小さなワイン・ニュース 10月 |
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あああ、レストラン「媚竈 (びそう、Restaurant
japonais bissoh)」のボーヌにおけるオープン(9月30日)は、まずは日本人にとって、まさに「待望」であった。
というのも、ディジョン始め、ブルゴーニュには結構な数の日本人が住んでいるにも拘わらず、「日本人シェフによる日本食レストラン」は今まで存在せず、在ブル日本人は和食に恋いこがれていたのである。またブルゴーニュ観光で「フレンチを制覇!」と息込んで来た日本人の多くが途中で挫折(?)、中華で気を紛らすか、パリまで戻って日本食レストランで息をつくしかなかったのだ(実際に折角取れた星付レストランの予約をキャンセルしてでも、パリではうどん屋に駆け込む人もいる)。
ここで「日本人シェフによる」と強調するのには、訳がある。なぜなら確かにパリを始め、地方にも「日本食レストラン」は存在する。しかしパリならその90%以上が、「外国人シェフによる日本食レストラン」。お断りしておきたいが、私は何も「外国人シェフ」をバカにしているのでは、断じて、ない。むしろその努力と勇気に、感服する。真面目に修行を積んだ人もいるだろう。だが実際それらのレストランで和食を口にすると、日本人としてはムムムム、、、と言わざるを得ないものが確率的に多く、また価格も決して安くはない。
一方、「媚竈」である。ここには開店直後から日本人だけでなく、ワイン生産者などフランス人も頻繁に訪れているようで、彼らはそのワインリストのセレクションとリーズナブルな価格設定を褒め、和食をワインのマリアージュを堪能しているようなのだ。これはもう、「日本食」以前に、一レストランとして訪れてみたいではないか!?
そこで前置きが長くなったが、きちんとこのレストランについて書きたい(住所などのインフォメーションは、このニュース文末に記載)。
シェフ、澤畠 樹彦(さわはた みきひこ)氏は、東京生まれの横浜育ち。あくなき食への探求から世界中をPC片手にバイクで移動、各地の貴重なレシピを記録、そして研修を受けたというが、その滞在国数がハンパではない。日本とフランスはもちろんのこと、韓国、台湾、香港、パキスタン、インド、ビルマ、タイ、ヴェトナム、マレーシア、ネパール、シンガポール、インドネシア、トルコ、イタリア、ドイツ、チェコ、ベルギー、オランダ、スペイン、ポルトガル、アイルランド、イギリス、クロアチア、ギリシャ、オーストラリア、ニュージーランド(約30カ国!?)、、、。これを食への情熱と呼ばずして、何と呼ぼうか!?よって氏が織りなす食ワールドは、「和食を知る日本人シェフとしての感性」をベースに、「食の都、ブルゴーニュを中心にしたフランスの厳選素材」、「アジアの技法」がフュージョンした「世界食」とでも言うべき、自由奔放な和食なのだ。また素材だけでなく、調味料に関しても化学的なものを排し、日本から直輸入の調味料を使用しているという点が、泣かせてくれる(これはフランスでは、本当に難しい)。
そして氏に、食の安全性に至るまで徹底をさせた理由の一つに、食を引き立てる「飲み物」の存在があった。多くのワインの生産者達と話し合い(私が氏に初めてお会いしたのも、訪問先のドメーヌであった)、一方で日本酒の杜氏さん達とも親交を深め、その真摯な姿勢に打たれた氏にとって、自身が提供する料理もその言葉を借りれば「ワインや酒と同様に、安全で心に染みわたるもの」でなければならなかったのだ。また自身はテイスティングを重ねながらも、最終的に「食とワインや酒のマリアージュに、正解はない」と言い切る柔軟さは、客を自由に遊ばせてくれるだろう。氏は語る。
「日本でもフランスでも食事のかける時間がよりいっそう短くなっているように思う。フランスでも共働きが多く、冷凍食品を専門に売る店が繁盛し、マクドナルドはいつも満杯・・・。スローフードが叫ばれて早何年も経つが、ワインこそスローフードの最たる物。そしてボーヌは紛れもなく、世界中のワインマニア垂涎の的であるブルゴーニュワインのメッカだ。私達は日本人として、長年の試行錯誤により生まれた、日本とフランス文化の融合を心ゆくまで楽しんで頂けることを、夢見てきたのです」。
