9月前半

〜裏話初、パリ・ヴァージョン! 「恐るべし、スーパーのワイン市!」〜

 

 



  今年の収穫の余りにもの早さに、私の在仏予定も大きく変更。
8月末に収穫作業参加も終わり、早々に帰パリ。今頃は産地にもよるが、収穫前の準備(ロワールなど)、収穫真っ最中(同じくロワールやボルドー、ローヌの一部)、収穫後の仕込みでてんてこ舞い(多くの産地)という状況なので、はっきり言ってこんな時の生産者訪問はかなり、邪魔。というわけで自宅待機中である。

 普段の私の支出はこの「産地行脚」費が変則的かつ最も多く、パリの生活はあくまでもジミ。思わぬところで節約が出来るわん、なんて喜んでいたのだがすっかり忘れていた、、、。そう、Foires aux Vinsの存在を!

 Foires aux Vinsとは、直訳すれば「ワイン市」。しかしこの時期のこの言葉は9月中旬にフランスの大手スーパーで開催される「ワイン・バーゲン」を意味していると言っても良い。な〜んだ、スーパーのバーゲンか、となめてはいけない。その規模たるや、「初めてこの風景を目にした日本人は、絶対に腰を抜かす」と断言しておこう(私もその一人だ)。ワイン関連の雑誌だけではなく、この時期は「Le Point」などの一般紙もこのバーゲンを特集、そこでは各スーパーのバイヤーが「私達はこんなワインを揃えました!」と競い合って説明し、お買い得度を論ずる雑誌もある。要するに国民的買い溜め行事(?)なのだ!!!

 

 そんな中でやはり注目すべきスーパーは日本でもお馴染みカルフール、そしてモノプリ、オーシャン、E.ルクレール等であろう。

普段から「きらりとした」品揃えを見せる「影の帝王」がモノプリなら(ただしパリ市内に点在するモノプリは、店舗によりかなりの差がある。おすすめはNation店)、「表の王者」はダントツ、カルフール。パンフレットの気合いの入り方が、まず違う。

そこで、カルフール オートイユ店レポートである。

 

パンフレット

 

 ―6500本の試飲から選び抜かれたファイナリスト400種 38種類の必飲モノ―

表紙に踊るフレーズが、既に気合い充分。そして中身だが、、、。凄いぞ!

 王者の余裕か、カルフールのパンフには「全店での総入荷本数」が明記されており、まずはこの本数が半端ではない。そして入荷の多くがフランス1、2を争う売り上げであるオートイユ店(高級住宅街)に集中するのは想像に難くないだろう。一例を挙げると

     Duc de Barmont(AOCボルドー・ルージュの中では今回最安値の1ユーロ90)→40万本入荷

     Ch.Cru Cantemerle(AOCボルドー・シューペリウール 4ユーロ80)→25万本入荷

またカルフールはパリで最もクロ・デュ・マルキの値付けが安いと思われるのだが(今年は1999年が22ユーロ85)これもしっかり、15000本の入荷。親元のラスカズ(同じく1999年 80ユーロ)も5000本の入荷である。もともとボルドーの品揃えに定評があるスーパーとは言え(大量に買い付け、驚きの価格を提示できる出来る高級産地と言えばここだろう)、とにかく1銘柄に対する入荷数10000本超えはザラで、50000本超えもゴロゴロ。

 一方、ブルゴーニュ。こちらも5000本超えは珍しくなく、ヴィレーヌの最新ミレジム、アリゴテ・ブーズロン 2002が8ユーロ95で購入できるのはかなり嬉しい(10000本入荷)。他にもニコラ・ポテルのボーヌ プルミエ・クリュ レ・グレーヴ 1999が18ユーロ90(4000本入荷)なんてのもあり。

 しかし抜かりなく「ビオ・コーナー」もあるのである。ニコラ様のクーレ・ド・セラン 1999(39ユーロ90。3600本入荷)は分かりやすいが、個人的にはピエール・フリック リースリング ロ・ミュルル 2000(11ユーロ90。2640本入荷)をまとめ買い。

