4/14〜16

〜春も平和も、遠し、、、〜

 

 

 

今回のORGANISATEUR

 

私個人で。

 

今回のチーム・デギュスタシオン

 

私一人。

 

今回のスケジュール

 

4/14

パリ発

15:00 Domaine Geante Pansiot訪問

ジュヴレイ・シャンベルタン泊

4/15

7:00 Chateau du Pommard訪問

15:00 Domaine Maurice ECARD et Fils

ジュヴレイ・シャンベルタン泊

4/16

この日は晴れ!畑の風景は後日、幣HP内「小さな写真集」をお楽しみに!

10: Domaine Amiot-Servelle訪問

14:00 Domaine Jean TARDY訪問

帰パリ

 

 日本から届くメールなどを見ていると、何だかとても暖かそう、というか暑そうだ。羨ましかったりなんかする。

 この裏話を書いている今日(4/22)は、やっとバルコンにも短時間ならTシャツで出られるようになったが、つい先日の外出姿は革ジャンに、ブーツ。せっかく帰国時に久しぶりに買ったサンダルやジャケットはいつ日の目を見るのか?冬のファッションも半年近く着ていると、飽きてくる。

― En Avril, Ne te decouvre pas d’un fil

フランスの諺である。直訳すれば「4月中は、糸1本も脱ぐな」であるが、転じて「4月の薄着は禁物!」となるらしい。覚えたばかりで嬉しく何人かのフランス人に試そうとすると、「En Avril、、、」あたりで彼ら全員が私のトロくさいフランス語での続きを待たずに、「Ne te decouvre pas d’un fil、だろ」と返される。どうやらこれは超一般的な言い回しであるようだ。

 ともあれ早く「糸1本」でも脱いでしまいたいものだが、今年は昨年、シャンパーニュやブルゴーニュを襲った「春の霜害」報告も届いていないし、これくらいなら寒くても良しとしなければいけないのかもしれない。また昨年は酷暑で高齢者が多く亡くなったことを反省して、政府は老人ホームに冷房ルームの設置を義務づけるよう呼びかけているが、現時点で普及率は1%にも満たない(!)のだという。というわけで、やはり「暑くなって欲しい!」とも簡単に言えない、フランスなのである。

 

テロ対策だったのか?

 

 先日の裏話でTGVの荷物置き場が閉鎖されているのを見て、「盗難防止」と書き切ってしまった私であるが、これは少し平和ボケ過ぎたのかもしれない。

 久しぶりにメトロを利用すると、知らぬ間にホームにあるゴミ箱は撤去、あるいは閉じられてしまっている。これはもちろんテロ対策でゴミ箱という不審物を最も入れやすい所を、無くすためである。よってそれでなくてもションベン臭い、吸い殻だらけと清潔度では評判の良くないパリのメトロは、更に秩序を無くしたゴミが溢れかえっている。聞くところによると、3/11にマドリードでの連続車両爆破テロ以来、フランスでも空港や駅などでの警備が強化され、3/14には警戒度が「赤」に変わったそうだ。そうなるとTGVの一件は「盗難防止」というような可愛らしいものではなく、フランスの鉄道会社に確認したわけではないが、これは「テロ対策」と解釈するべきであろう。

 現在TGVに乗る際には、キャリーケースをヨロヨロと座席上部の荷物置き場に載せているが(ただ女性の場合は、必ず周囲のムッシュ達が助けてくれる)、テロリストにとってはこんな「顔が割れる」ような不審物の置き方をするよりも、車両間にさっさと置いて立ち去った方がよほど容易なはずである。しかし今は、車両間に荷物を置こうとすると必ず鉄道関係者のお咎めがあり、それでも置く必要がある場合には車掌などの許可がいる(もっともTGVが動き始めると、知らぬ間にスーツケースの山が出来ていたりするのだが)。

そもそもフランス国内の大きな駅は、ホームまで自由&無料で人が入り放題なのだ。日本のように券を通さなければホームに入れない改札機ではなく、フランス版改札機は単なる「刻印機」と呼ぶべきチッポケなもので、その存在感の余りにもの無さに、私は何度か刻印を忘れて乗車したことがあるほどだ。勿論ホームの立ち入りに荷物検査なども無い。そして券の所持の有無確認は列車が発車してからである。この状況は考えてみれば「超スキだらけ」で、しかも一度発車すると1時間以上停まらないこともあるTGV。万が一爆発物と一緒に密閉されているとしたら、想像しただけで怖い。

盗難防止、テロ対策。どちらも私の推測の域を出ていない話だが、いずれにせよ全く良い話でないことだけは確かである。そして盗難は紛れもなく増えているので、引き続き渡仏者はご用心を、だ。ちなみに現在フランスの服役者数は、過去最高を記録しているのだとか、、、。

 

多すぎる糖も、困りもの?

