7/29〜31  〜ボルドーで美しく?〜

 

今回のORGANISATEUR

 今回はボルドー在住の先輩に、全て依頼。

 

今回のチーム・デギュスタシオン

 先輩と2人で。アキテーヌ県認定のガイドの資格を持つ先輩はボルドーのワイン事情に大変詳しく、フランス語はネイティヴ級。大船に乗った気分で非常にラク。大感謝。

 そして女性2人が目指す目的は、ずばりヴィノテラピーだ!

 

今回のスケジュール

7/29

ボルドー着

15:00 Chateau PALMER見学

マルゴーの畑を冷やかす 

7/30

スミス・オー・ラフィット着

10:00〜12:30 コーダリー(ヴィノテラピー)お試しコース

14:30 SMITH HAUT LAFITE見学

15:30 再びコーダリーへ

7/31

午前中ボルドー市内散策

帰パリ

 

 ワイン産地巡りをしていると、いかにボルドーが大きな都会であるかに驚かされる。そして今やヴァカンスのハイ・シーズンに突入。都会であるが故に、今は観光客ばかりのがらんとした風景を想像していたら、とんでもなかった。

 街中至る所で地面が掘り返されている。工事、工事、工事。それに伴う騒音と土煙。なぜならボルドー市ではトラム(市街電車)を2003年末完成予定で、市内に走らせる予定なのだ(先輩に言わせると、予定通りに完成するわけがない)。当然工事中である現在の景観は美しくなく、それよりも問題なのが交通渋滞。普段は考えられないところで車が詰まる。先輩は「今は決して市内には車で行かない」と言うし、タクシーの運転手は口を揃えて「カタストロフ(壊滅的)だ」と言う。

 果たしてボルドーは、市街電車が優雅に走る情緒溢れる都市となるのか、それとも交通渋滞のひどい都市となるのか?

 

シャトー・パルメ 2001年は?

@ステンレスタンク A各ステンレスタンクの温度をコントロールするパネル

 

久しぶりのボルドーのシャトー訪問は、シャトー・パルメで始まった。このシャトーに関しては既に素晴らしい資料が揃っているので、テイスティングも含め個人的な感想を何点か。

 まず驚いたのが一次発酵(5週間目まで)が1995年以来、全て20,000L入りのステンレス・タンクで行われているということ。理由は温度管理と衛生管理が容易であるからだ。→写真@ 木樽全くを使わなくなったことで風味に影響は無いのだろうか?ちなみにこのタンクは全部で42個あり、各パーセルずつ醸造できるようになっている。うち7つのタンクは内部が二重構造で、これはプティ・ヴェルドなどの小さな区画もそれぞれに醸造するためだ。またタンクの形が円錐台形なのは、果帽の下部(液面との接触面)の面積が広くなる分、マセラシオンが容易になるかららしい。→写真A

 シャトー・パルメの熟成期間は21〜22ヶ月だが、熟成庫は全部で3つある。一次発酵直後各パーセル毎に熟成させるセラー、アッサンブラージュ後用のセラー、そして2年目以降瓶詰め迄の期間を待つ為のセラーである。→写真C 各熟成段階に適した澱引きを行う。だが全てのセラーは地上階(或いは半地下)にあるのだが、意外にも空調設備は入っていない。しかし十分に涼しい理由として壁の厚さの他に、樽を寝かしてある足場の内側が剥き出しの土になっているから等がある。自然に委ねているのだ。→写真B 

 又、清澄は精製アルブミンでもほぼ同じような効果が得られ容易なのだが、伝統的に卵白で行う。では清澄の時期、余った黄身はどうなるのか?実は余った黄身で造られたのがボルドー名物「カヌレ」と言う説がある。他の生産地では黄身をどう処理しているのか気になるところだ。

 最後に澱引きは重力を利用した細かい作業の下、行われる。

 全体的にはごく伝統的なのだが、パルメも果汁の濃縮手段としてエントロピー(減圧を利用した濃縮)を導入している。エントロピーは逆浸透膜法よりも新しい動きで、デュクリュ・ボーカイユなど従来逆浸透膜法を用いていたが、新たにエントロピーも購入したシャトーもあるようだ。ワイン生産地としては降雨量の多いボルドーにとって、特に雨の多い年などはやはり有効な手段であるらしい。「ワインに手を加えず、伝統的に」という定義は、生産者、産地によって当然ながら解釈は変わり意見が分かれるところだろう。

