10/15〜16

〜初のヨンヌ県!〜

 

 

 

今回のORGANISATEUR

私個人で。

 

今回のチーム・デギュスタシオン

 

私一人、、、。

 

今回のスケジュール

 

10/15

パリ発

10:00 Henry de VEZELAY訪問

15:00 Domaine Anita et Jean−Pierre COLINOT訪問

シャブリ泊

10/16

10:00 Philippe GOULLEY訪問

14:00 La CHABLISIENNE訪問

帰パリ

 

 体が急な涼しさに付いていかないのか、絶不調である。風邪の症状と言われる全てのものを引き連れている状態が約3週間。鼻が完全にアウトなので、パリで興味深い試飲会などが行われていても全てパス状態である。

 パスした試飲会の中で最も心残りであったのが、「シャブリのグラン・クリュのみを比較試飲する」というもの。生産者別に会場には少なくとも50種類以上のワインが並んでいたであろうに。こういう試飲会はパリならではなので、非常に悔しい。

 余りにもこの悔しさが尾を引き、鼻が通ってきた頃を見計らって急遽シャブリ行きを決定。考えてみたら余りにも有名なこの地に、今まで足を一度も踏み入れていないと言うのも不思議である。

 

遠いぞ、ヨンヌ県

 

 シャブリ行きを決定すれば、後はどういう路線で廻ろうか、ということになる。そこで

@     シャブリでタイプの違う生産者を比較して廻る。

A     ヨンヌ県全域を廻る。

という選択肢が出たのだが、今回はAを取ることにした。Aを選択した時点で、真っ先に訪問先として浮かんだのが、Henry de VEZELAY(アンリ・ド・ヴェズレイ)である。ヴェズレイという未知の地への興味は勿論のこと、赤はあのパカレ氏がコンサルティングしているというのも聞き捨てならない。

 しかしヴェズレイは何処にあるのか?シャブリとディジョンの間、という見当はつく。まずは手元にあるフランスのワイン本を片っ端からめくってみたが、ヨンヌ県のワイン産地の地図はどれもがオークセロワ地区のイランシー止まり。ワイン本にも地図が載っていないだなんて。これは酷い扱いである。そこで今度はネットで検索するが、どうもヴェズレイは教会で有名な地らしく、出てくるのは殆どが「フランスの教会巡り」のページばかり。しかも教会巡りの「ヴェズレイへの行き方」を読むと車でない限り、皆さんかなり苦戦を強いられているようだ。不安が募る。

 とりあえず、アンリ・ド・ヴェズレイにアポイントを取る時に「パリから電車での行き方」を教えて頂いた。最寄りの駅は「Sermizelles−Vezelay」。当然ながら聞いたことも無く、SNCF(フランスの鉄道)のブティックで職員に紙に書いて駅名を見せると、いきなり怪訝な顔。初めて見る名前だねぇ、等と言いながら検索をし始めた職員がこちらを振り返り言ったのが、「大丈夫。存在するようだ」。

 こういう場合、自分のアポイントに都合の良い電車が無いことは覚悟していたが、パリからこの駅に着く電車は、「10時42分着」「16時48分着」の2本のみ。私のアポイントは14時である。しかも当然ながらTGVでは無いので、10時42分に着くためにはパリ発7時10分の電車しかないのである。ああ、地図上ではパリから近いワイン産地なのに、感覚的にはディジョンやアヴィニョン、ボルドーの方がずっと近い。仕方なくまだ夜が明けぬ早朝にパリを発った(フランスの日の出は既に遅く、まだ夏時間の現在は8時過ぎなのだ)。

 しかし車内のアナウンスで、私が乗った電車は目的地である「Sermizelles−Vezelay」を通過&停車することが判明(SNCFの兄ちゃん、検索の仕方ヘタクソですよ)。ならばアンリ・ド・ヴェズレイを午前に繰り上げ、当初は諦めていたイランシーを午後に入れる。我ながら良い考えだ。そこで早速車内から電話をかけ、冒頭にあるスケジュールと相成った。

 だがまだ難関(?)は続く。「Sermizelles−Vezelay」の駅で、イランシーの最寄り駅「Vermenton」へ行く電車を尋ねると10時過ぎ、16時過ぎ、19時過ぎのこれまた全く実用的では無い3本立て。久しぶりに莫大なタクシー代の予感である。しかし選択肢が無いものはどうあがいても仕方がない。

