3/19〜23

〜2年に一度、ローヌ最大規模の試飲会

Decouvertes en Valle du Rhone(ローヌ発見)」にて その1

 



 

今回のORGANISATEUR

 ローヌのワイン委員会、InterRhone(インターローヌ)。

 

今回のチーム・デギュスタシオン

 カプリス・ド・ランスタンのジェラールと、 友人のエミさん。

 

今回のスケジュール

「第3回 Decouvertes en Valle du Rhone」(以下DVR)の全日程は「生産者巡り」にて記載、以下は今回の私の日程。

3/19

コート・ロティ&コンドリュー(DVR)

3/20

コルナス&サン・ペレイ(DVR)

クローズ・エルミタージュ(DVR)

エルミタージュ(DVR)

サン・ジョゼフ(DVR)

3/21

コート・デュ・ローヌ&コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ(ヴィザン、DVR)

Les Toques des Dentelles(レ・トック・デ・ドンテールの試飲会 

生産者訪問(Chateau de Saint Cosme、Domaine la Soumade)

3/22

終日、生産者訪問

(Le Domaine de Christia、Domaine de la Janasse、Chateau de Beaucastel、Domaine du Vieux Telegraphe、Chateau Rayas)

3/23

ジゴンダス(DVR)

ヴァケラス(DVR)

コート・デュ・リュベロン&コート・デュ・ヴァントー(DVR)

 アヴニョンより、パリへ

 

 2年前の春、このHPでも紹介したローヌ最大規模の移動試飲会、「Decouvertes en Valle du Rhone(デクーヴェルト・オン・ヴァレ・デュ・ローヌ、ローヌ発見)」(隔年開催)。3回目となる2005年は、ちょうど主催者であるインターローヌ創立50周年でもあった。まだ入場者数などの最終統計は手元に届いていないものの、ローヌにとって一つの節目となる試飲会であったはずだ。ちなみに前回の規模は、会場数は20、出展者数785、34カ国からの入場者数は12,000人に上った。

 季節は3月下旬、移動中の車窓に飛び込んでくるピンク色が目に嬉しい。そう、日本人にも馴染みの深い桜をはじめ、桃やアーモンドの木々が開花を迎え、まだ彩りに乏しいブドウ畑と好対照をなしているのだ。ところでローヌでよく見かける、ブドウ畑の間を縫うようにして存在する様々な果樹園。このブドウ畑と果樹園の線引きに関しては「ブドウが土地を選んだ結果」という生産者達の言葉はもっともだが、南仏に詳しいカプリス・ド・ランスタンのジェラールによると、「フィロキセラ以前は一面がブドウ畑だった。しかしフィロキセラはブドウ畑に壊滅的なダメージを与え、他の作物で生計を立てざるをえなくなった。だが一種類だけの果樹だと芽吹きや開花の時期が重なり、春の遅霜などで全滅する可能性もある」。つまりブドウを含め、芽吹きや開花時期が異なる果樹を植えるということは、その年の収穫(収入)の「保険」の意味もあるようだ。何気ない美しい風景の一部は、その土地にとっては必然の結果なのかもしれない。

 

2002年と2003年ミレジムの、今

 今回、私自身の試飲の目的は「2004年とは、どのようなミレジムなのか?」を知ることであった。結果としては「2004年は美しいバランスを持つミレジムになるだろう」というのが生産者達の主な意見であり、試飲でも感じられたことだ。これに関しては別途「生産者巡り」で報告しているが、2004年と同様嬉しく感じられたことは、洪水や大雨で泣いた2002年や、酷暑で苦しんだ2003年が見せている「個性」である。 

 

ドメーヌ・ル・サン・デ・カイユー(Domaine le Sang des Cailloux)。「ヴァケラス 2002」は私にとって「2002年を最も素敵に表現したワイン」の一つ。緻密なタンニンと甘味、香りには黒トリュフの香りすら漂い始めて、官能的。

