8/26〜30

〜世紀の熱い夏の収穫 ジュヴレイ・シャンベルタンにて〜

 



 

今回のスケジュール

8/26

パリ発

午後よりクロード・デュガにて収穫作業に合流

ジュヴレイ・シャンベルタン泊

8/27

終日クロード・デュガにて収穫作業

ジュヴレイ・シャンベルタン泊

8/28

午前 クロード・デュガにて収穫作業

13:00 Domaine Priure ROCH訪問。訪問終了後、クロード・デュガにて収穫作業に合流

ジュヴレイ・シャンベルタン泊

8/29

午前 クロード・デュガにて収穫作業。11時に終了

夕方よりヴォーヌ・ロマネの畑を観察

ジュヴレイ・シャンベルタン泊

8/30

午前 ヴォーヌ・ロマネの畑を観察

帰パリ

 

*デュガでの収穫作業、ヴォーヌ・ロマネ散策に快くご一緒してくださったマユさん(車を出していただきました)、ありがとうございました!

 

私が宿泊していたMarchandの民宿にも、収穫されたブドウが続々と到着。はしゃぐ子供と犬(犬の名前はなぜか「ペトリュス」)が微笑ましい。

 5月以降、ひたすら暑い暑い、と書き続けた今年の裏話。しかし本当の暑さのピークは私が休暇のために一時帰国していた8月5日以降に訪れた。

 再渡仏後、少々休暇ボケした頭に飛び込んできたニュースは既に日本でも報道されているように酷暑を通り越した暑さに関するものばかりで、ご高齢の方々が約13000人も亡くなったことを始め、信じがたい数字は挙げると本当にキリが無い。

もともと夏が快適であるはずのフランスでは普通の住居にはエアコンなど気の利いたものは付いていないのである。しかも日が長いために夜の11時を過ぎても室内が30℃を超えていた日もあったと言う。この期間にフランスにいた知人達は

「夜中も30分ごとに水風呂に浸かっていた」、「日中はワイン屋さんのハシゴをしていた。涼しいから」、「熱気と太陽光が入ってくるのを防ぐために、窓とブラインドを閉め続ける日が数日続いた」等々、いかに暑さをしのいだかをゲンナリと話す。

 そしてブドウ畑である。再渡仏後メールを開き、ジュヴレイ・シャンベルタンに住む知人からのメールに目を疑った。

―デュガさんところは8月末に収穫始めるみたいですよー

 どちらにせよ毎月の畑仕事のレポートを書くために8月末にはブルゴーニュを訪問する予定であったが、まさか「収穫レポート」なるとは思ってもいなかった。ブルゴーニュ訪問までの数日間にもテレビでは各地における「異例の早さである収穫状況」がどんどん放映されていく。産地や生産者によって差はあるだろうが、とにかく「猛暑による100年に一度の早い収穫」と言っても過言ではないだろう。

 収穫に関する作業はいつも通り「畑の仕事」のコーナーで近日中にレポートするが、ここでは収穫に参加した「暑いぞ」談を、少々。

 

 

カメラ、危うし!

この通り、10枚ほど全て水蒸気付き。曇ってます、、。

 機械音痴はカメラに関しても同じで、でもカメラが繊細な機械であるということくらいは分かっており、よって畑仕事に参加しながら写真を撮るというのは私なりに気を遣う。なぜならやはり畑に入り土や樹を触れば当然手も汚れ汗もかき、特に収穫ではそれに加えてブドウの果汁や「アク」みたいなもので、手は常にドロドロ&ベタベタ。この手でカメラの色々なボタンを触るのは何となく凄く良くなさそうだ。ハンカチやタオルなど持って入ったこともあるが結局は邪魔なだけで、Tシャツやジーンズに手をなすりつけながらシャッターを押している次第である。

 今回予想外のカメラの異変は私が収穫に参加した2日目の午後に起きた。午後の作業開始をまずはカメラに納めようとデジカメを取り出してビックリ。カメラが汗をかいている!ヤバイ。