 そうして辿り着いたアンリ・ド・ヴェズレイの訪問は発見の連続で、親切なルケ氏は車の無い私を送ってあげようと申し出てくれたが、「次のアポはイランシーです」と言うと絶句。「往復すると午後の仕事に間に合わないから無理だ。ゴメンネ」と取りあえずヴェズレイの村中のタクシー乗り場付近まで彼の車で移動。まずはジモッティの熱気がこもる食堂のようなレストランで昼食を取ったのだが、これが激安。「前菜(5種類からチョイス)+メイン(同じく5種類。私はホロホロ鳥のフリカッセをチョイス)+フロマージュのプラトー(エポワス、ブルー、などから好きなだけチョイス)+デザート(4種類からチョイス。既に満腹でパス)+カフェ+卓上のテーブルワインと水は飲み放題」で11ユーロ(!!!)。ああ、ここは本当に田舎なのだ。ますますパリとの隔たりを感じてしまう。

 結局54ユーロ(これは今回の全ての滞在費と食費を合わせたものよりも高い)を費やしてイランシーに到着。そしてシャブリへは更に25ユーロ投資。シャブリへの運転手は移動費に涙する私に大いに同情したのか、翌日の移動のタクシーはお迎え代を取らない彼の友人を手配し、更にはシャブリ近辺からパリに帰る電車の時間まで調べてくれた。そしてメーターを止めてからシャブリ村の観光付き+タクシー代の端数は切り捨て。こういう親切もパリのタクシーではまずはお目にかからない。

 結論。電車で行くヨンヌ県は遠い。またヨンヌ県に流れる時間はコート・ドール県に流れるそれよりも更にゆっくりしている。そしてこの地で生まれるワインの個性も「ブルゴーニュ」という範疇に十把一絡げには出来ない、当初の予想以上に確立した個性を持つものであるということだ(これは後日生産者巡りにてレポート)。

 

キンメリジャンからなるシャブリでは、表土にもこのように小さな貝殻がぎっしり詰まった石がゴロゴロ。ブルミエ・クリュ「フルショーム」の畑にて。

この白々とした表土!

シャブリの機械収穫率は予想以上に高く、なんと95%であるらしい。機械収穫では柔らかい身を感知して収穫するために、今年のような猛暑と乾燥で干しブドウ状になったものは積み残される。どの畑の樹にも写真のような房がかなり見られた。

 

サボテン成長記(今回の産地巡りとは全く関係はありません)

 

 部屋に緑が無いのも味気無いので、引っ越し時にサボテンや熱帯植物のミニチュアを5鉢購入した。別にサボテンが好きなわけではないが、産地行脚が多いので毎日の水やりが必要ではない植物を選ぶと必然的にこうなった。

 「女性の一人暮らし」「サボテンを育てている」。なんか凄くくらいイメージである(まぁ実際私は底抜けに明るい人間ではないのだが)。しかし「3週間くらいは水をあげなくても大丈夫」と購入時に言われたサボテンですら、今夏一時帰国して部屋に戻ると3鉢がお亡くなりになっていた。3週間近く窓のシャッターを閉め切っているのはいかにも「留守ですよ」と言っているようなので、シャッターは開放して家を空けたのであるが、酷暑の今夏、シャッターを開けていたせいで恐らく部屋はサウナ状態になりサボテンにとっては砂漠に生えているよりも過酷な状態に置かれてしまったに違いない。合掌。

 しかし一鉢だけが驚異的な生命力を見せている。購入時は小指ほどの高さであったのだが、購入直後からニョキニョキと育ち始め、今ではアルザスの瓶高に並ばん勢いだ。これは予想外の展開である。購入した植木屋さんで事情(?)を説明し、大きな鉢と土を貰って植え替えた。「夏期でも水は2週間に1回。やりすぎは逆効果」と教えられたがこの成長ぶりを観察していると、どうもこのサボテンが「水くれ〜!」と言っているように見えて仕方がない。なので成長が早い時には植木屋さんのアドバイスを無視してじゃんじゃん水をあげている。

 たかがサボテン。しかし最近このサボテンを見ていると、多くの「土と働く」生産者が言うこの言葉、「ブドウ栽培に基本はあっても、最終的にルセットはない。結局は少しでも多く畑に自分の足で入り、1本1本のブドウ樹が『何を欲しているか』を自分の感覚で強く感じることが凄く大切」を思い出すのである。私自身は「土いじり」とは全く縁の無い人間であったが(サボテンを「土いじり」と読んで良いのかも疑問が残る)、やはりワインをより深く理解するためには愛好家であれ書き手であれ、畑に足を踏み入れ偉大な斜面やそこに降り注ぐ太陽や吹く風を肌で感じることはまずは大切で、その上で生産者の畑における感覚を自分の判りやすいものに置き換えるには、何か植物の一つでも育ててみた方が良いのでは、と感じる今日この頃である。

 まぁ、サボテン一つで少し考え過ぎかもしれない。しかし感じてしまうものは仕方がなく(サボテンに名前を付けたりはしていないので、ご心配なく)、どこまでデカくなるかが楽しみだ。