パリのワインショップ巡り

 

 

パリにワインショップは山ほどあるけれど、「根っからのワイン好き」が経営している採算度外視かつ、個性、情熱あふれる店はやはり少数。ここでは現在通っている、お気に入りの店をご紹介。(ビオ関連のお店は、秋以降紹介予定)

 〜ワインショップに行く前に〜

 @ワインの仕事をしている人なら名刺は大切
  フランス人が見ても「ワイン関係」とわかる名刺を持って、最初ににっこり&堂々と挨拶を。フランス語に自信が無いなら尚更。辞書をひきひきたどたどしいフランス語でも、時間がある時なら根気よく耳を傾けてくれる。(もちろん、伝えたいことがないのに無理に話すことは迷惑)
  言葉の壁がありどこの誰かもわからず、向こうにとって目的がはっきりしなければ、熱心に通い詰めても関心を持ってもらうまで時間がかかる。
 

A紹介者がいればなお、ベター
  フランスは日本以上に紹介社会。他人は他人、知人は知人がおそろしくはっきりしている。紹介者がいれば一緒に行く方が断然良い買い物が出来るし、良い情報も得られる。

 B一言でもフランス語を
  これはワインの仕事をしている・いないに関係なく、ワインの感想などを一言でもフランス語で話す努力を。努力=誠意。誠意がある方が向こうにとっても可愛いはず(やはり人間可愛い気のある方が、チャンスも多い!)。フランス語が話せなくても、ワイン好きならワインに関する言葉は一言くらい出てくるはずだ。
 

C生産者巡りをしたい人なら
  日本の各ワインショップにはそれぞれ懇意な輸入業者がいるので、当然日本から生産者を訪れる時には輸入業者経由が確実だ。でもここはフランス!当然輸入業者は挟んでいない。卸を挟んでいてもとにかく生産者との距離が近い!となれば長年信頼関係を築いている彼らから、生産者を紹介してもらう方がいいにきまっている。
  もっとも、これはまずはワインショップと信頼を築くことが先になるが、結構「あそこなら知っているよ。行くの?紹介しようか」という会話は出てくる。誰と仲良しさんかはさりげなく聞いておくべきだ。
  もちろん紹介してくれる生産者はお店の人の個性が反映されているので、決して自分が探し求めているタイプの生産者ではないこともあるけれど、他人の物差しは時に自分の偏った嗜好の反省にもなるので、決して無駄にはならない。
 

Dもちろん、最後にはお礼を!
  店を出る時はもちろん、めるしっ!を。日本では「お客様天下」なのでお見送りされて当然な空気が圧倒的だが、こちらでは良い買い物をするため、良い情報を得るためには、面白い店ほどプロの助言者としての店主の存在は尊敬すべきものとなる。店主と対等に話せるようになって初めて、その店にとって「気になる」客となる。
  しかしそれ以前にフランスは挨拶社会だ。道にタバコを投げ捨てることよりも、店に入る際に「ボンジュール」の一言が無いことの方が、よほど無礼(というかアホ)にみなされる。店を出る時も同様。無言で出ていく外国人の客を「なんじゃ、ありゃ」と罵る彼らをよく見る。なので、感謝した時には尚更、照れくさいくらいお礼を言っても全く問題はない。私も店を出る時にはオーヴァッ、メルシッ、ボンジョルネ、ボンソワレ、思いつく限り言いまくる。
 違う国だから当たり前だが、とにかく対人関係の距離感が違う。日本流の傲慢はもちろん、謙虚さも役に立たないことも多いかもしれない。

 お店紹介の形式
名前
住所
電話番号
ショップの説明
保存状態
価格
 

*価格はパリの百貨店で一番ワインの品揃え豊富なギャラリー・ラファイエット(グルメコーナー改装終了。圧巻!)を基準にしています。

l’Epicurien
les Caprices de l’Instant
les Caves Taillevent
LAVINIA
La Cave des Papilles
Caves Auge

La Cave de Chapeau Melon

l’Epicurien

57,Av.du General de Gaulle 94160 St-Mande
пF
01 43 74 53 79
 

品揃えを一言で言えば、少数精鋭。しかも価格は郊外ということもありかなり良心的。店に置いているワインを完璧に把握しているダニエルとジャン・ピエールのおすすめを聞き、毎回ではないがINAOグラスでテイスティングしながら選ぶこともできる。若い彼らと同世代の生産者との交流も多い。
  フランスで日常ワインであるロワール、L&R、シュッドウエストは10ユーロ(¥1200)以内の価格差で品質がピンキリとなる。日常ワインであるからこそ「カリテ・プリ(高品質&お買い得)」を選びたい。そしてこの店は、この10ユーロの間を完璧に探し当てている。
  もちろん
Bourgogneなどの王道も古酒こそ少ないが、過剰でない程度にぐっとツボを押さえたセレクションにくらくら、、、。買いたいワインが必ずある。結局店を出た時には、両手にワインをぶら下げていることに。

