裏話 1月

〜度重なる更新の遅さのお詫びと、日仏文化交流(?)について〜

 

 

まずは昨年末以降、著しく更新が遅れたことのお詫びを、ここに述べたい。幣HPは日々のカウント数こそそう多くは無いものの、読んでくださる方がいる限り、フランスの情報を届けることを目的としているので尚更だ。本当にすみませんでした、、、。

 

 1月の更新の遅れは、私が正月以降に取った休暇と、休暇後は仕事仲間であるフランス人男性(漫画家)が2週間に渡り来日したことで、東京営業も含めた彼のアテンドや別業種での締め切りに追われ、挙げ句の果てに彼の帰国後、私がインフルエンザで完璧にダウンしてしまったことにある。ちなみに今日(1/29)で、飲まず食わずの病床(?)に就き5日目、どうにかキーボードを誤操作無く打てるまでに回復した。「生産者巡り」などのレポートは、来週から再開できればと思う。もう暫くお待ちいただければ幸いです。

 

日仏の食文化を繋ぐのは、やっぱり「ワイン」!?

 

 私の知る限り、本当にフレンチが好きで、「フランス滞在中は可能な限りフレンチを制覇するのだ!」と気合いを入れてフランスに来る日本人の殆どが途中で挫折し、日本食屋や少なくとも中華に駆け込むか(「駆け込み」という言葉がピッタリ来るほど、和に近い味を切望してしまうのだ)、何食かをパスして胃腸を休ませざるを得なくなってしまう。

「異国で自分が日本人であると感じさせてくれるのは、胃袋だ」とは、在仏歴の長いある知人の名言である。確かに外国での食事に対する不満、ひいては味覚とは、最もダイレクトかつプリミティブに自身のアンデンティティを知らしめてくれるものの一つなのかもしれない。「オフクロの味」というやつも、この範疇に入ると思う。

 

 今回アテンドしたフランス人漫画家は、もともと大の日本贔屓であった。日本の伝統文化からポップカルチャーまでこよなく愛する彼は、食卓でも沖縄の「豆腐蓉(とうふよう)」を除き、納豆ですら躊躇なく食し、酒や焼酎もどんと来い!その好き嫌いの無さには私のダンナ含め、彼と今回会った日本人全てが驚愕した。しかしアテンド側としては彼に無理はして欲しくなく、ある日、

「フレンチが恋しくなったらいつでも言ってね」と申し出たのである。すると彼は、こう答えた。

「ワインがあるから、ダイジョーブさ♪」。むむむ、どういうことか?

「だって、あなた達(私とダンナ)が自宅で食卓をボクのために用意してくれる品々。それは美味しいけれど、日本にしか無い味わい、食感、そして食べ方で、まずは本当にビックリする。でもいつも『トリック』があるんだ。それが『ワイン』っていう、自分が慣れ親しんだフランスの味。フランスをいつも感じつつ、未知のご馳走があって、それがまた合う。これはもうボク的に国際的な贅沢、ジェームス・ボンドのような生活だね!!!」。

 

京都・龍安寺にて、物思いに耽るフランス人漫画家。今年2月より日本でも彼の漫画が連載予定(日本出版社「猫びより」にて)。彼を連れての2週間は、私にとっても「ニッポン新発見」の日々。

彼の話を聞いていると、かの石川啄木が東京駅のホームで、雑踏の中にも出身地の訛りを聴き取り郷愁の念を癒した、という話を思い出す。まぁ彼にとって駆け足で終わった日本滞在は郷愁とはかけ離れていたとは思うが、ニッポンニッポンした食卓の中で、フランスのエスプリが詰まったワインの味わいが彼の中でフォーカスされ、食事に華を添えたのは、事実だと思う。彼曰く「まさか日本で、ワインに目覚めるとは思わなかった」。

 ちなみに彼の最もお気に入りだったのが、テッチリと共に味わった、ニコラ様の「クロ・ド・ラ・クーレ・ド・セラン 1993」と、同銘柄の2002年。ワインに特に関心の無い多くのフランス人にとって「ロワール=スーパーでも安い日常ワイン」のイメージが強く、そしてデキャンタして華開くビオ味、というものも一般的ではない(もっとも大阪の我が家にとっても、「家庭内テッチリ」と「ニコラ様」はお客様コースである)。ましてやフランスでは「毒魚」の部分がデフォルメされているフグを食し、その風味・食感が「トレ・ビアン!」だった時には、オレは「あの」フグを食べたのだ、という日本人には無い深い感慨(?)があるようだ。ともあれウンチクは抜きにして、合うものは合うし、美味いものは美味く、「これは外国人の舌に合わないのではないかしら?」なんて小さな心配は、軽く凌駕するものだと妙に納得した。これは日本の一般的なおかずでも同様で、ほんの少しマリアージュに気を遣えば、ワインは食卓で、毎回気の利いた日仏の「架け橋」になってくれた。メルシ、だ。

 

 ところで「日本食責め」にも根を上げなかった彼ではあるが、一度だけ近所のフレンチに行った時の、彼の食べ方は勢いが違った。それはフランスの日本食レストランで、出汁まで全て飲んでしまう私自身の姿を見ているようでもあり、、、。やはり味覚はアイデンティティである!?

(大阪・天満の「DIVA」さん、ごちそうさまでした!!!)