7/7〜10

〜空腹のピュリニィ・モンラッシェ〜

 


 

今回のORGANISATEUR

 

 私個人で。

 

今回のチーム・デギュスタシオン

 

 私一人(サビシ〜イ!)。

 

今回のスケジュール

 

7/7

パリ発

14:00 Domaine Prieure ROCH訪問

ジュヴレイ・シャンベルタン泊

7/8

9:00 Domaine Claude DUGAT訪問

14:30 Domaine Jean TRAPET訪問

ジュヴレイ・シャンベルタン泊

7/9

9:00 Domaine des COMTES LAFON訪問

15:00 Domaine de MONTILLE訪問

ジュヴレイ・シャンベルタン泊

7/10

10:00 Clos de TART訪問

14:30 Domaine Philippe ROSSIGNOL訪問

帰パリ

 

 前回のブルゴーニュ訪問に中2週間おいての今回の訪問。訪問の前週(6/30〜)はブルゴーニュだけでなく、パリを含めたフランス中が涼しかったものの(いつもは太陽に焦がれるパリジャンも流石にホッ、と一息)それも束の間、やはり今回も暑かった。6月の異常だった暑さに比べると幾分マシになったものの、昼間は軽く30℃を越え、今年の収穫日の予想が1週間から10日早まりそうな事態に変わりは無い。

 変化が少しあるとすれば、それは定期的に降っていた雹を含む夕立っぽいにわか雨が止んだこと。降っても「パラパラ」程度なので、ある程度の湿気はあるもののここ2週間ほどは比較的乾燥傾向に変わりつつある。よって湿気による病害は例年と比較して少ないようである。

 現時点では4月の霜害(特にボーヌ以南の白ブドウ品種)がやはり今年の最も深刻なダメージであったと言えるだろう。今回訪問した生産者からは「ピュリニィ・モンラッシェのウチの区画は90%減(!)」という声を聞いたほどだ。

 さて収穫まで残された期間は正味2ヶ月だ。今年のこのくそ暑い中、マジメに働いた生産者、ワイン関係者達の苦労が報われる良いミレジムとなることを、まずはお祈りして!(本当に凄いミレジムになれば「世紀の暑い夏に生まれた偉大なミレジム」なんて言われ方をするんだろうなぁ。そうなれば自分が初めてマメに畑に足を運んだ年でもあるので、ちょっと嬉しかったりするのである)

 

空腹のピュリニィ・モンラッシェ

 ユーロ高で最近はワイン産地巡りにおいてもとにかく節約モードに入っているが、もしユーロ高が無くても今年の産地巡りは初年度よりもかなり安く上げられるようになった。その理由としては

@     産地によっては現地で宿泊先を提供してくれる知人がいる(うううっ、本当にありがとうございます)

A     超方向音痴の私なりに、ほんの少し土地勘ができ(バスの利用や良心的なタクシーの運ちゃんの紹介などもここに含まれる)、距離感の無い滅茶苦茶な計画も組まなくなった。

B     フランスの交通機関の値下げ制度をほんの少し発見!

C     宿にこだわりがなくなった(パリで引っ越しして以来、バスタブが自宅にあるので「旅の楽しみ=風呂に浸かる」が無くなったのである)。

等々である。

 しかし人間慣れてくるといつでも落とし穴があるもので、今回は上記のA、つまりバスの利用にやられました、、、、、。

 ブルゴーニュでは「TRANSCO」というディジョンからシャロネーズまでを結ぶバスが運行本数は少ないものの走っている。バスの利用は時間が合えばもちろん超安上がりで、しかも車窓はワイン畑とブルゴーニュに点在するカワイイ村々なので見飽きることが無く(TGVの車窓は牧草地と牛の連続なので数回乗れば飽きてしまう)、空調もばっちり、そして私が乗った限りでは観光バスのような大きな車内に10人以上で乗り合わせたことがない(パリのメトロでスリを警戒しつつ、加えて体臭の万国博覧会に粘膜をやられそうになるのとは雲泥の差である)。とにかくまぁ、かなり快適であるということだ。そして今回も宿泊地のジュヴレイ・シャンベルタンから目的地のムルソーまで、早朝いそいそとバスに乗り込んだのである。

 バスでは乗車時に目的地までの乗車券を買うのであるが、「ムルソーまでシル・ヴ・プレ!」と明るく頼むと運ちゃんの「ムルソー?このバスはボーヌ止まりだよ」。

えええ?でも運行表にはムルソーを通過する、って書いていますよ〜〜〜!

「ああ、これね。上に『04』ってマークがあるだろう?これはね、夏休みは除外ってことなんだよ」

が〜ん!仕方なくボーヌで下車、だ。ボーヌからムルソーまでは歩けないこともないが、何が起こるか分からない1日のために体力温存を選び、タクシーを待つこと20分、いざムルソーへ。

 ムルソーでの訪問を終え、次に目指すはピュリニィ・モンラッシェだ。しかしお目当てのバスが来ない。反対車線に止まったバスの運ちゃんに

「あのぅ、ピュリニィに行くバスが来ないのですが、、、」

「ああ、これね。上に『03』ってマークがあるだろう?これはね、夏休みは除外ってことなんだよ」

またぁ?『03』、おまえもか(しかし今回は私にも学習能力が無い)!!!