また氏の世界を支える縁の下の力持ち、コーディネーター、サチコさんの存在も忘れてはいけないだろう。やはりフレンチ・ガストロノミーに魅せられた彼女は、JALを退職後ブルゴーニュへ。ESCディジョン「ワインとスピリッツの国際ビジネスマスター」の資格を取得した女性である。
ちなみにレストランの名前である、「媚窯(びそう)」とは、「竈(かまど)に媚(こ)びよ」。我々を支えてくれている下働きの人たちに感謝しよう、という意味がある。京都・大原(おおはら)にある「曼殊院 まんしゅいん」の玄関に、掲げられている言葉である。
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〜「Restaurant japonais
bissoh レストラン 媚竈 (びそう)」のインフォメーション〜
住所: 1a rue du Faubourg Saint Jacques 21200
Beaune France
電話番号&ファックス番号: (33) 03 80 24 99 50 (33はフランスの国番号。また日本からかける時は、0は不要)
営業時間: 昼 12h〜14h 夜 19h30~
定休日: 火、水
オススメ料理:
(魚料理) パリのランジス市場直送鮮魚でのお寿司やお刺身、紙包み焼きなど。
(肉料理) ボーヌ近郊農場の豚で作る生姜焼き、らふてい。ブレス直送のブレスチキン仕様の焼き鳥、ランド県直送の鴨料理。
(野菜料理) ボーヌのビオ生産者と提携した、「味の濃い野菜」使用した茄子田楽など。ビオ大豆から手作り豆腐もあり。
11月後半からは日本人の冬に欠かせない数々の鍋料理、おでん等もスタート。
ワインリストと、その特徴:
ブルゴーニュ、ロワール、シャンパーニュ、アルザス、ジュラ、サヴォワを中心に、北ローヌを加え、和食の繊細さが引き立つセレクション。また、日本のワイン(中央葡萄酒のグレイス甲州、丸藤のルバイヤートルージュ樽貯蔵)もあり。
日本酒と焼酎のリスト:
(日本酒)
乾坤一純米吟醸 |
泉橋 恵 海老名耕地 |
喜久酔 特別純米 |
喜久酔 特別純米吟醸 |
松の司 純米吟醸 |
大治郎 純米吟醸 |
まつもと 純米 |
凱陣 純米吟醸 |
達磨正宗 3年古酒 |
やっぱり満寿泉 |
masuizumi special
(焼酎) 吉兆宝山
(泡盛) やまかわ、珊瑚礁
一人あたりの予算:
(お昼のメニュー) 1.BENTO-BOX 18ユーロ(和食の詰め合わせ、コース料理をお弁当に凝縮。内容は前菜1品、ミニお寿司盛り合わせ、お弁当、デザート)
2.生姜焼きランチ、とんかつランチ、親子丼、牛丼、カツ丼・・など、何種類かが日替わり 13ユーロ(前菜、お寿司盛り合わせ、メイン、ご飯、おみそ汁、デザート)
(夜のメニュー) 1.BENTO−BOX 25ユーロ(アミューズ、ミニお寿司盛り合わせ、お弁当、デザート)
2.お寿司盛り合わせ 25ユーロ(アミューズ、お寿司盛り合わせ、デザート)
ある日のメニュー例:ブレスチキン焼き鳥、海老とブルゴーニュ茸の茶碗蒸し、お寿司盛り合わせ、茄子田楽、鮭とブルゴーニュ産セップ茸の紙包み焼き、鴨の陶板焼き、海草ご飯、抹茶寒天のあんこのせ、フルーツソースかけ
アクセス:
(車でお越しの方) パリ方面からお越しの方はオートルートA6号線を南へ、またリヨン方面からは北へ、「Beaune
Sud 24-1」出口で降ります。料金所から市内方面に直進、ひとつ目の信号を鋭角に右に曲がってから約30メートル。店を越えた先2箇所に無料駐車場あり。
(列車でお越しの方) パリからTGVでディジョンまで1時間40分。その後TERに乗り換えて約30分でボーヌ駅に到着。駅から直進、最初の信号を左へ。郵便局を過ぎてひとつ目の信号を鋭角に左へ。駅から徒歩約10分。
媚竈のホームページ:www.bissoh.com
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