 

 補酸、補糖。こう書くだけで何か故意にズルをしたように眉をひそめる人もいるが、もっと寛容に受け止められるべき処置だと思っている。もちろんせずに済むのなら生産者にとって、こんなに喜ばしいことは無い。しかしブドウの成熟度はどんなに努力しても100%コントロール出来るものではなく、特に昨年のような特殊なミレジムなら、「すべき」ワインは山ほどあっただろう。

タルディ親子。2007年に迫るメオ・カミュゼとの契約更新をクリアして欲しいと思うワイン・ファンは、私だけではないと思うのだが、、、。

補糖や補酸は申請を経て処置されており、また酒質自体がしっかりしたワインでかつ生産者にセンスがあれば、むしろワインはより素晴らしいバランスを生むはずである。しかし生産者自体もこれらの処置に対するマイナス・イメージは心得ているようで、なかなか口を割らない(?)。「2003年は躊躇無く補酸した」とキッパリ言い切る生産者は、なかなかの正直者だと思う。そして「頼むから補酸してくれ」と言いたくなるワインとも、2003年はしばしば出会う。

ところで特に冷涼な年などは、「仕込み時には町中から砂糖が消える」というジョークすら飛ぶブルゴーニュであるが、2003年のように「糖が多すぎる」のは、より厄介なのかもしれない。

今回訪問したドメーヌ・ジャン・タルディのギヨームによると、

2003年は一次発酵が終わってアルコール度数が規定以上に達していても、残糖度がまだ15g/L以上残っている『かなり高名な』生産者達も多く見られた。よって彼らは、この『残り15』をどう処理するかに随分苦労したようだ」。

 彼自身は内心冷や冷やしながらも、最終的にはどうにか糖を残さずに樽に移すことが出来たが(彼とは非常にフランクに話しており、ワインの味わいからしてもその言葉に嘘は無いだろう)、この「残り15」は醸造学上非常に危険であり、「残り2」までに抑えるべきなのだと言う。なぜなら通常樽の中でマロラクティック発酵・熟成を遂げるワインの中では、バクテリアが存在していても酵母の方が強く働き、酵母がバクテリアの繁殖を抑えている。加えて澱の還元力もあり、SO2を添加しなくても樽の中は全く問題が無いという。しかし残糖度が高いと話は違う。残糖は時にバクテリアに活力を与えてしまうのだ。

先日の「生産者巡り クリストフ・パカレ」で述べたように、過熟直前までブドウの糖度を高め、残糖度が高くても樽に移す生産者もいる。だが彼らは「生み出したい味わい」を得る過程でそのような状況が起こり得ることを心得ており、その為にはやはり徹底した醸造学を経て、「抜け道」とでも言うべく点を付いたポイントを知っているから、安全に事を進められるのである。しかし求める味わいも違い、またそれゆえノウハウも持っていない生産者が「残り15」をいきなり突きつけられた時には、投げ出したいほどの事態だったのかもしれない。
ともあれ、2003年。生産者の苦労に申し訳なく思いながらも、やはり各生産者がどう仕上げてくるのか、という興味を抑えることが出来ないミレジムなのである。

 

 

エリックさん、ごめんなさい、、、

 

シャトー・ド・ポマールにて。新しく栽培責任者に就任したドミニク・ギュヨンさんに、馬での耕作するエリック・マルタン氏(右の白いパンツの人)。

 このHPを隈無く見て頂いている方なら、デュガさん家の愛馬「ジョンキー」とロマネ・コンティの風景以外に、時折やはり「馬と人と畑」の写真と、それに添えられたキャプションがあることにお気づきだと思う。

 ブルゴーニュの美しい斜面で馬と人が働く姿は、それだけで絵になり、しかも私は猫も好きだが馬も好きなのだ。よってついつい当HPでは「馬寄り」なキャプションや私の戯言が続いたが、やっとこの「馬と働いている人」に正式取材をすることが出来た。

 彼の名前はエリック・マルタン氏。ワイン畑専門に耕作する「エキパージュ」の代表者である。そして彼の考え方や、仕事にはとても感銘を受けた。とうとう近日中に当HPでもきちんと紹介させて頂くことができそうだ。ここではまず、馬と風景ばかり追いかけていた私を許してください、エリックさん!である。

 しかし本当に、彼への取材では私の愛するヴィニュロン達と出会った時と同じくらいに、心が動いた。特に自分のポリシーと自由を両立している、という点に於いては、憧れすら感じたのである。かっこいい。