10/27〜29

〜空腹のショントレ〜

 

 


 

今回のORGANISATEUR

 

私一人。

 

今回のチーム・デギュスタシオン

 

私の1人。

 

今回のスケジュール

 

10/27

パリ発

15:30 Domaine Philippe JAMBON訪問

マコン泊

10/28

10:00 Domaine J.A.FERRET訪問

14:00 Domaine VALETTE訪問

マコン泊

10/29

9:00 Domaine Marcel LAPIERRE訪問

13:30 Domaine Jean FOILLARD訪問

帰パリ

 

 ブルゴーニュにはマメに通っているものの、シャロネーズ以南〜北ローヌ間が、ポッカリと抜けていた私の産地巡り。なぜかと尋ねられれば、「車が無くバスも少ないので、割り勘してくれる(?)同行者が現れるのを待っていた」としか言いようが無く、今回は結局見つからない同行者を待ってはいられずに旅立った、というところだ。

そして初めてマコンとボージョレーの丘を見た時、それはショックに近かった。なぜなら微妙に斜面の向き、傾斜度、そして高度を変わるそれらの丘はアルザスを思い起こさせるほどに多彩で、コート・ド・ニュイの丘のシンプルさ(本当はシンプルでもないのだが)とは全く趣が異なっていたからだ。また私は「マコン=石灰」「ボージョレー=花崗岩」と単純に捉えていた。しかしマコン一つ取っても石灰の割合は刻々と変わり、粘土そして花崗岩がふえていくに連れガメイに適した土地になるのだが、それはフィリップ・ジャンボン氏曰く、「両手の指を組み合わせたかのよう」に、地形・地質の両面で非常に複雑に入り組んでいる。

 機械収穫の多いマコンでは、完熟したブドウは果皮が傷つきやすいために、さっさと摘まれてしまう傾向があるようで、同時に「完熟させる」ということは腐敗のリスクも招きやすいガメイも、さっさと摘まれがちである。確かにマコン、ボージョレーともども、フランスでも崇められているワインでなく、特にマコンは近年、ブルゴーニュの安価な白が順調な伸びを見せている追い風を受けて、それなりに売れる。ならばこの土地の微妙な違いを把握、かつブドウを完熟させて「マコンを真剣に表現する」よりも、工業的に造ってしまった方が話は早い(もちろん「軽くて安いワイン」に需要はあり、各生産者も生計があるので、それを責めているわけではない)。しかしこの地と真剣に対峙すれば、それは「マコン」や「ボージョレー」に対する消費者の概念を覆すワインができる。そのことを何よりも、「土地が放つオーラ」が物語っていた。

 今回話を伺った生産者達の収穫時期は、一様に皆、遅い。「ウチが収穫を開始した頃には、他はもう、ワインの仕込みを始めていたよ」と笑うが、収穫前はきっと天気予報と空、自身の畑を見ながら、胃に穴が空く思いをしているのだと思う。

 詳しくは、最近非常に遅れ気味(?)の「生産者巡り」でレポートしたいが、「ワインは名前(アペラシオン)で飲むものではなく、本当に美味しいかどうかを自分の舌で判断すべき」ということを、改めて生産者達は教えてくれた。まずはここに、彼らの仕事に敬意を払いつつ、お礼を申し上げたく思ったりするのである。

ショントレから、マコンを眺める。 フィリップ・ジャンボン氏の畑。

 

空腹のショントレ

 

 昨年「空腹のピュリニィ・モンラッシェ」という裏話を書いたことがあり、ウェブマスターであるダンナからは「もういい歳なんだから、せめて昼ご飯代くらいは財布に入れて、そういう事は止めなさい」と呆れられた。確かに、そう思う。それでなくても田舎では目立つ東洋人、私一人のビンボーくさい行動が、日本人女性のイメージを傷つけてはよろしくない。

 今回の拠点地であったマコンの中心街にたどり着いた時、「地球の歩き方」にすら紹介されていない街の、その規模の大きさに驚いた。ソーヌ河沿いにはレストランが軒を並べ、泊まるホテルにも事欠かない。英語やドイツ語が至るところで聞き取れ、これは完璧に観光が収入の一つである街である。しかしそれに安心したことが良くなかった。

