訃報
アンリ・ジャイエ氏 他界

 

 


 

 9月20日、アンリ・ジャイエ氏がディジョンの病院で癌のために他界した。享年84歳。

 

 私が氏とお会いできたのは、パリでたった一度のみだった。

 私の渡仏(2002年)以降、氏自身だけでなく奥様の体調不良を耳にすることがあった。だが一方で実際に氏にあった人達は、「年齢よりもずっと若く見える顔艶の良さ」「非常に力強い眼光」「ワインに対する情熱、知性、好奇心、探求心そして溢れるユーモア」「秀でたオーラ」など、ワインの神様が健在であることに感動し、その一言一言に感銘を受けていた。私自身はヴォーヌ・ロマネでお会いできなかったことが悔やまれるが、他の生産者達との会話で氏の名前が挙がる時、氏が生産者達にとって本当に特別な存在であることや、氏が与えた影響は手に取るように感じられた。

 まさに収穫時期に亡くなられた偉大なワインの神様に、謹んでご冥福をお祈りします。

 

2003年6月21日撮影。パリのワインショップ「Lavinia」にて。


この時氏は「ブルゴーニュのテロワール」について講演を行った。講演は余り慣れないのか、原稿に目を落とし「あれ、どこまで話したっけ?」というような戸惑いも見せていたが、「ブルゴーニュのテロワールという特殊な環境と優位性」を熱心に語り、「12世紀の修道士たちが適地・適品種という概念を築いた偉業」を心から讃えていた。講演後はサイン会が行われたが、氏の前には熱心なフランス人愛好家の長い列が出来、本国での氏の絶対的な人気を改めて実感。私も列に並び、束の間会話をする機会に恵まれたが、私の不完全なフランス語にも根気よく耳を傾けてくださったことが印象的だった。