6/7〜8

〜ここでは皆が、土壌フェチになる!? アルザスにて〜

 

 

 

 

今回のORGANISATEUR

ワイン専門のツアー・コーディネーターであるフランス人女性、ベネディクトさん

 

今回のチーム・デギュスタシオン

 

ベネディクトさんとそのご友人、LAVINIAの新しい日本人スタッフ、ハルコさん、そして私の4人。

 

今回のスケジュール

 

6/7

パリ発

15:00 Domaine Marcel DEISS訪問

18:00 Jean−Baptiste ADAM訪問

コルマール泊

6/8

9:30 CIVA(アルザスワイン委員会)訪問

11:00 Domaine Andre KIENTZLER訪問

10:00 Domaine Gerard SCHUELLER訪問

18:00 Domaine WEINBACH−Colette FALLER et ses filles訪問

帰パリ(深夜2時過ぎ)

 

真夜中のコルマールにて。教会のステンドグラスは外から見ても幻想的。

 ブルゴーニュの友人から、アルザス出発前夜にメールが届く。

「明日からは嘘みたいに暑くなるから気を付けて!魚にとっては大変だね」

彼は私がダイバーであることを知っているので魚ネタのメールが多いの(?)であるが、早速メテオ(天気予報)を見ると、あちゃちゃ、だ。アルザスは31〜32℃とのこと。嘘でしょ!?季節外れの暑さは、フランスにいる誰にとっても昨年の再来を恐れさせる。この暑さが過ぎるとまた涼しさが戻ってきて欲しいものだ。

 

 アルザスは寒く涼しい、という認識は正しいようで少し違うようだ。今回のツアーをコーディネートしてくださったベネディクトさん曰く、

コルマール以南は、夏は時に非常に暑く、加えて夏も少ないために、場所によっては地中海沿岸と同じ植生が見られるの」。

目鱗だ。しかしブドウ畑以外に目をやると、確かにローヌで見るような果樹園が結構あちこちにあったりする。激しい気温変化は、日本の京都や信州の盆地を思い出させ、生産者達が肌で感じるテロワール、ミクロクリマは、知れば知るほど簡単に説明出来るものではないと痛感する。

ところでアルザスの気候を特徴的なものにしている一つに、西側にあるヴォージュ山脈の存在がある。特に降雨量の少なさは、雲が山脈を越える時に拡散してしまうためだとルネ・ミュレーのパンフレットで読んだ。年間降雨量が600ミリを切ることもあるという。私の記憶が正しければ日本の降雨量は2000ミリを超えていたはずで、雨の多さで有名な大台ヶ原になると3〜4000ミリであったような。このことをある生産者に話すと、

「日本のブドウ栽培者は、カビ系の対策が並大抵の苦労ではないだろうね、、、」と心配された。私自身のフランス生活で、最もこの国の乾いた空気を実感するのは「洗濯物の乾きの早さ」(超主婦的)だが、フランスを垣間見ている今だからこそ、最近は日本のブドウ園も一度じっくり訪問してみたいと思ったりする。いつの事やら、であるが、きっとそこにも、肌で感じる「何か」や「違い」があるに違いなく、日本にいた頃には気付かなかった苦労や魅力も見えてくるかもしれない。

 アルザスにいながら、妙に日本に思いを馳せてしまった今回の滞在である。

 

 

 

土壌フェチになる

 

ガイスベルクの畑にて。ブドウの蔓の向こうには、丘に切り立つ古城がポツリ。

 前回のアルザス訪問(2003年11月)とメンバーは全く違うものの、今回も当然のように私も含めて同行者達は皆、土壌フェチになってしまった。

 訪問する生産者達がミクロクリマを知り抜く人たちであるから、訪問時の会話は土壌の違いを抜きにしては進まない。ましてや同じミレジム、同じセパージュでも味わいに差ははっきりとあるのだから、ボンヤリと「味わいが違う」とだけ感じて帰っても、勿体ないというものである。更にはそこに斜面の多様な向き、高度の差が加わり、アルザスに行くと毎回ながら頭がパンク寸前だ。

 今回土壌の違いを最も明瞭、かつ簡潔なイメージで伝授してくれたのは、ドメーヌ・マルセル・ダイスであった(氏本人は不在であったが、対応してくれた女性がまた熱い)。詳しくは生産者巡りでレポートしたいが、一方では強い反論を引き起こすフランスの「テロワール&土壌主義」である。その反論を乱暴に書いてしまえば「歴史の長さと文化を盾にした、フランスが自己の優位性を示すための逃げ口上」であり、特に多くの産地で歓迎される石灰質などは、水はけの良さにしか本当は寄与していないというものだ。

 確かに根が深く張り母岩まで達さなければ、石灰質であれ何であれ、それは余りワインの質に関与しないだろう。そして単なる「水はけの良さ」というのも、ブドウの味わいにかなりの影響を与えるはずである。しかし「土と働く」生産者達のワインを飲んだ時に、それがブラインド・テイスティングであっても、「土壌の違いのイメージ」は鼻や口の中に沸き上がってくるもので、そのイメージを生産者側に伝えるとかなりの確率で土壌を言い当てていたりするのである。私には単なる「水はけ」や「日照量」、「高度」といったものが、ここまでのニュアンスの違いを生み出すとは思えない。特に太陽の気まぐれに翻弄される北の産地のワインには、土壌自身の力が前面に出やすい傾向にあると捉えている(要するに私自身は「テロワール&土壌主義」肯定派だ)。

 ともあれそんな「土壌を巡る思惑」が、最大限に爆発するのがここ、アルザスだ。アルザスを経てブルゴーニュに戻ると何となくほっとしてしまうほどに、アルザスの土壌はモザイク状に複雑で、しかしだからこそ未知の味に出会える楽しさが溢れている。もっとも一つのドメーヌにおける試飲数の多さもアルザスはダントツで、体力・気力共に充実していないと、時にそれは修行モードに入ってしまうのが難ではある、、、。