〜 Les vendanges 2005 Domaine Claude DUGAT Vol.1〜

2005年 ブルゴーニュの収穫風景 ドメーヌ・クロード・デュガにて その1

「期待大? 2005年のブルゴーニュ」
(Gevrey−Chambertin 2005.9.15〜9.21)

 

 

 

「ノワール」とは「黒」だが、まさにピノ・「ノワール」。紺色を帯びた黒に近い果皮が成熟を物語る。クラピヨ(プルミエ・クリュ)にて。

ブルゴーニュという地域レベルで病害や雹害に泣いた2004年に比べ、確かに2005年は、少なくとも心配材料は耳に届かなかった。むしろブルゴーニュワイン事務局からのポジティヴな報告や(小さなワインニュース 9月 〜 ブルゴーニュで、例年より早めの収穫始まる 〜」参照)、実際に現地で畑仕事に従事している人たちからの声は、かなり期待を持たせるもので、現地入りした時には高揚が抑えられなかった(偉大と言われるミレジムを、自分の手で摘みたいではないか)。

そして!私がデュガ家の畑で見たのは、なんとも健康なブドウたちだった。もちろんデュガ家の手入れは毎年行き届いていることは言うまでもない。酷暑で著しく収量が落ちた2003年、苦労を強いられた2004年においても、収穫時に見たブドウは美しく、また最終的に発酵漕にたどり着いたブドウとは更に淘汰されたもののみである。しかし「問題の無かった年」とは、上手く書けないが、その美しさは圧倒的に力強いもので、風土と人の努力を120%享受したオーラを放つ。腐敗果や乾燥果は殆ど無く(これらがゼロであることはあり得ない)、いかにもぎゅっと風味が詰まった風情の黒々としたブドウが、株の下方に楽しげに連なる。私がデュガ家で収穫に参加するのは今年で3回目であるが、当主クロードも「過去と比べても秀逸で、抜きん出て健康なブドウたちだ」と語る。またこの健康さゆえ、デュガ家での収量は、例年より並みかやや高めが予想されている。

 

今回、「2005年 ブルゴーニュの収穫風景 ドメーヌ・クロード・デュガにて その1」では、デュガ家やブルゴーニュの収穫概要をレポートしたい。

 

収穫日の開始の早さ

 ドメーヌ・クロード・デュガでの2004年の収穫が始まったのは9月15日、昨年よりも10日早く、また例年と比べても早い。ブルゴーニュワイン事務局によると「収穫が早めの年は、偉大なミレジムになることが多い」となるが、クロード曰く

「8月に十分な日照量があり、同時に乾燥傾向にあるとブドウの最終の成熟段階は早まる傾向にある。8月のこれらの現象はもちろん喜ばしいことで、逆に言えば『待たねばならない年』とは、何らかの不十分さが夏にあったということ。また雨の降りやすくなる9月下旬〜10月上旬に収穫するリスクもなくなる」。まずは今年のこの早さはポジティヴな結論だったと言えそうだ。 

東京の「レストラン ル・ブルギニョン」から送られた、収穫期間の天候を祈る絵はがき。ドメーヌの軒先に飾られていたが、お陰で晴れ続き!?

 

 

今年のブルゴーニュの乾燥

ヨーロッパ南部(特にスペイン)での異常な乾燥は、ワイン雑誌のみならず様々な媒体で、地球規模で杞憂されるところである。しかし幸いにもブルゴーニュにおいては「乾燥が続いた後の、8月後半のタイムリーな小雨」という形で顕れ、それらは病害や腐敗果の発生を自然に抑えつつ、ブドウの成熟・最終段階を促す形となった。

9月上旬はブルゴーニュでも湿度が高めで推移したが、それでもブドウに悪影響を与えるものではなく、また収穫期間中も肌で感じる「乾いた冷たい北風」は、時に収穫カゴを風向きに反して持つと軽くあおられるほどで、同時期に収穫を行った生産者たちは、「収穫中の悪天候」という最後のリスクも避け得たということになる。

