイに降った雪や霜の影響は?」

―高度の高い区画は特に問題がなかったが、低地のACブルゴーニュの区画に少し霜害が見られたー

 

「ヴォーヌ・ロマネの畑はどこに位置しているのですか?」

―レ・カルティエ・ド・ニュイ(Les Quartiers de Nuits)に大部分と、レ・ヴィオレット(Les Violettes)にほんの少し。これらのヴォーヌ・ロマネ・リュー・ディ(Lieu−dit)は北にヴージョ、西の斜面にエシェゾーと面している(フラジェ・エシェゾー村にあり、ヴォーヌ・ロマネの区画としては最も北寄り)。樹齢は約65年だー

 

「クール・ド・ロワの区画と樹齢は?」

―プティ・シャペル、エヴォスレ、クール・ド・ロワからなり、樹齢は50〜93年。

 

「ではブルゴーニュ・ルージュ、アリナールのセレクションの基準は?」

―ジュヴレイ・シャンベルタンの区画で樹齢が30年に満たないもので造っているー

 

「もし新しい区画を手に入れることができるとすれば、どの区画に興味がありますか?」

―どの村、畑までは正確に思いつかないが、ボーヌの白かな―

 

 「もし新しい区画を手に入れることができるとすれば、どの区画に興味がありますか?」この質問は私が生産者によくする質問なのだが、この話題に及んだ時に、彼の口から少し気になる発言が。それは「まだサインを交わしてないからはっきりとは言えないんだけれどね、、、」という一言。明らかには出来ないが彼はブルゴーニュのどこかに新しい区画を手に入れようとしているのかもしれない。それがどこかは現在私には知る由もないが。

 

ラベルの絵そのままの、美しい熟成庫。

プライヴェート・ストックのセラーにて、ベルナール氏。このセラーはなんと11世紀からあるというもの。しかしこれほどの有名な人にしてどうも写真は苦手なよう。少し固め? 出荷を待つ、2001年用の瓶熟庫。セラーはこの写真のものを含めて3区画からなる(熟成庫、プライヴェート・ストックのセラー、出荷前の瓶熟庫)。


 

プライヴェート・ストックのセラー

こちらはベルナール氏のご友人でもある、ドゥニ・モルテのオー・ヴェレの区画。小指の爪にも満たない大きさのブドウのミニチュアが!

 ところで3区画に分かれた彼のセラーの一つ、11世紀から存在する20平米ほどのセラーはデュガ・ピのプライヴェート・ストックのセラーである。そこはまさに「お宝の宝庫」。彼の古いミレジムはもちろんのこと、ご近所さんであり友人でもあるドゥニ・モルテからルロワ、アンリ・ジャイエ、ルイ・シャーヴ、ラヤス、ドメーヌ・ゴビィのムンダダ、そして国境を越え、そのセレクションはイタリアにまで及び、一日中ここにいてもその名前を書き挙げることは不可能に思われる。これらのワインは家族でぼちぼち飲んでいるのだとか(家族になりたいものだ!)。

 このセラーを見た時、私はジャック・セロスのセラーを思い出した。彼もセラーの一画は完全にプライヴェート・ストックで、その広さはデュガ・ピのものを一回りほど大きくしたものだ。そこには彼のものを含むシャンパーニュは勿論、北はアルザスから南は国境を越え、イタリア、スペインまでの文字通り「お宝ワイン」が積まれていた。セロスの場合は家族や従業員と時を見てテイスティングするらしく、訪問時には私もその機会に恵まれた。そのテイスティングはとても自由な雰囲気の中でどんどん意見が発展する、とても快適なテイスティングだったことを覚えている。

 ワインをこよなく愛し、かつ研究熱心な生産者のセラーとは、時にこうなってしまうものなのかもしれない。

 

 私達の姿が見えなくなるまで、笑顔で手を振って見送ってくださった、ベルナール氏。畑仕事が増える5月中旬以降、彼に時間を頂くことはより難しくなるだろう。しかし次回また、近況を聞けることを期待して。

 

 

最後に

 

 「今回の幸運な偶然」とは当サイトとリンクを張って頂いている「ブルゴーニュ魂」の西方さんの熱意とフットワークの軽さの賜です。感謝を込めて。ありがとうございました。  

 ブルゴーニュ魂のホームページ :  http://www2.odn.ne.jp/~cdj80950/