 普段飲みに上質のミュスカデ(クロ・デュ・プティ・シャトー・ラ・ラゴティエール・レ・フレール・クイヤード)等が3ユーロ80(40000本入荷)で買えるというのも、思いやりがある。

 パンフレットをくまなく見た結果、最も入荷数の少ないもので、ドミニク・ローランのクロ・ド・ラロッシュ 2001(49ユーロ)の600本。でもこれだって冷静に考えれば、十分に多いのだ。ここまで来ると「餃子の王将」の例のコマーシャル、「タマネギ1日何万個」の世界である(この例えは大阪の人にしか分からないかもしれません)。

 

 しかし数だけ驚くのはまだ早く、パンフレット外にも店頭には時々「えっ」と驚くようなラングドックやルーションの秀逸キュヴェも並んでいたりして、品揃えの懐も意外なところで深いのである。山盛りになるカートを横目に、「見つけちゃったよ〜」と嬉しさを悲しさが入り混じったような複雑な気分になるのである、、、。散財必至。

 ちなみにカーヴに至るまで、ワイングッズも充実のスタンバイ、だ。

 

パリジャン達

 

 かつての百貨店時代、ワイン・フェアの初日の午前中には「百貨店の食品売り場には似つかわしくない」御仁が、にわか売り場に溢れたものである。そしてこれはパリも同じ。

 普段カルフールの午前中にはどう見ても「主婦(でも高級住宅街なのでマダム)」しかいないのだが、いるわ、いるわ、スーツ姿のパリジャンが。高級住宅街のせいか、シーツの仕立ても結構良い。カートを持って「パードン、パードン」の押し合いである。

 しかも彼らの買い方は「豪快」の一言に尽きる。木箱ごとバンバンカートに載せていく。1本1本迷いつつ気弱にカートにボトルを並べる私とは大違いだ(羨ましい)。「ワイン専用レジ」ではバーコードの不備など、これも洋の東西を超えてトラブルの続出だが、そこは公共の場で待たされることに慣れっこのパリジャン、「姉ちゃん、いつまで待たせんねん」の罵倒も飛ばさず、辛抱強く順番を待っている。ちなみに私が並んだレジでの最強のツワモノは1800ユーロお支払い。日本円にして22万円ってところ?スーパーで目にする金額じゃないぞ!

 まぁ、あれだけ仕入れて大丈夫なはずである、、、。

 

スーパーでの難点

 スーパーでの難点と言えば、やはり「保管はどうなってんの?」であろうが、ここはその回転のスピーディさゆえ、目をつぶっても良いのでは、と思われる。

 それよりも旅行者がこのバーゲンに紛れ込み、辛抱強くレジに並び、クレジット・カードで支払おうとする。そこでストップがかかるのだ。

 通常フランス人は高額の買い物は「カルト・ブルー」という翌日引き落としの銀行カードか、小切手で買うのだが(現金はごくごく稀)、クレジット・カードで購入しようとすると「身分証明書」の提示を求められる。普段の買い物で求められることは少ないが、スーパーではなぜか必ず求められるのである。つい最近までは適当にごねれば(?)「次からは身分証明書、持ってきてね〜」で済んでいたのだが、最近はカード犯罪の多発を反映してか、この国に来てから「ゴネ上手」になり、かつ「安心の日本人ブランド」である私でも、「パスポートの原本か、現金持ってこい!」の一点張りで、完敗。

 ダメなものはダメ、運搬用に持参した空のキャリーケースを持って泣く泣く帰宅、ただし温情か取り置きはしてくれていたので、再度精算のために現金を握りしめて足を運ぶハメに。いやぁ、疲れました。教訓。スーパーでの高額の買い物には、カード&パスポートは必須である(そんなにスーパーで買わないって?)。

 

 しかしこの時期、フランスに来た人はやはり訪れるべし、Foires aux Vins。パリジャンに押されようが、レジで多少待たされようが、そこにはフランスのワイン文化の底力がある。そして、「恐るべし、スーパーの実力」を体感しよう。パンフレットを持って帰るだけでも話しのネタになるはずだ。ただし、買い過ぎに注意。