ある日の買い物(1/30)
Mikulski  Meursault blanc 1998
Mikulski  Meursault rouge 1995
Mikulski  Meursault Cailleret rouge 1996
Clos du Tue-Boeuf  Cheverny la Gravotte 1998

計 4本 86,59ユーロ(約¥10、600)

保存状態BON!
店頭に置いてあるワインではなく、同じ銘柄を地下の倉庫から出してくれる。
 

価格:2割安

les Caprices de l’Instant

ショップ外観

12,rue Jacques-Coeur 75004
пF01 40 27 89 00
 

ワインへの真摯な公平さを感じるお店。ワイナートにもよく紹介されている。
  静かにしかし熱くワインを語るジェラールと、いかにもフランス人といった感じで比喩や逆説たっぷりの説明を展開するラファエル。全くタイプが違う2人だが、彼らが選ぶワインに共通していることがある。それは「土地の特徴が良く出ている」ということ。ジェラール曰く「気候が変わろうと、生産者が変わろうと、植える品種が変わろうと、その樹齢が変わろうと、土は変わらずそこにある」。
  そんな彼らなので時に厳しい発言も出るが、たった1本のワインを選ぶのにも大変親身に相談に乗ってくれる。グラン・ヴァンも置いているが、ある意味余り商売気は感じない。
  1ヶ月に約1回(不定期)、年間でテーマを決めてグランヴァンのワイン会も開催。(要問い合わせ&予約)

ジェラール氏

ラファエル氏

保存状態BON!
店頭に置いてあるワインではなく、同じ銘柄を地下の倉庫から出してくれる。
 

価格:2割安


les Caves Taillevent

199,rue du Faubourg Saint-Honore
пF01 45 61 14 09
 

  ここはご存じ3つ星レストラン、タイユヴァン経営のワインショップ。偏りのないセレクションや、各アペラシオンで評価の高いものを外さず置いているところは素晴らしい。店内も美しく、とても見やすい。
  でも、高い、、、。(日本のエノテカメンバーズカードを持っている人は5%引き)昔は高くても買ってしまうレアなブルゴーニュなどがオンリストされていたけれど、レアなものが入手困難なのはどの店も同じようで、死ぬほど欲しいワインが無い(レストランのセラーにはあるはず)。全国的にワインを集める力はすごいはずなので、上客になれば「裏リスト」も存在するのかもしれない。
  ただ、毎土曜に行われるテイスティング(終日。無料。毎回4−5種類)はお得。リクエストすればブラインドで出してくれるので、勉強になる。
 

ある日の試飲(2/2)

この日はロワール
Bourgeuil Cuvee Rodolphe  Dom.du Bel air  Pierre Gauthier  1998
Chinon les Cornuelles V.V  Serges et Bruno Sourdais 1999
Montlouis Clos du Breuil  Francois Chidaine 2000
Anjou les Bergeres  Jo pithon  1998
 

保存状態BON!
奥のセラーの美しさはさすが!品すら感じます。
 

価格:同じくらいか、もしかしたらもっと高いかも、、、。


LAVINIA

3−5 Boulevard de la Madleine 75001 Paris
電話:01−42−97−20−20

ファックス:01−42−97−54−50

E−Mail:laviniafrance@lavinia.fr

保存状態:BON!

価格:
同じくらいか、もしかしたらもっと高いかも、、、。

  今年9月18日にマドレーヌ広場近くにオープンしたワインショップ。スペインのマドリッド、バルセロナに次ぐ3号店である(詳しくは「フランスの小さなワインニュース 9/18」参照)。
  この店の凄いところは
「パリの小さなワイン新聞 Le Petit Bar a Vin」の編集長に「まるでFOUCHONとCave AUGEを足したような」と言わせてしまう品揃えにある。つまりフォーションの品揃えのゴージャス路線を走りながら「よりレアなゴージャスさ」であり、同時に「好きな人達にはたまらない」小規模なビオ系生産者の激レアキュヴェも平然と常備している。どのタイプのワイン好きにとっても買いたいワインが必ずある。レアキュヴェの入荷も結構めまぐるしいので足繁く通うことだ。
  またパリ店の品揃えをした人は各生産者とのパイプが非常に強い人である。結果オープン間もないことも手伝って、生産者がパリに来た時には必ず覗いてみる店にもなっているようだ。特に秋から春にかけてはパリで試飲会が多いので、サロンの翌日等に来ることが多いようである。憧れの生産者にパリで出会う確率の最も高い場所(?)としてもお薦めできる。

