GCC日本ツアー(?)プチ報告 大阪ヴァージョン

「ボンタン」って何?

 

 

 

 

 

須藤氏が主催する「GCC日本ツアー」が無事終了、参加して頂いた皆様にまずはこの場を借りて、お礼を申し上げます。

 

キュヴェ・コマンドリー・デュ・ボンタン・ド・メドク(Cuvee Comanderie du Bontemps de Medoc) 1961

 一時帰国した私も8月1日、大阪にて参加。そこで今回はこの試飲会で「謎のワイン」とされた「Cuvee Comanderie du Bontemps de Medoc 1961」について、遅ればせながら簡単に補足しておきたい。

 

Commanderie du Bontemps(ボンタン騎士団)とは?

 このワインの名前を成している「ボンタン」。日本語表記で「ボンタン」と書いてしまうと、私くらいの世代の人間なら、ノスタルジックな飴や、ヤンキー御用達であった例のパンツを思い出してしまいそうなのだが、ワインの世界では規模の大きさと結束の堅さで知られる、ボルドーの騎士団名であった。ちなみによく耳にする「騎士団」とは、その地のワインの名声を高めるために結成された団体で、そのエスプリは中世の騎士道に倣っていると言われている。また騎士団の主な活動は、栽培・情報の研究、生産者間の情報交換、そして消費者への広報だ。

 

 ボンタン騎士団が結成されたのは1949年。現在ではメドックを中心に、グラーヴ、ソーテルヌ・バルザックといったボルドー左岸のシャトーがカテゴリーに入り、ラフィットなどの著名シャトーも登録されている(正確な登録生産者名・数は調べるも、現時点では見つけられず)。またこのワインに関しては、作柄のよい年のみ、登録シャトーが優良なキュヴェを持ち寄りアッサンブラージュされる。過去にはラトゥールの元醸造責任者が醸造を担当した時代もあるようだ。

 ところでフランス語で「よい時(Bon temps)」とも解釈できる「ボンタン(Bontemps)」の本当の意味は、ワインの清澄に使う卵の白身をとく木製の椀のことである。「作柄のよい年=よい時」と醸造グッズをひっかけたようなネーミングは、ワイン好きの心をくすぐるものがある。そしてテイスティングしたのは、かの1961年。まさに「よい時」であり、シャトー名も持たない40年以上の時を経たこのワインが持つポテンシャルは、「偉大なミレジム」という概念の正しさを証明するのに十分すぎるものであった。一体1961年は、どのシャトーのキュヴェがアッサンブラージュされていたのか?資料が無いゆえ確認のしようは無いが、古酒の世界には良くも悪くも今では考えられない無茶もあるようで、基本的に人手のかかった丁寧な作りであることが多い。「もしかして格付けシャトーも入っている?」という推測も、案外外れていなかったりするのかもしれない。

 

ワイン・ファンの盲点?

 私が無知すぎたというか、抜けすぎていたことを最初にお断りするが、ラベルに大きく「ボンタン」と書かれているのを見ても、その場では何の事やら全くピンと来なかった。いや、試飲会にはワイン関係者をはじめ、お詳しい方が多かったのだが「ああ、それボンタン騎士団のワインだね」という指摘は、全く出なかったのである。

 しかし。「ボンタン」を調べるうちに、これは日本でも既に非常にメジャー(?)な存在であることが判明。なぜなら他の騎士団の例に漏れず、「ボンタン」には各界の著名人も騎士として選出されるが、日本ではなんと小泉首相や長嶋監督、またあのココ・シャネルや、ジャッキー・チェン(ミーハーな抜粋でスミマセン)も「ボンタン騎士」であったのだ。ネットで調べただけでもフランスのサイトではもちろんのこと、日本語サイトでも一般メディアから「Classe 30」といったワインの著名サイトまで、各所で幅広く紹介されている「ボンタン騎士団」。いやいや、マニアックな情報(?)ばかりを追いかけている私は、「ボンタン」に足をすくわれた。ワインに関わる仕事をして10余年、メジャーでしかも美味しさを伴ったワインを全く知らずにいたのである(と言いつつ、再渡仏後の計画の一つが「ヴァランセイの収穫祭」というまたもやマイナーなものなので、私のこの傾向は大きくは変わりそうにない)。

 ともあれ、近年の「ボンタン」を近いうちに飲んでみなければ、と思う次第である。