 この日も午後は30℃超え。しかし発表される気温はあくまでも「日陰」のものなので、遮るもののない畑の気温は一体何度???しかもカメラはジーンズのポケットに入れていたので(でも身軽に動くにはここしか収納場所が無い)、その中で太陽光、私の体温や汗モロモロを全て吸収していたに違いない。しかし畑の路肩に置いてあるトラックに置いても車内も暑いことには変わり無し。シャッターチャンスにいちいちトラックまでカメラを取りに行くわけにもいかない。そんなわけでカメラの汗をぬぐってポッケトに収納し直し、再び作業に戻ったのだ。

 その約1時間後、数枚写真を撮って画像を確認。ん?なんかボンヤリした画像だなぁ。逆光のせいね、なんて思っていたのだが、その後は光の位置を考えながら撮ろうが、距離を変えようがとにかくボンヤリとした画像しか撮れない。イヤ〜な予感がして、とにかく「機械の調子が悪い時には一旦機械を休ませる」という鉄則だけを守り、この日の午後はこれ以上写真を撮らず、夕方ドメーヌに戻ったのである。

 おそるおそるカメラを取り出し、もしや、と思いレンズを見るとガガガガーン!レンズの内側に蒸気が!!!ヤバイ、ヤバ過ぎる。私にとって生産地のレポートを書くための三種の神器は「携帯」「パソコン(インターネット)」そして「デジカメ」なのだ。携帯が壊れるのは100歩譲って良し、としてパソコンとカメラに異常が起きると、私には直す技術も無ければ、余計な出費を許す予算も無い。

 部屋に戻り、暗〜い気分でデジカメの取説「カメラの扱いの諸注意」というページ(このページを読むのはこの日初めて)を読んだ。それによると、

@     カメラにとってここで「常温」と指すのは23℃。

A     カメラを寒い場所から暑い場所に移す時には結露の発生を防ぐためにカメラをビニール袋に入れ、周囲の気温に馴染ませてから、袋から取りだしてください。

B     結露が発生した時には故障の原因になりますので、カメラをお使いにならないでください。万が一発生した場合はCFカード、バッテリーなどを取り外し、水滴が消えるのを待ってからカメラをお使いください。

らしい。私の状況に照らし合わせると@は完璧に外れていて、Aに関しても朝の涼しい時間から太陽が上がって急に暑くなる時間にそんな心遣いは皆無だったような、、、。かろうじてBのみクリア?

 どうにかカメラから水滴が消えたがカメラ用のジャケットやコンパクトなウエストポーチなんて気の利いたものは持っていない。よって翌日からは色の薄いダボダボのTシャツを着て、ブラの紐にカメラを吊し、胸と腹の僅かな高低差(?)でカメラに風通しと日陰を確保(???)、どうにか最終日まで結露無しで収穫風景を撮ることができたのである。

 それにしても何をするにも侮れないこの暑さ、だ。そして「ブラの紐」に感謝、なのである。

 

収穫ファッション2002&2003

 

 昨年はプリュレ・ロックで収穫作業に参加したが(昨年ロックでは9月20日に収穫をスタート。私は25日より参加)、その時の基本的な収穫ファッション(?)は

     下着代わりのTシャツ

     セーター&ジーンズ

     レインコート(防寒と泥よけ)

     首タオル(これも「汗拭き」と言うよりも防寒)

であったが、今年は当然ながらTシャツ&ジーンズオンリー。そして「日焼け止め三重塗り(ウォータープルーフ)」はお肌のために必須。それでも「ジーンズで暑くないの?」等と短パン派や水着(に近い)派に心配される。

 日が高くなると額の汗は目に入り、額だけでなく、体中に汗が伝っていくのがよく分かる。当然喉はカラカラで(前日の飲み過ぎなどでは決して無い!)、休憩時間は中学校時代の部活後のように水をゴクゴク。ドメーヌに戻るとホースで水の掛け合いだ(昨年こんなことをしたら、きっと「嫌われ者」になっていた)。