  ところで2階のレストラン・スペースは現在(2002年11月16日現在)昼のみの営業であるが、こちらもパリのエグゼクティヴ・クラスにかなり受けているようで、予約をお薦めする。

La Cave des Papilles

         35 Rue Daguerre 75014 Paris
    最寄りのメトロ:CEDenfert Rochereau

    電話:01−43−20−05−74

    ファックス:01−43−20−22−31

    E−Mail:
lacavedespapilleslibertysuf.fr
    www.lespapilles.fr

    保存状態:BON!

    価格:2割安
 

 生鮮食品屋が並ぶ美味しそうな通り、Rue Daguerreの真ん中あたりに一際目立つ黄色い壁のワイン屋さんがある。それがLa Cave des Papilles(ラ・カーヴ・ド・パピーユ)だ。2001年3月12日オープンとまだ新しい店だが、既に自然派ワイン愛好家から熱い支持を得ているワインショップである。
 カーヴの責任者であるジャン・パスカル氏を始め、ピエール氏、ジェラール氏が自然派ワインにこだわる理由と尋ねると一言、「その味わいが好きだから」。しかしシンプルな答えを体現する品揃えには、彼らの探求心、生産者との親交の深さがきちんと見える。ジャン・パスカル氏が「ベスト3」と断言するジェラール・シュラー(アルザス)、チェリー・アルマン(コルナス)、レオン・バレル(フォージェール)に至っては蔵元にも既に無いのでは?と思われる幻キュヴェも、時にひっそり下のカーヴに眠っているようである。

 全体的な価格の安さ、料理用のワインでも料理名を言えば相談に乗ってくれる気軽さもポイント高し!だ。

お店の看板

ピエール氏

Caves Auge

お店の外観

16 boulevard Haussmann
最寄りのメトロ:HSt Augustin
電話:01−45−22−16−97
保存状態:BON!
価格:1割安

 1850年創立という老舗というよりはむしろ、フランスワイン業界で恐らく知らない人はいないマーク・シバ氏が率いるワイン・ショップである、ということろが凄い(あのLAVINIAのフランスワインの品揃えは氏のセレクションである。つまり生産者とのパイプの太さも含めて情報の要にいる人なのである)。
 約1200種のワイン・スピリッツが、壁面に、通路に文字通り所狭しと積み上げられる店内は正直言って居心地が良いとは言いかねる。というのも常にスタッフが忙しく立ち働いているので、一箇所に立ち止まっていようものならスタッフの「パードン」の声で移動を余儀なくされるからだ。それでもオーソドックスなワインのレア銘柄・ミレジムから上昇気流に乗った自然派ワイン生産者の最新キュヴェまで、ある時はひっそりと、ある時は無造作に置いてあるこのお店は「足を運ぶべし!」である。忙しそうなスタッフも、相談には明快かつ親切に答えてくれる(ちなみにLAVINIAとかぶっているアイテムは当然ながら微妙にこちらの方が安い)。

La Cave de Chapeau Melon

ショップ外観。左にいるのがオリヴィエ・カミュ氏。この日は生産者を招いての試飲会。路地まで客が溢れる大盛況だった。

92,rue Rébeval 75020
最寄りのメトロ:AJBelleville JPyr
éé
電話:01−42−02−68−60
保存状態:BON!
価格:他店と
比較対照は出来るワインが少ないので、なんとも。財布に痛い価格のワインが無いことは確か。

  ワイナートでも紹介したこのお店、オープンは当初の予定より少々遅れ2003年5月上旬になったものの、このカーヴはパリ中の「ヴァン・ナチュール」派の期待を倍返し(?)にして、快調な滑り出しを見せている。品揃えは勿論、ヴァン・ナチュールで、種類は決して多くないが「あそこに行くと、信じられないキュヴェがあるのよねぇ」とファンを唸らせるところは、ある意味「ヴァン・ナチュールの最尖鋭」と言えるだろう。
 仕掛け人であるオーナーはフランス・ヴァン・ナチュール界の知る人ぞ知るキーマン、オリヴィエ・カミュ氏。吸い込まれるような青い瞳の氏は、ご近所にある超人気のビストロ、「バラタン」のプロデュースを手がけた人でもある。
 スッキリとセンスの良い内装や趣味の良いBGMは、ここが中華街の外れであることをあることを忘れさせ、このギャップもこのカーヴの大きな魅力である。