9月 その3

〜ブルゴーニュの収穫人事情とは?〜

 

 


前回の裏話を書いた時点では、天気予報によると、今週(9/20〜)からはピカピカの晴れが続く、、、はずだったのだが、実際はそうでもなかった。

 大雨こそなかったが、晴れたと思えば雲が覗き、時に小雨、そしてこの季節らしく気温はぐんぐんと下がっていった。しかし私が今年も収穫に参加するデュガでは、当初の予定通り9月25日(土)から収穫が開始される。

 

 ところで時折、「収穫に参加したいのだけれど、どうすれば良いのか?」という質問を受けるので、ブルゴーニュの情報ばかりで申し訳なく思いつつ、私の知る限りのブルゴーニュ収穫人事情を簡単にご紹介。

 

まず「収穫に参加したい」等という申し出は、ヴァンダンジャー(収穫人)不足に悩む生産者にとっては、涙が出るほど嬉しい(?)ものであると思う。

確かにデュガなど、常連さんが自然に集まる生産者もいるが、ギリギリまで人手集めに奔走しなければいけない生産者も多いのだ。ではなぜ、そんなに収穫人の確保が難しいのか?

それには主に3つ理由があると思う。まずは労働条件。朝早く、収穫が始まれば週末も関係なく進む作業では、一言で言えば拘束時間の割に賃金は低く(日当なら相場は50ユーロ弱くらいだと思う)、加えてきつく(筋肉痛はすさまじい)、綺麗でもない(服はもちろん、爪の間まで泥と果汁や樹液で染まりまくる)。主な戦力である学生にとっては、もっとラクして稼げるアルバイトは今や山ほどあるのである。

2つ目は、フランスの失業手当の制度である。短期とは言え失業者が収穫のアルバイトをしてしまったら(?)、「仕事を持った実績」が出来てしまい、ならば仕事をせずに失業手当を大人しく貰っていた方が、失業者にとって実入りは良い。

そして3つ目は雇われる側の問題だ。特に外国人の場合は滞在ヴィザが必須で、外国人の労働基準が年々厳しくなる中、不法滞在者を雇えば、それは生産者側が責任を問われる。実際に生産者側が申請した労働者数と実際に畑でいる人数を、労働局が確認のために視察しに来ることもあり、ドメーヌ内でヴァンダンジャーに宿を提供する場合でも、雑魚寝など「人として扱っていない(?)」条件と見なされればアウトである。

もちろん当の生産者達は自身のオファーする仕事が、最近いかに人気が無いかを知っており、現実に払える賃金に限界はあっても、そこには涙ぐましい努力があると思う。そしてその努力は特に小規模な生産者なら、ズシンとマダムにのしかかる。そう、それはマダムの醸し出すアット・ホームで楽しく働ける雰囲気も重要だが、実務として収穫人全員の昼食やおやつの準備が連日のように続き、最後には打ち上げの用意もしなければいけない。当然ながら全てのドメーヌが手の込んだ昼食を出すわけでも、おやつや打ち上げが必ずあるわけでもない。しかし実際、ボランティアのようなマダムのケアが、来年のヴァンダンジャーをつなぎ止める鍵でもあるのだ。また食事だけでなく、遠方から来た人に、ホテルなどの部屋を提供するドメーヌも存在する。

そう考えると「良い生産者にあたれば」、賃金自体は低くとも、ヴァンダンジャーは収穫期間中、確かに生産者達に「養われて」おり、決して損な話ではない(パリでは自炊&粗食の私は、収穫の度に太ってパリに帰ることとなる)。

 

ところで実際にブルゴーニュで収穫をしている「日本人」は、どんな人が多いのか?これも私の知る限りであるが、ディジョンやパリの学生さんが主であるように思われる。彼らの労働は学生である故に週に働ける時間などが規制されているが、短期の収穫程度の労働なら問題は無く、直接生産者に申し込む、あるいは知人の伝手などで生産者を紹介してもらっているようだ。また自宅から生産者まで連日通えない場合の宿泊先は、知人宅、生産者宅、自費でホテルに、など様々である。そして日本人の場合、「ワインに興味があって」収穫に参加していることが殆どなので、もともと丁寧な仕事ぶりもあり、基本的に歓迎ムードであるとも思う。

もちろん観光ヴィザで来ても、体験的な名目での収穫など、参加方法は他にも色々あるはずで、後は生産者達との直接交渉になるだろう。ともあれ個人的な感想としては、ワインが好きなら収穫は、興味深い作業であることは確かである。

 

最後に余談だが、それはちょっと?と思う収穫人確保の話をチラリ。この生産者はアルザスであったが(当HPでは特に取り上げていない生産者です、念のため)、収穫時期になるとコルマールの駅にドメーヌの勧誘員(?)が待機する。そして観光客相手に

「タダで、収穫を体験させてあげましょう」

というものだ。収穫は確かに「ブドウ狩り」ではあるが、どうもこのやり方は釈然としない。「タダで」という言葉の遣い方を、間違えてはいないか!?それ以前に、そんな行き当たりばったりの方法で(もちろん最低限のヴァンダンジャーは、労働者として確保しているのだろうが)、微妙に変わるブドウの成熟に対応できるのか?このドメーヌはベタンでも結構評価が良かったりするものだから(確かにこのドメーヌの「商売」は上手いだろう)、余計むむむむ、、、、なのである。