 ところで収穫中の素朴な疑問として「トイレ、どーしてんの?」と思われる方も多いだろう。答えとして男性は「基本的」には問題ナシ、女性でもツワモノは一応問題ナシ(昨年は他人の畑や隣接する森の茂みに静かに姿を消していき、妙にすっきりとした顔で戻ってくる方を何人か見た。でもあくまでもツワモノ)。よってツワモノになる度胸の無い女性にとっての解決策は「ひたすら水分摂取量を抑える」。これしか無いのである。

 しかし今年はそんな心配は皆無。なんたって摂取した水分はどんどん汗となって蒸発していくのだ。というより、「水分取らなきゃ、ヤバイんじゃ」と言った方が良い。1日の作業を終えて部屋に戻るまでトイレ不要の日もあった。

 畑では木になりながら既に干しブドウ状になった房まである(ピノ・ノワールのパスリヤージュ?)。干しブドウ状になるのは色々原因があるが、今回の原因の大元はもちろん暑さと乾燥ゆえ。繊細でありながらも土壌や気候に適した逞しいブドウですら辛いのである。一時帰国した日本で少しエアコンの恩恵にも与ってしまった私などは完全に干物状態だ。

 結論。やっぱり収穫作業は涼しい方が疲れない(当たり前か)。早朝の秋の畑に立ち、凛とした冷気を感じながら収穫ハサミを持つと、なんとなくほんの一瞬神聖な気持ちにもなるってものだ。

しかしデュガさん家での収穫は休憩時間のオヤツや昼食などの心遣いといい(これだけ汗をかきながらも、収穫太りしそう?)、何よりもデュガさんだけではなく、ベルトラン兄ちゃん、そしてモーリス爺ちゃんまで畑に出て指揮を取る、というか本当に嬉々としてブドウを摘んでいるので、畑に流れる雰囲気はバツグン、ラクに感じるから不思議である。休憩が多い割には収穫人に常連が多いせいか、作業も早い。まるで夏休みの一コマみたいで、収穫が終わっても「もう終わっちゃったの?寂しいなぁ」という感じ。

まぁ私は畑仕事の美味しいところをつまみ食いしているようなものなので、やはり何ヶ月もこの暑さに対峙した生産者達にとっては、「やっと収穫までこぎ着けた」という達成感が何よりも大きいと察するのだが。

 

収穫ファッション2003 こちらは収穫ファッション 2002

 

 

日頃の鍛錬?

 

 「背痛」と「太股痛」。これらの筋肉痛は暑さに関係なく、収穫人を悩ませる。そして前者は「前屈姿勢」で収穫する人に、後者はブドウ樹の前で屈んで収穫する人(立て膝、俗に言うヤンキー座り、座り込み、色々あるが、要するに終日緩慢なスクワットをしているようなものだ)に起こりやすい。

 今回は1日目の収穫が終わった時点で、結構な太股痛に。走ろうとすると「パリ世界陸上の競歩をヘタクソにしたような」怪しい人になってしまい、デュガさんに「こっちのブドウ列に移って」と畑の真ん中で指示されても垣根を超えるのに一苦労。だって股が上がらないのだ(デュガさんは「アキヨは運動神経悪いなぁ」と思っているかもしれない、、、)。

 ところで昨年は筋肉痛は皆無だった。なぜに?夜は暇なので色々理由を考えた結果、それは極 小であった当時のステュディオ生活にあったのでは、と思い当たる。今年の4月に引っ越しするまで私は13 uくらいのミニミニな空間で暮らしており、ベッドと適当な台(というかダンボールの上などで)の間に入り込み、ヤンキー座り状態で2時間近くメールを送受信するなど、とにかく「ヤンキー座り」 を多彩に取り入れた(?)ライフスタイルだったのである。それに限界を感じ引っ越しを決意したわけであるが、あのライフスタイルは収穫作業に臨むにおいては非常に有効だったのでは。悪いことばかりじゃなかったのだ。

 ごく私事な話しですみません、だが、ヤンキーの皆様(まだいるのかな?)やコンビニの前で屈んでいるにーちゃん、あなた達は収穫では強いですよ〜?