B樽の下。より低温に保つために土が剥き出しになっている C2年目以降の熟成庫。窓の向こうにはシャトー・マルゴーが見える

 最後に3月にアッサンブラージュを終え、まだ樽の中にある2001年のキュヴェを試飲。柔らかな赤・黒系果実が溢れ生き生きとした酸がある味わいは、既に心地良いものだが、スパイスや、木、根菜などの野菜、またスーボワやトリフに遠い将来いずれ変わるであろう植物のニュアンスが

感じられず、深み、複雑性に欠ける。これがグラン・ヴァンでなければ楽しいワインなのだが、グラン・ヴァンとして価格も踏まえて考えると、2001年のパルメは物足りない。さて評論家の方々はどのような答えを出しているのだろうか?

ああ、ヴァンダンジュ・ヴェルト、、

 マルゴーの畑を見に行った。途中マルゴーの畑で10人近くの人達が何やら作業をしている。そう、ヴァンダンジュ・ヴェルトだ。作業が終わっ

Dヴァンダンジュ・ヴェルト。運命を分けた(?)ブドウ達 Eマルゴーのブドウ。少し色づきが見られる

た畑を見ると、無惨にも(?)選ばれなかったブドウ達が地面にごろごろ。→写真D 上部のブドウが切り落とされているようだ。

 小石混じりの土は手で簡単に掘れるほど柔らかく、ほの温かい。土の軟らかさや、支えの針金にぶら下がっているコンフュージョン・セクシュエルに(蛾除けのフェロモンの一種)、「畑を丁寧に手入れし、なるべく化学薬品は使いません」という気概を感じる。盆栽を思わせる樹齢の古い木が、既に色づきが始まった新しいブドウを付けている様子は産地を越えて感動的だ。→写真Eそしてやはりマルゴーの畑には健康的な品があり、気持ちが良い。

 ブドウの実を食べてみると当然ながら鋭い酸味と、カベルネらしい収斂味で口中が一杯になった。






スミス・オー・ラフィット見学

F畑の中には不思議なオブジェが??? Gスミス・オー・ラフィットでもヴァンダンジュ・ヴェルトが

 ウサギの不思議なオブジェを横目に畑を横切り、不思議な動物の鳴き声を聞きながら、スミス・オー・ラフィットのセラーに到着。スミス・オー・ラフィットでもパーセルにより、ヴァンダンジュ・ヴェルトが既に行われたようだ。→写真FGHIJ

 カティアール夫妻がスミス・オー・ラフィットを獲得してから、パーカー・ポイントは高くなりつつあるが、現地では「まるでカリフォルニア・ワイン」という声もあるとか。よくある話だ。今回このシャトーを訪れたのはヴィノテラピー(ワイン醸造の際生じるブドウの絞り粕等を用いたエステティック)が目的だったが、乱暴な言い方をすれば、ボルドー初のヴィノテラピーと言い、コマーシャルであれ常に新しい可能性に挑戦している生産者は、消費者として好ましい(ただし量産は論外)。

 

Hセラーの周りで聞こえる奇怪な鳴き声の主はこちら。クジャク親子がうろうろ I 除梗機

 このシャトーで珍しいのは、ブドウ園内に専用の樽工房を持っているということ。→写真K

もちろん専用の職人もいる。18ヶ月の天日乾燥後、年に400個のバリックをここで生産する。スミス・オー・ラフィットが年間に必要とするバリックが800個なので、約半分を自分たちで造っているのだ。1日に生産できるマックスは2個らしい。

 見学の最後は1997年の赤と、1999年の白を試飲。赤はカシスなどの黒系果実や、カベルネ由来のピーマン、新樽のカフェ、そしてグラーヴの特質であるミネラルを感じるまとまりの良さ。甘味もあり各特質がバランス良く出ているが、タンニンの複雑さ、酸がやや欠けるように思われる。グラン・ヴァンであるのなら、やはりもう少し全体的な深みが欲しい。

 白はソーヴィニヨン・ブランの特質が非常にはっきりと出ており、好印象。桃、エストラゴンなどの青いハーブ、草、藁。厚味があるが、決して嫌味が無く、乾きのない辛口に仕上がっている。もう少し繊細な酸があれば、赤と同様深みが増すのではと思われた。

→写真L

 

J破砕機とそのパネル
K樽工房 L熟成庫。試飲はここで