 滞在2日目、午前11時半にドメーヌ・ヴァレットへの訪問のためにショントレという村へ到着した。マコンの中心街からタクシーで約15分(20ユーロ弱)、ここには「ラ・ターブル・ド・ショントレ」という、フィリップ・ジャンボン氏オススメのレストランもあり、たまには豪華にお昼ご飯、と意気込んでいたのだ。万が一レストランのメニューが気に入らなければ、カフェで時間を潰せばよい。なんたって大きな街のすぐ近くの村だ。1軒くらい時間を潰すカフェはあるはずである。

 しかし。まずレストランだ。フランスは11月1日、「諸聖人の日」という祝日があるが、この祝日にひっかけて1日まで閉鎖。むむむ。仕方がない。まずは1軒だけ見つけることができたカフェでカフェ・オレなど。何しろ私は朝から午前中の試飲のワイン以外、水しか口にしていない。だが12時きっかりにカフェから追い出されてしまった。私の素行が悪かったわけではない。カフェが「昼休み」で閉まるのだ!!!嘘でしょ、お昼休みを取るカフェなんて!?パリはもちろんのこと、私の第二の故郷(?)であり、決して都会ではないジュヴレイ・シャンベルタンでも「昼休みを取るカフェ」はあり得ない。空腹による目眩を感じながら、カフェの裏手にあるパン屋を発見するも、3時までこれまた昼休み。

 外は小雨が続き、「田舎では厚着」の鉄則を守っていても、寒い。そして暗い。知らない村では散歩が好きな私でも、雨の中、傘も差さずに(傘を持っていなかった)歩くのはゴメンだ。こんな時は教会で雨露を凌ぐのが一番だ。日本人にとって教会の慣れない静謐な空気は、不思議と空腹や疲れをも癒してくれることは、ビンボー行脚が教えてくれた。しかし。教会も閉まっている!!!ううう、なんて冷たい教会なのだ?!どうにかドメーヌ・ヴァレットとのアポイントを前倒しにできないものだろうか?だがヴァレット氏は「今、まだ自宅なんだ。昼ご飯もまだなんで予定通りに2時スタートということで」(あやうく、一緒にお昼ご飯を、と言いかけた)。

 マコンに戻るためにタクシーを呼びつければ、お迎え代&往復代で60ユーロが吹っ飛んでしまう。これはここから電車でパリに帰ることができ、素敵なワインも数本買える金額でもある。マコン行きを諦めても、雨には濡れることは避けたい。そして座りたい。凍えながらバスの来ないバス停で座り続けるも、本も持ってきていなかった。訪問を終えたばかりのドメーヌ・フェレの資料も、訪問メモも穴が空くほど読んだが、1時間すら経過しない。バス停前の家人が、ただただ座り続ける謎の東洋人女性(?)を不審気にカーテン越しに覗いている。居心地の悪さ度は120%と言ってよい。

 ようやく雨がやみ、フラフラしながら(?)ショントレをブドウ畑求めて歩き回った。空腹でも美しい風景は美しいので、どうにかポジティヴな気分になる。それでも疲労度はマックスで、ドメーヌ・ヴァレットにたどり着いた時には、はっきり言ってやる気は半減していたのである。しかしそんなヘロヘロの私にエネルギーをくれたのは、ヴァレットのワインと氏の情熱で、気が付くと5本もワインを抱えて意気揚々とマコンに帰還。まぁ、結果よければ全て良し、としたいところだが、やはり若くない身には(?)染み入る辛さがあった、というのが本音であろうか。

 ともあれ私は、旅の前の準備が、どうも悪すぎるようである。 

人っ子一人出歩かない正午過ぎのショントレで、遊んでくれた犬。ううう、サビシイーーーー! ラ・ターブル・ド・ショントレ。しまっています、、、。フィリップ・ジャンボン氏オススメ。