裏話7月 その1

〜3倍速のムーヴィング・ウォーク モンパルナスにて〜

 

 

 

 今回の裏話はワインとは全く関係がない。でも「パリだなぁ」と思ってしまったので、つい。

 

 パリに滞在中、車を持たない限りお世話になるのがメトロ。方向感覚を欠いた私の独断で余り通過したくない駅は、

 

     乗り換え行路が長すぎる → モンパルナス、シャトレ

     目的地に繋がる出口が見つけにくい → モンパルナス、ナシオン、バスティーユ

     駅が深くて何となくコワイ → パリ北東部に多し

     スリが多い → モンパルナスなどTGVに繋がる主要国鉄の駅や、北東部

 

 となる。そう、モンパルナス界隈を愛するパリジャンは多いものの、私にとってモンパルナスは余り楽しい駅ではない。しかし避けても通れぬのもこのモンパルナスで、そして最近気になっていたのが、構内で工事中であった「高速ムーヴィング・ウォーク」だ。

 既存のものは、時速3キロ。これに乗っていて日本のものと違和感を覚えることがないので、日本もきっと同じくらいの速度なのだと思う。しかし工事中のものはなんと、「時速9キロ」と書いてある。いきなり3倍速!?日本でも高速ムーヴィング・ウォークは乗ったことがあるが、それは非常に快適な速さであった。せいぜい2倍速くらいだと思う(間違っていたら、ごめんなさい)。そして数日前、ついに私的渦中の3倍速(時速9キロ)が試験運転を始めたのだ。

まずムーヴィング・ウォーク前には、注意書きがズラリとある。「かかとのある靴」「子供を抱いている」「杖を使用している」はアウト。他にも「正しい乗り方」がポスター大で細かく書かれているが、乗る直前に斜め読みで全てを理解できる仏語力は持ち合わせていない。とにかく「少々かかとのある靴」で、トライ。

 

 最初にあるのは、鉄のキャタピラ状の「9キロへの助走」段階。確かに0キロから9キロの世界にいきなり行けば、慣性の法則で後ろにひっくり返りそうなので、これは正しいのだろう。ここに乗っていればスムーズに9キロゾーンに突入できるというわけだが、キャタピラ状ゆえ「少々のかかと」でもかなり不安定。9キロにゾーン着陸時に、一瞬よろける。しかし9キロゾーン自体は非常に快適だ。通常のゴム製の足場は早歩きをしても安定感が良く、走ってもいないのに、視界がグングンと開けていく感じが○。いやぁ、こんなに速く歩いたことはない(当たり前だ)。パリのメトロ構内はお世辞にもキレイとは言えないが、このスピードではいつもの風景も「場末の未来都市」っぽく見えてオツである。あっという間に、またもや減速地点のキャタピラが。さきほどよろめいたせいか緊張感が走る。そして案の定、今度は少し前のめりに。ああ、危ない。私の運動神経はごく普通なので、これは決して私がどんくさい(大阪弁?)からではないと思う。要するに靴がいけない。

 結論として。3倍速は万全を整えて臨まなければならない!?はき慣れた靴、荷物は邪魔にならない程度まで、また私が親なら幼子は乗せないいし、泥酔も御法度だろう。でもその前に、構内のエスカレーターやムーヴィング・ウォークがそもそも日本より少なく、あっても止まっていることも多い状況下で、なんでいきなり恐ろしく「自己責任度」の高いムーヴィング・ウォークを作ってしまうのか?3倍速は十分に楽しませて頂いたが、私としては既存のものが、まずは毎日普通に動いてくれていた方が最終的には有り難い。ここらへんの気が利いているのか、いないのかの微妙さもパリなんだと思う。

もしかしたら3倍速は日本にもあるのかもしれないし、やはり乗り換え行路の長さが不評のシャトレにもできているのかもしれない。ともあれ慣れるまではかなりスリリングである。

 

オマケ 〜メトロといえば〜

 パリのメトロの構内といえば、正々堂々と演奏活動をしている人の多さも、日本人にとっては見慣れない風景だと思う。ちなみによく見ると彼らは小さな顔写真付きの証明書を持っていて、これはメトロ側から正式に演奏活動を許可された人たちだ(審査もある)。乗客は気に入れば小銭を支払ったり、彼らのCDをその場で購入したりする。一方車両間を流しているのは、ほぼモグリ。よってコントロール巡回の気配を感じた彼らが、そそくさと退散する光景を見ることもある。

 この「許可されたチーム」たちのレベルは、時にかなり高い。時間が許せば足を止めたくなることもある。パリのメトロの方が日本のものより気に入っている場所があるとすれば、それはこのプチ・コンサートと、もう一つは各駅間の短さだろうか。密かに気に入っていた車両内での人形劇は、手間がかかるせいか、厳しくなったコントロールのせいか、最近では滅多にお目にかかれない。

 

これはメトロの郊外ではなく、ポンピドー前の広場にて。モンゴルに「2音階を同時に奏でる『喉』を持つ人たちがいる」とは聞いていたが、初めて生で聞いた。単純に感動、周囲の老若男女と同様に、30分ほど座り込んで聞き入った。日本では路上での「座り込み聞き」はなんとなく若者にしか許されていないような空気があり、そして音楽のジャンルも限られている気がするので、こういう場に居合わせた時はチョッピリ嬉しい。

 
 

裏話その2 7月の終わりに

 

 

 書きかけの生産者巡りを数編残したまま、今夏最後のブルゴーニュ行脚の日が来てしまった。そして8月は、日本へ。ヴァカンス色に染まるこの時期は、こちらが活動を続けたくとも、相手が不在ならばどうしようもない。他分野も含め、今年は予想以上に「種まき」の年になってしまい、とにかく「種」がまずは「発芽」させるために、もう一踏ん張りしなければならない。そして更新が「裏話」の連続ですみません、、、。

 さて、6月以降、フランスは極端な「暑」「冷」をくり返し、乾燥が嘆かれながらも妙な湿気も流れてきた。これは雹の危険性高し、である。今回のブルゴーニュ行脚は8日間。アポイントは約20件。あいかわらずスカスカのアポ取りではあるが(ワインを利き、話を伺い、メモを取り、写真も撮る、を一人でしていると、私が満足に訪問を消化できるのは、マックスで1日に4件くらいになってしまう。車が無いのも痛い)、少なくとも帰パリ後すぐに、ブルゴーニュの最新お天気情報くらいは、まずはレポート出来るはずである。お待ち頂ければ幸いです!

 ああ、出発の時間が、、、。いってきます!!!