裏話 3月

〜 もしワインの買い物で、トラブルに巻き込まれたら? 〜

 

 

 当HPでもたびたび紹介しているワインショップ「LAVINIA」。フランス最大規模のこのショップは、品揃えや定期的なイベントがとても魅力的で、数時間いても退屈知らずの素敵な場所だ。よってワインが好きな知人がパリに来た時にはマドレーヌ寺院のすぐ側、という立地条件の良さもあり、価格設定は高い目ながらも、必ず案内するショップである。

 しかし今回、このショップへ依頼した日本へのワイン配送で生じたトラブルは、半年もの時間をかけながら余りにも常識から外れた方向に進みすぎた。最終的にショップ全体の責任者まで話が正確に伝わった後こそ、事態はスピーディに収束したが、海外での買い物で避けたいものの一つがこの手のトラブルだ。当HPで非難がましいことは今まで余り書いたことはない。しかしこのショップで過去にトラブルに遭った方々からも同様の声を少なからず耳にしており、トラブルを避けるためにも今回の出来事は少々記しておきたく思う。

 

 トラブルのあった配送内容は、以下であった。

     7月にパカレを3本購入。しかしワインの配送に適さない夏期であったため、10月に9本を追加購入して計12本で日本に配送することが可能かを打診、ショップ側の了承を得て、入金後ショップにまずはパカレ3本を保管してもらう。

     10月にパカレ以外の9本を購入、日本への配送費も全て支払い、配送手続き完了。

     日本で受け取った側(ダンナである)から、「最初のパカレ3本と残り6本、つまり9本しか送られてこなかった」との報告を受ける。

 

 あっては良くないことだが、私も百貨店でワインの販売をしていた時、注意を払っていたつもりでも、配送ミス(本数や銘柄、配達指定日の違いなど)はあった。元同業者として、また特に急ぐ配送でもなかったので、この時点では私にとって、最終的に残りの3本が日仏共に涼しい時期に、無事に日本に着けば何の問題も無かった。そこで購入時のレシートナンバーや日付、会員番号を明記して、LAVINIA宛にメールにて、本数が不足している旨を伝えたのである(LAVINIAのレジは顧客の購入履歴が残るPOSタイプであり、同時に文書として残る方がショップ側も処理しやすいだろうと思い、メールを選んだのだ)。

 だがショップ側から最初に受けた返答は、「通常なら日本に3本を配送したら75ユーロかかるところを、今回は特別に50ユーロでお届けします。ワイン代はこちらで持ちましょう」という尊大なものだった。

 ちなみにLAVINIAが日本へワインを配送する時にはパリのクロネコヤマトと提携しており、クロネコではLAVINIAから引き取ったワインを伝票内容と照合するそうだ。そして今回は確かに伝票内容と実際の銘柄は異なっていたようで、この点ではクロネコにも落ち度はある(しかし一運送会社がワイン名まで照合後、発送作業をしていることに、私はむしろ感心した)。だがクロネコに確認すると、彼らはまず「9本」しかLAVINIAから受け取っておらず、LAVINIAが作成した伝票も9本分のみ、加えて最初のパカレ3本が入っていたところから推測すると、LAVINIA側も「2回の買い物分を一度の配送で終える」ことは理解していたのだろう。要するにLAVINIAの「積み漏れ」と「伝票作成ミス」と思われる。そして何よりも客として言いたいのは、それらのミスがLAVINIAから発生したものであれ、クロネコであれ、全ての支払いを合意の元で済ましたにも拘わらず、なぜ客がもう一度、彼らのミスに対して新たな支払いをしなければならないのか(私は50ユーロが惜しい訳ではなく、不当な支払いを好まないだけだ)。買い物とは最も身近な契約だ。客は自分が手に入れたい商品やサービスのために呈示された金額を支払い、支払いに問題がなければ店はそれに応じる。支払いに問題が無かったのに商品を渡さない、届けない、というのでは、契約不履行と言われても仕方のないことであるはずだ。

ともあれ全く納得がいかず、電話での応酬が続いたが、どう解釈してもLAVINIAから発生したのであろうミスを、彼らはクロネコに転化するのみで、「50ユーロをあなたが再度支払うか、もしくはタダでパリの住所に届けてあげます。あなたはどちらかの方法を選んでください」の線を譲らない。そこで彼らに「なぜ私が安くはない配送費を払ってまで、日本への配送を依頼したのか(パソコンなどの精密機器や、他人から預かった資料と一緒にワインをスーツケースに入れた時に、万が一ワインが割れるリスクは避けたい)」、「なぜ涼しい時期に配送を依頼したのか」を一から説明し直し、その上で再度、私には新たな支払いの義務が無いことと、たった一つの配送ミスにこれ以上の時間を割きたくないことを訴えた。それが12月のことであり、最終的にフランスワイン部門の責任者は、私の最渡仏前、3月上旬までに残りのワインを日本に届けることを約束したのである。

しかし(また「しかし」である)。3月を過ぎてもワインは日本に届かず、再度メールを送るも、今度はこちらから電話をかけ直すまで、返答は全くなかった。やっと繋がった電話で言われたことは、「あなたが言っていることは正しいだろうし、お怒りになる気持ちは察します。しかし購入時の伝票番号を言ってもらわなければ、こちらも処理ができません」。何度同じ事(分かりうる全ての購入記録は、最初に最低必要事項として文書で送っているのだ)と、当然のことを言わせれば気が済むのだろう?しかも怒るほどでもないミスを複雑にしているのは、ミスが起きた後の処理のまずさなのだ。金銭のやりとりが介在し、信頼関係も必要な「客商売」が何たるかを、全く理解していないとしか思えない。

