12/12〜13

〜サンセール。美しきモン・ダネの丘!〜

 

 

今回のORGANISATEUR

 同行者の方と、私の2人でアポ取り。

 

今回のチーム・デギュスタシオン

 フランスであらゆるジャンルのコーディネーターを仕事にしていらっしゃる方(フランス語の流暢さもさることながら、フランス語会話のツボをおさえていらっしゃる!素晴らしい)、エアー・フランスのソムリエール(日本人で初めてソムリエールの資格を取得したステュワーデスさんである)、そして私の計3名。私にとって最高に心強いメンバーだ。しかも車あり(運転してくださったお二人に感謝します)。

 

今回のスケジュール

12/12

パリ発

15:00 Domaine Didier DAGUENEAU訪問

La Tour(サンセール)にて夕食

サン・チボー泊

12/13

10:00 Domaine Henri BOURGEOIS訪問

15:00 Domaine GITTON Pere et Fils訪問

帰パリ

 

ラドゥセットのシャトー・ドゥ・ノゼ。プイィ・フュメのサンタンドランの村に入るといきなり眼下に現れる。隔絶された美しさを持つシャトーだ。

 人間、期待しないと失望しない。口で言うのは簡単だが、凡人が「期待しない境地」に立つためには、徹底的に期待が裏切られる経験を重ねなければならないようだ。そして私自身、大概のことは周囲に「冷たい」と言われるほど諦めが良いのだが、本当に好きな事に関しては諦めが悪いどころか、多少打ちのめされても次の日には「期待」の2文字が頭上に輝いてしまい(でなきゃフランスに今いないでしょう、きっと)、なかなか「期待しない境地」には行き着けない。だが、こんな私でも早々に「好きでありながら期待しない境地」に行き着いたものがある。それは「フランスの天気」だ!

 本当にこれだけは、どうしようもない。分かりやすい例を挙げればこの国には四季があるにも拘わらず、「衣替え」という習慣が無い。なぜか?それは例え7月に30度を超える日があっても、その1週間後にセーターが恋しくなる日があることも不思議ではないからだ。同じ7月であっても、だ。よって太陽の光を浴びることをこよなく愛するこの国の人達のファッションは、初夏を過ぎると非常に統一性がない。同じ季節の同じ街にノースリーブと革ジャンが存在する。脱ぎたい、でも脱げない(体感温度に正直な人)、でも脱ぐ(夏モードを崩せない人)、ということろか(南仏以外は)。

 そして秋を過ぎると日は目に見えて短くなる。現在朝は9時を過ぎても何となく暗く、5時前は既に薄暗い。子供達は親に手を引かれ、薄暗―い中を登校し下校する。その姿を見ていると彼らがこの時期太陽をはなから期待してい理由も、彼らの目の色が薄い理由もよく分かる。

 というわけで、私だけでなくフランスを熟知している同行者にとっても「晴れたら良いね」なんてカワイイ期待はさらさら無かったのだが、これがピカピカの晴れ!私の記憶が正しければ12月に入って美しい青い空を3日連続見たのは(出発前日もなかなか良い天気だった)、初めてである。しかも期待していなかっただけに自分の普段の行いを肯定して良いのか、と勘違いするほどとにかく嬉しい!もちろん道路の凍結も霧もなく、それどころか写真を撮ることが出来るほどに晴れている!日本にいる時の冬晴れはもう少し当たり前に快適なものだったのだが。人間、期待しなかった時の喜びは原始的で、かつ大きなものだとも改めて実感する今日この頃である。「晴れている」ということがこんなに嬉しいとは!

 

 

モン・ダネの丘

モンダネの丘。完璧に美しい斜面だ。

 「知らない場所に来たんだな」。胸が高鳴った。

サンセールの村を通過し、シャヴィニョールの村に入ると真っ先に目に入ってくるのは右手にせり上がるシャヴィニョールの丘で、その丘には頂上まで張り付くようにブドウ畑が植えられている。生産地巡りをしていると似たような風景に出会うことも多いが、シャヴィニョールの丘の第一印象は強烈で「まさかそこらへんの丘と一緒にしていないでしょうね」とでも言わんばかりの個性を放っている。そしてその丘の美しさがフィナーレを迎えるのが「モン・ダネの丘」だ。

高度は定かではないが、このモン・ダネの丘の真ん前にドメーヌを構えるジャン・マリー・ブルジョワ氏曰く、傾斜度は急なところで45度から50度にもなるという。この傾斜度はロティの丘に匹敵する。しかも斜面は完璧に南向き。また畑が植えられていないところは肉眼でもうっすら白く見えるほど、土壌は見事にキンメリジャン。余りにも目を凝らして見ていると、冬の田舎の澄んだ空気や斜面の傾斜度が距離感を狂わせ、遠くの斜面にふと手が届きそうな錯覚を覚える時がある。ミステリアスですらある。そしてこの斜面は神(やはりこの場合バッカスだろうか?)に選ばれたワインのための斜面なのだと感服する。

モン・ダネの丘同様、今までも息を飲む「ワインの丘」と幸運にも出会ったことがある。そこで私の数少ない生産者巡りの中で「美しいワインの丘」ベスト3を選ぶと以下となる(細かいことを言えば、クーレ・ド・セランなど個人所有の美しい丘もあるのだが、今回は敢えて公共(?)の丘から選んでみた)。

     コート・ドール(特にシャンボール・ミュジニィからヴォーヌ・ロマネに抜ける丘)

     エルミタージュの丘

     モン・ダネの丘

 これらの丘には、オーラがある。それはワイン愛好家にしか分からないようなケチ臭いオーラではなく、万人が見ても息を飲む美しいオーラである。これらの丘が観光客にその景観を愛でられるのも当然だ。

 ところでモンダネ「Les Monts Damnes」を直訳すると「忌まわしい山」となる。なぜならこの丘で働くことは重労働を意味するからだ。選ばれし丘は美しい外観とは裏腹に、共存していこうとする者を厳しく選んできた丘でもあるようだ。