 次のアポまでは時間がある。ピュリニィはお隣だ。歩こう。ムルソーで近道を尋ねてから(坂を下りる途中に畑に抜ける道があるから、畑に出たら後は畑の中を抜ける1本道を真っ直ぐね。国道まで出たら遠回りだよ〜、とのこと)、頭にあるワイン地図を頼りに、まずはムルソーを出発。

 教えられた「畑の中を抜ける1本道」に出ると、遙か向こうに次の集落がぼんやりと見える。しかしいよいよ日差しがきつくなってくるこの時間、気分は「砂漠の中で蜃気楼を見ているような」感じである。水は持っているが、お腹もすいてきた。歩くペースはイマイチ上がらない。時々歩いてきた道を振り返るとムルソーは確実に遠くなってきているのだが、ピュリニィであろう集落は来た道よりもまだまだ遠そうだ。

 それでもとにかくピュリニィに到着(村の看板に「ブラニィ」とか書いていたら泣いていた)、まずはビールだ、ゴハンだ〜〜〜!

 ヨーロッパの小さな村というのは、到着さえすれば非常に分かりやすい。なぜなら村には必ず教会があり、教会は高い建物の無い村の中では最も見付けやすく、教会を目指して歩けば誰でも自然に村の真ん中に導かれるからである。そしてピュリニィの村もその例に漏れず、まずは村の真ん中に着いたのであるが、そこにあるのは村役場と公園、そして一つ星レストラン「ル・モンラッシェ」だけである。まずは「ビールとゴハン」という目的を達成するためにはカフェを探さなければ。そこで村役場へ。

「すみません、この近くにカフェはありますか(村役場で聞く内容でもないだろう!)?」

無いよ(あっさり)。レストランならル・モンラッシェがお薦めだよ(にっこり)」

「では、パン屋は?

「あるけれど昼休みだから3時まで閉まっているよ。急いでいるのならムルソーの方が沢山あるよ(にっこり)」

私のアポは3時なのだ。そして役場の親切そうなオジサンはまさか私がこの炎天下の中、ついさっきムルソーから歩いてきたばかりとは思ってもいないのだろう。にっこりメルシーと答えたものの心の中は「ががががーん」である。

久しぶりのピュリニィの村を散策したい気持ちはあるものの、空腹過ぎて炎天下の中を歩くエネルギーは残っていない。あいにくクレジット・カードの期限が6月末に切れたところなので、ル・モンラッシェに行く持ち合わせも無い。ということで、水を飲んで携帯の目覚ましをセットし、日陰の公園のベンチで寝ることに(どこでも眠れるのは私の特技?である。しかし情けない)。しかしベンチで昼寝、という状況など今朝は全く予想もしていなかった。

そうして無事にアポ前には目覚め、体力も回復し、満足のいく訪問を終えてジュヴレイ・シャンベルタンに戻るために再びバス停に立ったのであるが(もちろん今度は穴が開くほど運行表を見つめ、休行の記載が無いことを確認)、バスの予定到着時刻を20分以上過ぎてもバスは来ない。タクシーでボーヌまで出ればなんとかなるであろうが、タクシー自体も皆無である。「ジュヴレイ・シャンベルタン」と紙に書いて道に立とうかと真剣に考え始めた時に、やっと我が「TRANSCO」君が登場(後光が差している)!早速乗り込もうとしたら運ちゃんが降りてきて「10分ほど待って」。そして彼はタバコを取り出し、ゆっくりと美味そうに吸い始めたのである!おい、既に何分遅れていると思っているんだ!なのにモク・タイム!?しかしこんなことでいちいち腹を立てているとフランスでは身が持たないので、まずはバスが無事来たことを感謝することに。

運ちゃんは朝ジュヴレイ・シャンベルタンを発った時と同じ人であった。

「夏はねぇ、バスが少ないから気を付けないといけないよ(にっこり)」

それをモク・タイムで更に遅らせているあんたには言われたくない、というのが正直な気持ちだが、動かないものは動かない、それがどうしようもない事実なので、一応「そうですねぇ、気を付けますわ、ほほほ、しかも遅れますしねぇ(少し嫌味)」なんて答えてみる。

 しかし走り出すとやはりバスは快適、しかも帰りはボーヌまで乗客は私一人、少し贅沢な気分になりちょっと機嫌もよくなって(単純)どうにかジュヴレイ・シャンベルタンに到着。

 まぁそんな訳で、今回の教訓は「普通に来ると思うな、夏期のバス」ってところでしょうか(そして今回の裏話は体力切れで、写真は1枚もありません。あしからず)。