 

「話はショップ全体の責任者 (前出のフランスワインの責任者ではなく)までいっている」ということだったので、当然ながら責任者はトラブルの内容を把握していると思われた。そこで代理人を立てて直接責任者に電話したのだが、代理人によると責任者の返答は、「私たちは全てのお客様に同じ扱いをしているので、あなただけを特別扱いできない」だったという。この責任者はトラブルに対して正確な処理をする人であると聞いていたので、もしこれが責任者の最終回答であるとすれば、ショップ自体の考えが「配送ミスが起こった時、それが顧客側の責任では全くなく、また全ての支払いが済んでいたとしても、顧客が購入したワインを完全に受け取るためには、新たな追加の支払いがあって当然である。その支払いが済まなければ店が金銭を受け取ったワインですら渡すことはできない」というものになる。これはおかしい。確かにショップの各担当者には逐一説明してきたが、責任者への報告の過程で何らかのミス(隠蔽?)があり、事実が事実として伝わっていないのではないだろうか。

最終的に責任者と直接のメールや電話のやりとりが何度かあり、責任者の回答は「すぐにワインを送ります。今回の展開はありえないことであり、以後このようなことが起こらないように至急、より確実な方法を確立します」だった。要するに責任者にとって私の説明は「寝耳に水」であったようだが、このショップを愛用してきた一顧客として、責任者のこの言葉が迅速に遂行されることを期待する。そもそもこのトラブルは「店長苦情レベル」になるほどのものではなかったのだし、些細なミスがここまでこじれることは、双方にとって後味の良いものではない。そしてワインショップに限らず、万が一このようなトラブルに巻き込まれたら、こちらに非がない限り相手を根気よく説得したいものだ(もっともこの件で奪われた時間は多大であった)。「金払いがよく、文句を言わない大人しい性格」と思われている日本人である。おそらく「泣き寝入り」は店側の尊大な態度を助長するだけで、日本人に対する買い物環境は改善されないであろうと思われるからだ。

 

ダンナ追記

ダンナはこの話を聞いたとき、50ユーロの送料のために1万ユーロを出してもかまわないと思った。そのお金はフランスで弁護士を雇う費用である。
 日本ではトラブルになりようも無い話だ。いやいや、政治が不安定な「イラク」でも品物が届かないことがあっても、送らなかった商品を再度送るために、送料を請求することはないのではないかと思う。 彼ら(
LAVINIA)は送らなかったのである。 クロネコにも9本しか送っていない。伝票も9本だ。そして、それが日本に9本しか送られなかったことを「分けて買い物をしたため」とか、「クロネコの責任」だと 言う。クロネコと交渉してくれとも言われたらしい。しかも12本分の送料(本数により送料は違う)を受け取っておきながら、送らなかった荷物の送料を再 度請求するのである。納得できるはずがない。しかしそれがフランスという国(国民性)なのか、LAVINIAというワインショップなのかと問われれば「それは違う」だろう。フランス人が考えても(実際この話を聞いたフランス人は憤慨した)、日本人が考えてもあまりにも異常な対応だからだ。しかも責任者へ 正しい報告が成されていなかったことなどを考え合わせると、誰かが自分のミスを隠蔽するために(かつ、相手が日本人であったために)したこととしか思えない。 どこの国であれ、契約社会に置いて契約不履行の責任を相手に押しつけ、それがまかり通るとは 思えない(詐欺と言われるぐらいに巧妙な物ならいざ知らず)。

 嫁が言うように
「泣き寝入り」は店側の尊大な態度を助長するだけであろう。しかし、もし フランス語の出来ないダンナ一人だったら「泣き寝入り」以外にどんな方法が選択できたであろうか?LAVINIAには日本人スタッフが居る。しかし、お得意様の日本人のために雇われた彼らも店側の人間である。日本語は通じ ても、話が通じるかどうかとは別のことだ。 もしそれが正しい主張であろうとも、こちら側に立って店と交渉してくれるわけではない。嫁は「あなたの怒りはよく分かりますが、当たり前のことが出来ないのがこの店なんです」と言われたらしい。店の責任者の「今回の展開はありえないこと」という言葉と隔たりを感じるのは私だけではないだろう。 それとも私達が余りにもしつこく主張したための粘り勝ちだったのか??

 嫁が最初に送ってきた文章を読んだ時、「何かの誤解があるに違いないから結果が出るまで待ちなさい。そして冷静になってから書き直しなさい」と
私は言った。その結果ずいぶん軟らかい文章になったと思う。しかし、それ故にダンナは追記を書かずにいられなくなってしまった。
結局、海外で安い(?)買い物をするためには、それなりにリスクがあると言うことのなだろうか?

 

あなたならどうしましたか?50ユーロを払いましたか?

 

<ダンナ追記 その2>

紆余曲折を経てLAVINIAから4月6日ワインが送られてきた。フランス発送が3月30日、たった1の週間で届いたのである。人間達の様々な想いやエゴに振り回されたこの数ヶ月、ここに至る長い道のりはワイン達に何の罪もない。

最後にLAVINIAの名誉のために一言。私達はクールの代金は支払っていないが、ワインはクール宅急便で送られてきた。この季節を考えると当たり前のことかもしれないが、最後の最後にLAVINIAの良心を見たような気がした