6/17

〜美しいスタンダードを振り返りに、ランス〜

 

 

 

今回のORGANISATEUR

私個人で。

 

今回のチーム・デギュスタシオン

 

私一人。

 

今回のスケジュール

 

6/7

パリからランスへ、日帰り

11:00 Veuve Cliquot Ponsardinの醸造責任者の一人、フィリップ・チェフリ氏を訪問

 

 快晴続きのフランス。冬季の産地行脚では朝早くの出発は薄暗く、それでなくても出不精な私の腰はとんでもなく重くなるのだが、時はまさに夏至直前。早朝でも、10時過ぎでも何となく明るい。こんな時の日帰り行脚はちょっとした遠出気分で、梅雨を知らないパリにいることに感謝してしまったりする。

 

美しいスタンダードを振り返りに、ランス

 

私を腰砕けにした、このボトル。

 RM(レコルタン・マニピュラン、自家ブドウ畑の生産者もと詰め)のシャンパーニュが、日本で注目されてから久しい。私自身、生産者の志がワインの隅々にまで現れる「作り手の顔が見えるワイン」の方が心惹かれる方なので、RMに吹く追い風は嬉しく思い、実際に私がシャンパーニュを購入する時にはRMのものを選ぶことは多い。

 確かに日本に入荷しているRMはインポーターの方々の努力のお陰で、非常に厳選されていると思う。しかしこちらの玉石混合のサロンなどでは首をかしげたくなるRMに出会うことも多々あり、更には大手NM(ネゴシアン)メゾンのシャンパーニュに手のひらを返したように、「どうせ、大量生産じゃん」と言わんばかりの批判があるのは、偏見であろう。ビオや小規模な生産者の強烈な個性の後だからこそ、最近はボルドーの秀でたシャトーや、シャンパーニュなら大手メゾンの完成美とも言うべき安定感の価値が改めて見えてくる

 そんな思いが頭を駆け巡り始めた昨年末、当HPお馴染みのパリのワインショップ「LAVINIA」で、所謂「大手メゾン」のシャンパーニュがズラリと並ぶ試飲会に参加。クリュッグ、ドン・ペリニョン、クリスタル、ボランジェ、リュイナール、サロン、等々が累々と惜しみなくサービスされれば、当然ながら舌の「贅沢閾値」は上昇、普段は感激して飲んでいるシャンパーニュでも評価が辛くなってしまうものは少なくない。その中で美しさが際だっていたのが、サロンとクリスタル、そしてヴーヴ・クリコの「ラ・グランダム 1995」だった。いや、本当に美しかった。

 美しいものに出会うと、突き動かされるのは性なのか。折しもこの試飲会の10日ほど前、「ポーレ・ド・ムルソー」のパーティで私の隣の席にいらっしゃったのが、ヴーヴ・クリコの醸造責任者の一人、フィリップ・チェフリ氏だった(その向かいが樽会社「フランソワ・フレール」の社長夫妻だったのだから、考えてみれば非常に贅沢な席に当たったものである)。大手シャンパーニュ・メゾンの訪問は、通常なら綺麗な、でも香水がちょいとキツめのお姉さんに有料で案内されてお終り、である。だがこのLAVINIAの試飲会での印象は、密かに醸造責任者直撃(?)を決心させるのには十分であった。

 半年以上も経過した6月になって氏が私のことを覚えている自身は全く無かったが、ここはポーレ・ド・ムルソーのモットー、「肘を付き合わせて出会い、飲む(日本で言えば「袖ふれあった仲」というところだろうか?)」を信じて、氏にコンタクトを取ることに。氏の記憶力のお陰で私は忘れ去られてはおらず(?)、今回の訪問が相成った。

 ベース・ワインで始まった試飲が、1980年の「ヴィンテージ・レゼルヴ」に至った時には大袈裟でも何でもなく、その官能に腰が砕け、このメゾンのミレジメ・シャンパーニュは20年以上を見越して作られていることを確信した。ここのところ微妙に増えた(?)仕事と相次ぐパソコン・トラブルで遅筆に拍車がかかっている「生産者巡り」であるが、詳しくはここにレポートしたい。気長にお待ちください!!!