シャトー・パルメ 2001年は?

 

@ステンレスタンク A各ステンレスタンクの温度をコントロールするパネル

 

久しぶりのボルドーのシャトー訪問は、シャトー・パルメで始まった。このシャトーに関しては既に素晴らしい資料が揃っているので、テイスティングも含め個人的な感想を何点か。

 まず驚いたのが一次発酵(5週間目まで)が1995年以来、全て20,000L入りのステンレス・タンクで行われているということ。理由は温度管理と衛生管理が容易であるからだ。→写真@ 木樽全くを使わなくなったことで風味に影響は無いのだろうか?ちなみにこのタンクは全部で42個あり、各パーセルずつ醸造できるようになっている。うち7つのタンクは内部が二重構造で、これはプティ・ヴェルドなどの小さな区画もそれぞれに醸造するためだ。またタンクの形が円錐台形なのは、果帽の下部(液面との接触面)の面積が広くなる分、マセラシオンが容易になるかららしい。→写真A

 シャトー・パルメの熟成期間は21〜22ヶ月だが、熟成庫は全部で3つある。一次発酵直後各パーセル毎に熟成させるセラー、アッサンブラージュ後用のセラー、そして2年目以降瓶詰め迄の期間を待つ為のセラーである。→写真C 各熟成段階に適した澱引きを行う。だが全てのセラーは地上階(或いは半地下)にあるのだが、意外にも空調設備は入っていない。しかし十分に涼しい理由として壁の厚さの他に、樽を寝かしてある足場の内側が剥き出しの土になっているから等がある。自然に委ねているのだ。→写真B 

 又、清澄は精製アルブミンでもほぼ同じような効果が得られ容易なのだが、伝統的に卵白で行う。では清澄の時期、余った黄身はどうなるのか?実は余った黄身で造られたのがボルドー名物「カヌレ」と言う説がある。他の生産地では黄身をどう処理しているのか気になるところだ。

 最後に澱引きは重力を利用した細かい作業の下、行われる。

 全体的にはごく伝統的なのだが、パルメも果汁の濃縮手段としてエントロピー(減圧を利用した濃縮)を導入している。エントロピーは逆浸透膜法よりも新しい動きで、デュクリュ・ボーカイユなど従来逆浸透膜法を用いていたが、新たにエントロピーも購入したシャトーもあるようだ。ワイン生産地としては降雨量の多いボルドーにとって、特に雨の多い年などはやはり有効な手段であるらしい。「ワインに手を加えず、伝統的に」という定義は、生産者、産地によって当然ながら解釈は変わり意見が分かれるところだろう。

B樽の下。より低温に保つために土が剥き出しになっている C2年目以降の熟成庫。窓の向こうにはシャトー・マルゴーが見える

 最後に3月にアッサンブラージュを終え、まだ樽の中にある2001年のキュヴェを試飲。柔らかな赤・黒系果実が溢れ生き生きとした酸がある味わいは、既に心地良いものだが、スパイスや、木、根菜などの野菜、またスーボワやトリフに遠い将来いずれ変わるであろう植物のニュアンスが

感じられず、深み、複雑性に欠ける。これがグラン・ヴァンでなければ楽しいワインなのだが、グラン・ヴァンとして価格も踏まえて考えると、2001年のパルメは物足りない。さて評論家の方々はどのような答えを出しているのだろうか?