11/13 〜ふらりと、エペルネ〜

 

今回のORGANISATEUR

 ベタン片手に自分でアポ取り。

 

今回のチーム・デギュスタシオン

 私一人。

 

今回のスケジュール

11/13

エペルネ着

PERRIER−JOUET見学

14:00 EGLY−OURIET

帰パリ

 

 最近パリに1週間以上いると段々落ち着かなくなってくる。すべき山積みのこと等を考えるとパリの生活は完全に未消化状態なのだが、「限られた期間でのフランスという状況でありながら、ワイン産地にいない」ことが凄く勿体なく思えてくるのだ。貧乏性なのかもしれない。よってパリにいる間の生活は何となく気もそぞろになってきて、自分でたてた「パリでの予定表」は加速度的に遅れ始める。

 しかし私は同時に非常に出不精でもあり(一旦出てしまうと楽しいのだが)、理想はやはり「どこでもドア」。ドアを開けたらブルゴーニュ、が望ましい。最初のうちは新鮮だったTGVの旅もとっくの昔に飽きた。月に少なくとも10時間以上はTGVに乗っているのだからこの時間にフランス語を勉強すれば?と色々な人に勧められたが、TGVでは顔にカーテンの跡が付くほどひたすら惰眠を貪るのみ。外部から完璧に遮断されるには眠るのが最も有効だ。そして電話をかけるのも大の苦手である。生産者へのアポ取りも然り、本当に誰かに取っていただきたいものだ。

 こんなに外出には向かない性格ではあるが、ワイン産地にはやはり行きたい。しかし「出不精・電話嫌い」は当然準備不足に繋がり、「行きたいけれど遠出するには準備不足」の状況にはしょっちゅう陥る。そしてそんな時の強い見方はやはりシャンパーニュ、特にエペルネなのである。以前の裏話でも書いたが、名高いワイン産地としてエペルネはやはりダントツ近い。パリ東駅から1時間10分弱、電車の本数も比較的多く、パリーエペルネ間を通勤している人もいるのではないだろうか?1軒しかアポが取れなくてもやっきになって前後を埋めなくてもいいし、とにかくお気楽である。そんな訳で来週のローヌ行きへの助走も兼ねて、「軽く」エペルネへGO!

 

ペリエ・ジュエ 〜現存する世界最古のシャンパン発見!〜

 以前ある雑誌で読んだのだが、エペルネは人口3万人足らずながら、住民一人当たりの収入がフランスで最も高い裕福な街であるらしい。そしてエペルネを通るAvenue de Champagne(シャンパーニュ通り)にはその名の通り大手シャンパン・メゾンがずらりと並ぶ通りであるが、この通りに至っては地下のカーヴ込みの価格とは言え世界で最も土地価格が高いというのだ。そのことをこの通りに面する大手メゾンの一つペリエ・ジュエを見学した際に尋ねたら「そうかもしれませんね」とさらりと返事された。この無頓着さもお金持ちっぽい。

 

これが世界で最も高価な土地。

通りを挟んで13のメゾンが勢揃い。名前の順番通りにメゾンが並んでいる。(2002年7月撮影)
         
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ペリエ・ジュエのブティックの玄関。

 ところですっかり日本のシャンパーニュ・ファンの間では定着した感のあるRM(ブドウ生産者元詰めシャンパーニュ)だが、やはり小規模な生産者の良さを理解するにはスタンダードの大手メゾンを知ることも不可欠だ。そこでエペルネに来た時には生産者とのアポの間などに、先述のAvenue de Champagneを訪れることにしている。大手メゾンが駅から離れた場所に分散して位置するランスと比べて、駅から徒歩5分ほどの所にまとめて(?)メゾンが並んでいるというのもノー・カー派としてはエペルネの大きな魅力の一つだ。

 前回は避けては通れないモエ(通りの最初の角を占めているので本当に何となく吸い寄せられてしまう)を見学したので、今回はそのお隣、花のエッティングボトルが美しいペリエ・ジュエを訪れた。そしてこれがなかなか良かったのである。

 大手メゾンの訪問客は観光客が殆どなのでどのメゾンも見学・試飲料を設定しており、訪問時には料金を払い、広報のお姉さんに連れられ他の観光客と一緒にゾロゾロと見学することとなる。特にハイ・シーズンである夏期は、飛び交う明るすぎる米国英語に結構ウンザリする。そして現在はオフ・シーズンだがやはり最大手のモエの敷地内には観光バスや観光客の姿が見える。だが一方お隣のペリエ・ジュエの敷地は静かなもので、見学と試飲を申し込むとここは「最小催行人数1人」であるらしく、見学・試飲料の15ユーロを払うと「じゃあ、行きましょうか」と拍子抜けするほどに普通に、お姉さんと2人だけの見学が始まった。

 見学内容も今まで数々訪れた大手メゾンと少々異なり、醸造用のステンレス・タンクやデゴルジュマンやドサージュ、アビヤージュ等の風景を見せてくれることが非常に意外だった(普通は地下のセラーや見学用に展示されたブティックなど、メゾンの「綺麗どころ」しか見せないものである)。作業中の人達と挨拶を交わしながらすれ違うこともしょっちゅうで、どうも大手メゾンらしからぬ臨場感だ。そしてここでは現存する世界最古のシャンパンを見ることが出来る。そのシャンパンは1825年のもの。現在3本が残るのみだ。最後に開けたのは4−5年前で、メートル・ド・シェと醸造チームで試飲したらしい。残念ながらその時ワインがどのような状態であったかは聞くことが出来なかったが、日本が江戸時代だった頃のブドウのエキスが目の前の瓶に残されているのかもしれないと思うと素直に不思議な感覚に襲われる。

 試飲は3種類でブリュットと、なんとベル・エポック ブラン 1996年とベル・エポック ロゼ 1997年。最大手モエが19ユーロ(時間制限45分)でブリュット・インペリアル、ブリュット・ロゼ、ヴィンテージ・ブリュットなのに比べると、お値打ち感も抜群である。

 特に時間制限もなく、メゾンの他愛も無い身内話など聞きながら楽しく見学しているとあっと言う間に1時間半が経過していた。エペルネの大手メゾンを全て見学したわけではないが、ランスの数々の大手メゾンに比べてもペリエ・ジュエの見学はかなりお得で面白い。旅のひとこまにお薦めしたい。

 

 

タイユの見本。シャルドネ。タイユ・シャブリ。 ピノ・ノワール。コルドン・ド・ポワイヨット。 ピノ・ムニエ。ヴァレ・ド・ラ・マルヌ。


ルミアージュ中のベル・エポック(ジェロボアム)。ボトルがボトルだけに迫力! これが現存する世界最古のシャンパン。