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番外編!タヒチ「産」ワイン?! 

「ドメーヌ・ドミニク・オーロワ(Domaine Dominique AUROY)」

 

 



 

タヒチの海の色は見た人を感動させる。

  このHPを見て頂いている方は「なんか海っぽいページだな」と思われていると思う。実は私はダイビング・フリーク。ダイビングは飽きっぽい私が15年近く続けている唯一の趣味なのである(ああ、私の収入は全て海と酒という水物に消えていく、、、)。

La Mer du Vin」というこのHPの名前も、「La Mer(海)」と「Vin(ワイン)」という大好きなものを単純に結びつけたのであるが、これは後日知人のフランス人に、「La Mer(海)」を「La Mère(母→海と発音が同じ)」に置き換えるとこのHP名は「ワイン酢」という意味にもなると教えられて、愕然。しかし今更変える訳にもいかず、時々名刺を渡してはフランス人に「ぷっ」と笑われる始末である。

とにかくそんなわけで共にダイバーであるこのHPのWebmaster、ダンナと「海切れ」を起こし、今夏の休暇は長年の憧れであったタヒチのランギロア(ダイバーの聖地である!)に飛んだ。そして機上のエア・タヒチ ・ヌイの機内誌で見つけた広告記事にビックリ!タヒチ産ワイン?!以下に広告記事を訳そう。

 

―ドメーヌ・ドミニク・オーロワ(Domaine Dominique AUROY)

 タヒチ(フランス領ポリネシア)のツモアツ諸島の真ん中、ランギロア島の環礁で、このドメーヌは「偉大な畑とワインつくり」に情熱を燃やす一人の男によって生まれた。

 ラグーンに沿ってある畑の土壌は珊瑚によるものであり、また畑はパパイヤの木によって風雨から守られ、太陽の下で輝いている。

 この「地上にありそうもないユニークな畑」はランギロア諸島ならではの風味、すなわち赤いフルーツやモカ、スパイスなどのアロマに溢れているー

 

短い広告文から想像する風景は確かに「ありそうもない」。だがそこに誇張やふざけた印象は全くなく、むしろ非常に真面目な切り口である。

そこで偶然のご縁でお会いできたランギロア在住の日本人、「ゴーギャン・パール(黒真珠養殖場と養殖所真珠直売店)」の西村さんご夫妻 (西村さん夫妻のHP http://chez.mana.pf/%7Emasaharu/)にこのドメーヌのことを尋ねてみた。奥様の直子さんは既に日本のある旅行雑誌社の依頼でこのドメーヌの取材を正式にされており、直子さん曰く、

「基本的に二毛作。イシサンゴ主体の土壌なので、石灰質に非常に恵まれています。フランス人の醸造責任者も付き、タヒチアンも興味津々ながら好意的に協力しています」とのこと。直子さんが取材されたもの以外にもご夫妻を通して、このドメーヌには既に日本から数社の取材依頼があるという。

 早速私も取材依頼するも、「担当者が体調不良のため」という理由であえなくお断りされたが、見たかった、「パパイヤの木に守られた、環礁のワイン畑」!見ることができたとしたら、日本のワイン関係者では初めて(?)だったかもしれない。悔しく、名残惜しい!!!

 幸運にもこのドメーヌにはサイトがありwww.vindetahiti.pf)、それから要約すると、

@     創設者:

タヒチ在住35年の実業家、ドミニク・オーロワ氏。ワインを愛する氏はこの地でのワイン造りを決意し、ディジョン大学で教鞭をふるうベルナール・ユドロ氏との幸運な出会いからユドロ氏に師事を仰ぎ、その決意が現実に向かうこととなる。

A     産銘柄とセパージュ:

     赤(カリニャン)

     赤 キュヴェ・ドメーヌ(同上)

     ロゼ(ミュスカ・ド・ハンブルグ)

     白・辛口(イタリア=ミュスカ・ド・ハンブルグとビカンヌの交配種)

     白・甘口(同上)

以上のセパージュはドミニク・オーロワ氏が1992年より30種類以上の品種をこの地に試験的に植えた結果、適性が高いと判断されたものである。

B     仕立て:コルドン・ロワイエ

C     ブドウの栽培サイクル:二毛作

常夏のタヒチゆえブドウの木には基本的に休眠期はなく、ブドウの成長サイクルは90−130日。またミレジム表記は「5月」「10月」など「月」付き。

D     土壌:イシサンゴ→ミネラルの供給


 

お世話になったダイビング・サービス Blue Dolphins

 等々。他に各ワインの醸造法、プレスの評価、ドメーヌの近況等が細かくサイトには説明されている。このサイトは全フランス語ながら写真が多く、収穫の様子(収穫後のブドウを大切に扱うのであろう、収穫のカゴが小さい!)や収穫後のブドウをボートで運ぶ風景(畑と醸造所は環礁を隔てているのである)、バリック(!)が並んだカーヴの様子等が満載で、やはりそこに感じられるのは「地上にありそうもないユニークな畑で、考えられないほど真面目に取り組んでいる姿」と、「南国の微笑ましい空気」である。必見!

 

 そこで最後に肝心の味である。このワインはランギロアのペンション(民宿)で赤とロゼを飲む機会があった。

 赤は「限りなく濃いロゼ」と書けば「な〜んだ、結局薄いんだ」と言われてしまいそうだが、薄いのではない。タンニンや色調といったわかりやすい濃さが無いだけで、要素はむしろ濃い。グロイセイユ様の酸味が滑らかに納められて、挽きコショウのちりちり感、そして広告文通りかすかにモカ(カフェではない)がある。

 一方ロゼは品種は違っても赤とかなり共通点があり、最も赤と異なる点は感じられる果実の質で、日本のサクランボやアプリコットのニュアンスがある。

 赤、ロゼとも熟成させて飲むタイプではないが、つるりとしたミネラルがあり(これがイシサンゴ・ミネラル?イシサンゴ初心者なので断言できず)、バランスの良さや意外な深みがあるのには驚かされる。とにかく「真面目に造っているな」と思わせる味なのである。500mlのボトル価格がレストラン価格で5000パシフィック・フラン(1パシフィック・フラン=1,2〜3円)とかなり高めであるのは残念であるが、初期投資代が含まれているとしたら当分は致し方ないだろう。

 

 フランスに戻りワイン仲間にこのワインの話をしたら「パイナップル・ワインじゃないの〜?」などと言われたが、一般的にタヒチでこんなに大真面目にワインが造られていると考える方が無理であろう。ドメーヌの広告自体が「世界の端で造られた辺境のクリュ」なのだから。

 しかし日本の某テレビ局の取材も予定されていると聞いている。価格や流通に大きな問題を残しているものの、彼らの努力がワインとなって、ある意味「常識を覆した」ことは取り上げられるべきである。私個人では簡単に再訪問できる場所には位置していないドメーヌなので、まずは他の媒体を通してこのチャレンジの行方を追っていきたいものである。そして再びランギロアを訪れる機会があれば、その時は取材が叶いますように(二毛作の詳細やポリネシアで他にこのような試みがあるのか知りたいのである)。

 

 

ランギロアでは野生のイルカと水中で遊べてしまいます。
                      phot by Narumi Sakuma

私たちは猫も好き!名前を付けました。ランギロアのランちゃん。南国の楽園猫。

 (文責/嫁、写真セレクション・コメント/ダンナ)