GCC日本ツアー(?)プチ報告 追記

「ボンタン 1961」は、4大シャトーのアッサンブラージュだった!

 

 

 

 

  先日、幣HPで取り上げたばかりの「ボンタン騎士団のワイン 1961年」。すると1通のメールが届いた。

 

― 確かこの年のボンタンワインはプルミエ・グラン・クリュのブレンドと聞いたことがありましたので調べてみました。間違いなく4つのプルミエ・グラン・クリュのブレンドだそうです。本当に贅沢な、また貴重な一本です。

 

 確かに試飲会でも主催者の須藤氏曰く、「4大シャトーのアッサンブラージュだった、と聞いているが、、、」。そして40余年を経てやっと黒トリュフの香りが開いてくる、といった典型的長熟タイプのワインが持つ風格と余裕は、その言葉を信じるに十分であった。だが資料が無い。

 しかし冒頭のメール送り主は、このワインに関する記述をも送ってくださった(Edmund Penninr−Rouselle著 「The Wine of Bordeaux 1979年発行第4版」)。それによると、

 

― 1961年で興味深いこととして、ボンタン騎士団のワインがある。この年のボンタンはスペシャル・キュヴェとして4大シャトーのワインがブレンドされ、ボルドーのバルトン&グスティエ社(Barton&Guestier)によって瓶詰め、ボトリング・ナンバー付である。

 

 そこで早速ボトルの写真を拡大してみると、瓶詰め社名は画像データの小ささもあり写真では見つけられなかったものの(こう言う時はじっくり手に取って見るべきだったが、このあたりも私は抜けていた)、「この特別ボトルNo.416は、騎士団のグラン・クリュ・クラッセ(ポイヤック)からのセレクションである」という表記がある。またフランスで20年ワインを買い続けている須藤氏の購入先は、特にリスクの高い古酒に関して非常に厳選されており、ボトル自体の真偽を問う野暮はここでは避けたい。確かにこれは、「贅沢な、また貴重な一本」だったのだ。

 

 どのワインにもボトルに収まるまでにドラマがあると私は思うが、特に古酒は時代背景の違いがドラマのスパイスとなって、ワインの味をほんの少し引き立ててくれる。最近で最もドラマティックだったワインはダンナが飲んだシャンパーニュ「エドシック 1907」で、残念ながら私は口にしていないものの、このワインを鑑定したクロード・マラティエ氏を取材する機会があり(ワイナート21号 CruCru Times「ワインな仕事 第一回」)、氏が試飲した時の様子は聞いているだけで、こちらの胸も高鳴った。

 ボトルとコルクという形が確立されたのは19世紀のことで、20世紀前半に古酒を飲めるというのは上流階級か、もしくはワイン生産者に近い人たちにほぼ限られていたのではないだろうか。その後も2回の戦争を経、畑・醸造ともに工業的な手段が主流となったことを思うと、20世紀中盤のワインが熟成の円熟期を迎えた姿に出会える私たちは(運が良ければそれ以前のワインにも)、非常にラッキーな世代なのかもしれない。

 古酒はもちろん日常酒ではないが、出会え、時間が許す時は、少しそのバック・ストーリーを探ってみるのも興味深いものである。

 

最後に

 

 この資料を提供してくださった毛利征三郎様に、この場を借りて深くお礼を申し上げます(文中の「エドシック 1907」も、氏のお陰でダンナは出会うことができました)。