3月20日〜25日

〜 「偉大なるブルゴーニュの日々」にて、
テイスティング・マラソンを終えて 〜

 

 Les Grands Jours de Bourgogne (偉大なるブルゴーニュの日々)」に3度目の参加(「フランスの試飲会情報 2−3月」参照)。

生産者巡りでは一軒一軒とアポイントを取るのは時間的にも経済的にも限界があり、また私の場合カーヴで利くと、どうしても多少の感情移入は免れない。しかしこういう試飲会では一日に何十という生産者の、百を超えるワインを冷静に利くことが出来るので大変貴重で有り難い。また今回、生産者が提供していたワインは2004年が多かったことにも助けられた。なぜなら2004年はテロワールや生産者の個性が表れやすいミレジムであり、またその味わいは乱暴に書けば「濃厚」系ではない。これが酷暑の2003年のものなら、時にグルナッシュのようなピノノワールの味わいに翻弄されて、比較試飲という点では極端に難しくなり、味覚的には激しく疲れる。濃厚民族(?)からは「2003年の後は、2005年のリリースを待て」とまで言われてしまう2004年であるが、私的には試飲の進めやすさという意味でもなかなか魅力的なミレジムであった(2004年の簡単な総評は生産者巡り 〜「Les Grands Jours de Bourgogne (偉大なるブルゴーニュの日々)〜」に記載)。

 

しかし。裏話的にはまたもや「天気」である。いやぁ今回の期間中の天気は本当に酷かった。平均的には最低気温3℃、最高気温13℃くらいが続き、これはメチャクチャ寒いわけではない。だが「日本の梅雨?」というくらい、しとしとと雨、雨、雨。ごくたまに太陽が除き、一瞬空は青みを取り戻すものの、基本的にはグリ(灰色)な空。それが更に暗転すると空気が基本的に都会よりも綺麗なせいか、凄みを持つような黒さを帯びる。ちょっと怖い。

止めは金曜日夕方の夕立。私がブルゴーニュで経験した中では最強と言えるその雨をついてポマールからジュヴレイ・シャンベルタンまで車で移動したが、対向車と自身が跳ね上げる水しぶきで視界がしょっちゅう遮られる。まるで遊園地のウォータースライド系の乗り物に乗っているようで、全ての車が徐行していてもかなりスリリングだ(ボーヌ〜ポマール間は通常10分くらいだが、要30分!)。運転してくださった方はブルゴーニュの道に慣れた方だったが、この時期のみに来た方々が、レンタカーを借りてこの悪路を移動していたのかと思うと、運転能力の無い(一応免許はあり)私としては頭が本当に下がる。

 

ところでブルゴーニュは、3月上旬に大雪が降った後は雪解けが始まり、それからは雨続きであるらしい。国道沿いの畑の中には水浸しのものもあり、ポマールの村中を流れる小川の水流の飛んでもない速さも雨の多さを物語っていた。では正確な降雨量は知らないものの明らかに多そうな今春の雨が、「今年のミレジムにどう影響するのか」を考える時、現時点では良いのではと思う。なぜなら2005年のブルゴーニュは非常に乾燥しており(「気温が低かった2003年」と例える生産者もいる)、この乾燥で疲労していた畑は潤ったと思われるからだ。また今夏が再び乾燥に見舞われた場合、今春に蓄えた地下水がものを言う。ともあれ2006年が「ブルゴーニュの畑に優しい」天候であって欲しい。ある生産者の言葉が記憶に残る。

2006年は、畑に休息が必要だ。と言うのも、世紀の酷暑であった2003年、病害に見舞われた2004年の後、2005年は簡単だったように思える。しかしそれでも乾燥は明らかに畑を疲れさせた。前年の疲労とは蓄積していくものだから、2006年は出来るだけ負担をかけたくないんだ」

一般的に「不出来」と言われ、値が下がるミレジムはある。しかし最近は「ミレジムとは天候の個性なんだから、それはそれで楽しめばいーじゃないか」と、心から思うようになった。それぞれのワイン産地が異なる天候を経つつも、結果的には末永くも各産地の個性を健全に保つことが出来ればよい。特に地球温暖化で言えば、100年後このまま気温が上昇すれば、現在のヨーロッパのワイン産地はすべて北上せざるを得ないと聞く。畑だって可能な楽は少しでも味わってほしいし、楽な年が「平凡」なミレジムに終わったとしても、それは長期スパンで見れば悪いことではない。各ミレジムに対する分析は私自身も書いているが、まずは健康な「土地(畑)ありき」。「ミレジム」という概念が「出来・不出来」を語るためだけに存在すればそれは残念なことで、「その土地(畑)の個性がどのように表れたか」というワイン的な「楽しみ」として認識される日が来て欲しいと思う。