  まずは2002年。収穫前の大雨(南ローヌでは地域により浸水)後に残ったブドウを待っていた問題は、「湿気による腐敗」と「薄まった果汁」だった。これらに対して殆どの生産者は、収穫前に傷んだブドウを取り除いた上で、収穫時には通常より非常に厳しい選果を行ったようだ(大雨の後、この地特有の乾いた北風「ミストラル」も腐敗の蔓延を防いだ)。また複数の銘柄を持つ生産者の多くが、プレスティージュ・キュヴェをスタンダード・キュヴェに格下げしている。こういった努力の成果かこの地にしては細い線が、逆に凛とした印象と思える時もあり、個人的には好きである。そして生産者によっては、大雨があったことなど微塵も感じさせないワインを生み出しており、秀でた生産者の力量が如実に出ているミレジムとも言えるだろう。

 

シャトー・ド・サン・コム(Chateau de Saint Cosme)。3月上旬には日本でプロモーションをしていたようだ。

 一方、2003年。酷暑と乾燥のせいで、厳しさや樽と相乗した乾きをタンニンに感じることも多かったが、逆に「暑さの狂気」とでも言いたくなる、一般のワイン評価などをなぎ倒すような(?)迫力を持つワインもあった。例えばドメーヌ・パリ・ヴァンサン(Domaine Paris Vincent)の「コルナス グラニテ(花崗岩の意) 60°」。不思議なキュヴェ名は樹齢も60年、そして畑の傾斜度も60度(!)であることに由来している。60度といえば視覚的には直角の世界であると思われ、作業時には命綱(!!)も使われるらしい。これだけでも既に驚愕するが、2003年はアルコール度数が16度(!!!しかしこれは、このドメーヌに限った話ではない)まで上がったそうだ。結果、味わいは「美味い」とか「完成された」と言うよりも、「凄い」「忘れられない」という言葉が似合う。これはワインの摩訶不思議を見せてくれる、ワインファンにとっては貴重な(生産者にとっては命がけの?)1本だと思う。

 もちろん会場にある全てのワインを試飲した訳ではないが、今回の滞在で、他にこのような驚愕をもっとも与えてくれたのはジゴンダスのシャトー・ド・サン・コム(Chateau de Saint Cosme)だ。やはり「ジゴンダスが云々」というような分析を馬鹿らしくさせるような、ブドウのパワーを炸裂させている。

 ローヌの2002〜2004年。各ミレジムの個性は著しく異なるものだ。



 

Les Toques des Dentelles(レ・トック・デ・ドンテール)の試飲会

ドメーヌ・ルージュ=ガランス(Domaine Rouge−Garance)。

  パリでも時々開催されている、この試飲会。以前このHPでも紹介したことがあり、その時私は試飲会名を訳して「トック帽」としたが、大きな間違いだった(すみ

ません、、、)。「ドンテール」とは「レース」の意であるが、これは南部ローヌを見下ろす山々の頂の形がレースのように複雑であることに由来する呼び名だった。

 ともあれこの試飲会には、「土と働く」ことをポリシーとする生産者が集まっており、パリでの開催時も関係者に人気である。今回その中でも1997年が創立というまだ新しいドメーヌ、「ドメーヌ・ルージュ=ガランス(Domaine Rouge−Garance)」の一連の2004年は、新しいドメーヌがグングンと頭角を現す時の、ピカリと光るものがあるように思われた。生産者自身も「創立以来、2004年は最高の経過をたどっている」と語っており、同時に創立当時から採用しているビオディナミも、いよいよ有効に作用しているのかもしれない(土壌の改善には少なくとも3〜4年はかかると言われているからだ)。そして帰パリ後、過去の「レ・トック・デ・ドンテール」の試飲メモを見直すと、私は「ドメーヌ・ルージュ=ガランス」を常に会場内での「ベスト3」に選んでいたのであった。自分の記憶力の無さに呆れつつ、このドメーヌに俄然興味を持った次第である。