ちなみに「雨がブドウに悪影響を与えない程度に少なく」「例年よりも早い目、かつ理想的な環境下での収穫」「健康で、糖度・酸度のバランスが良く、ピノノワールは果皮の色づきも素晴らしい」と揃うと、私は単純にかの1990年を思い起こしてしまうのだが、もっとも1990年を知る人に言わせると、「全てがもっと別格にコンスタント」であったらしい。

 

ミランダージュの多さ

ミランダージュを起こした房。シャルム・シャンベルタンにて。食べると味覚レベルで分かる甘さや風味の違いがある。

  今年はとにかくミランダージュ(花震いにより結実不良を起こしたブドウで非常に小振り。果皮と果肉の接触面が多く、凝縮した糖度・アロマを持つ。収量は落ちるが品質を求める生産者には歓迎される)が多い。これは現時点ではデュガ家で確認しただけに留まるが、3年間(プリュレ・ロックも入れると4回目となる)ブルゴーニュでこの時期のブドウを、畑や選果台で文字通り「一房ずつ」見ていると、感覚的に「ミランダージュが多いか、少ないか」は分かる。私は生産者ではないのであくまでも推測だが、こういったブドウが冷涼と言われる産地で十分に加わることは、酸・糖度・アロマにおいて骨格や豊かさをもたらすのではと思われる。
 

選果台の進化

 デュガ家の選果が厳密であることは、このHPでも何回も触れてきた。そして真の選果とは何も選果台のみで行われることではなく、剪定の時期から始まっている。

 そのデュガ家であるが、昨年から視野に入れていた「微振動タイプ」の選果台2004年 ブルゴーニュの収穫風景 ドメーヌ・クロード・デュガにて その1」参照)をついに今年度より導入、また畑から醸造所へのブドウの運搬方法も、ブドウへのダメージを最小限に抑える小カゴに変わった。 

 神様といわれるようなブルゴーニュのドメーヌの収穫風景が意外と牧歌的(?)であることはよくあることで、かのデュガ・ピィやサンテミリオンの「グラシア」のように贈答品ごとく薄いカゴにブドウを並べ、冷蔵車で運搬するドメーヌは極・僅少だ。そして既に評価の高いデュガ家も、抑えるべきポイントは抑えた上での、この「牧歌的系」であった。

話は少し逸れるが、個人的にはこの牧歌的な雰囲気も味わいに関係しているような気がしていている。同時に特にデュガ家のような熟練の収穫人が揃うドメーヌでは、収穫方法の「究極の厳密さ」は最重要事項では無いようにも思う。なぜなら既にされるべき細心の手入れは年間を通して行われ、収穫人は摘むべきブドウを把握しており、とどめには容赦ない選果台チームが待機しているのだから。つまり全く理論的ではないが、ヴァンダンジャー(収穫人)が最後まで楽しく飽きずに(?)和気あいあいと愛情すら持って、ブドウに接してあげることの方が大切なのでは、と感じているのが正直な感想だ(これは批判では全くないが、収穫中のデュガ・ピィの畑はその濃すぎる緊張感ゆえ、入ることすら躊躇われる)。

しかしデュガ家がもし収穫方法にまで「究極の厳密さ」を導入した時には、どうなるのか?という関心もずっとあった。しかもそれが行われたのが「ピカピカにブドウが健康な年」にである。これは試飲が楽しみでならない。ちなみに流石、熟練ヴァンダンジャーが揃うチーム・デュガである。収穫方法の変更に誰も戸惑うことなく、変わらず和気あいあいと収穫は続いたのであった。

 



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チーム・デュガ。収穫最終日、ラ・ボシエール(ヴィラージュ)の区画にて。 ご存知、クロード・デュガ氏。グリオット・シャンベルタンにて。

 

 

次回、「2005年 ブルゴーニュの収穫風景 ドメーヌ・クロード・デュガにて その2&その3」では、収穫風景の日常を、日記形式でレポートしたいと思う。またブルゴーニュ全域の収穫公示日の報告はSOPEXAの情報を待ち、他の生産者たちの声は別媒体でレポートすることになりそうだ。

 

A la suite a Vol.2 !