8/ 5 〜8 〜シャンパーニュ、アンコール!〜

 

今回のORGANISATEUR

 今回は「GRAND CRU CLUB(グラン・クリュ・クラブ)」の須藤氏が旅程から配車、そして生産者とのアポ取りまで全て手配。私はベタン片手に、サロンのみアポゲット。車があると素敵な寄り道、つまり気ままに憧れの畑や生産者の家の玄関先(?)に立ち寄るのことができるのが最高の魅力!

 

今回のチーム・デギュスタシオン

 須藤氏、7月末まで須藤氏が経営していた「Restaurant TAIYO」に勤務していた女性とその友人、そして私の計4人。

 

今回のスケジュール

8/5

Vertus(コート・デ・ブランの村)着

8/6

10:30 Yves LOUVET訪問

15:00 GATINOIS訪問  

8/7

10:00 SALON訪問

ランス散策

この後、私は帰パリ。他のメンバーは翌日PERARDEL本店(ワインショップ。ボーヌ郊外にもあり、ブルゴーニュでワインを買うなら絶対ここ!煩悩の嵐)へ

 

 本当にヨーロッパの天気には泣かされる。先週まで南仏だけではなく、パリまでが33度、34度という猛暑だった。セーヌ川沿いでは今年できた人工ビーチで、ブーローニュの森でも皆肌を焼くことに専念している。

 しかし!今週の手のひらを返したような寒さは何?9時過ぎでもまだ明るいとはいえ、夏至だった6月と比べると日は確実に短い。ノースリーブ、短パンの観光客とセーターや薄手の革ジャン(本当に!)を着込んだフランス人の姿が、同じ季節の同じ町に普通に存在する。このまま秋になってしまうのだろうか、という寂しさがちらりと顔を覗かせる。一瞬の夏を一年分楽しみ尽くしてしまおう、というヨーロピアンの気持ちが分かる気がする。

 そして日本と同様、地域によって気候が全く違うのもフランス。もしかしてシャンパーニュは暖かかったりして、という気持ちも見事に裏切られやはり寒かった、、、。しかも雨。もっともブドウにとっては8月後半から9月の最後の成熟期に太陽が必要なのは当然だが、この時期はただ晴天続きというだけでも「ニュアンスに欠けて」しまうそうだ。自然は誰にとっても微笑んでくれるわけではない、ということか。太陽が恋しい。

 

伝統的な農業?

 

イヴ・ルーヴェの看板。トキシエールの町自体が分かりづらいが、もしこの看板を見つけたら是非試飲してみたい

8月に入り、とにかくアポが取れない。そんな中でやっと取れたアポの1件、Yves LOUVET(イヴ・ルーエ)へ。このメゾンはBouzy(ブージィ)の隣、Tauxieres(トキシエール)という村にある。だがベタンの評価によると、「ブージィの隣り、という日陰の身でありながら、品質はブージィのグラン・クリュ、例えばボランジェからそう遠くはない」とある。こういう生産者は「隠れた秘宝」を探すようで胸がときめく。

しかし醸造責任者である男性はやはりヴァカンス。対応してくれたのはおばあちゃん(彼のお母様)と、ポール君(2歳!)。おばあちゃんにしっかりと価格表を渡されてから試飲。東洋人の来客が珍しいのかポール君も私達の側を離れない。時々おばあちゃんが彼にシャンパンを舐めさせている。こういう風景は一瞬微笑ましいのだが、彼が将来偉大な醸造家になれば逸話に、万が一アル中にでもなれば洒落にならないだろうなぁ。

そして予想通りこちらの質問に対するおばあちゃんの受け答えはチンプンカンプンで(もっともおばあちゃんの気持ちを代弁すればこうなる。「この人達、わかりにくいフランス語でなんでこんなことばっかり聞くのかしら?買うの、買わないの?」)この時点で訪問記を書くことは断念。しかし最後のダメモトで「農作業で何か特徴はありますか?」と尋ねるとおばあちゃんは胸を張って「伝統的な農業よ!」おおっ!期待できる。おばあちゃんの口から語られる畑仕事が案外厳密なビオ?それとも、日陰といわれるこの土地、トキシエールであり続けたことの大手にない苦労?置いていたメモとペンを再び手にした。

「ウチは本当に伝統的。まず、麦も植えているの!」。へっ???「それに陶器なんかも焼いているわ」。

、、、、。確かに。それも古くからこの地に根ざしている生産者にとってはごく自然なことだろう。麦を植え、陶器を焼き、ブドウに適している土地、ということでブドウも植えた。非常に伝統的だ。でもそれは期待していた答えの方向とは余りにも違う、、、。(同行者曰く、私はこの時点で無意識に再びメモとペンを置いていたそうな)。

しかし総じてワインの出来は良く、特にミレジム1994は、ピノノワールの艶が綺麗に表現されている。カリテ・プリ(お買い得)だろう。結局4人で2ダースほど購入(この時だけはおばあちゃんは高齢の女性とは思えないほど荷造りと会計が機敏であった)してメゾンを後にした。

小さな生産者への訪問は生産者本人が出てきて、かつそのワインが素晴らしいと非常に盛り上がるが、こういうケースも多々ある。今回はワインが素晴らしかっただけに勿体ない。次回に期待ということで。そしてこちらも彼らの日常に割り込んで訪問させていただいているのだから、謙虚さを失わずにこちらの意志を正確に伝えて生産者本人とアポを取る、ということは結構難しい。

 

ドン・ペリニョンの町

 

ドン・ペリニョン様、ありがとう。そして明日も元気で飲めますように

 ドン・ペリニョンの功績については改めてここで書く必要もない。では彼が1715年に亡くなるまで47年間酒庫係を務めたというオーヴィーレール修道院とは、どんなところなのだろうか?

 修道院のあるオーヴィーレールはエペルネを少し北上したところにある、坂の多い小さな町だった。その町を中心に向かってかつ、坂を登っていくように進んでいくと、その修道院はある。青々とした蔦が絡まる修道院は想像していたものよりも遙かに大きく、とても私のデジカメでは収まりきらない(撮ったとしても、「蔦の絡まる壁写真」で終わり)。そしてここもエペルネの観光コースに組み込まれているのか、観光バスが2台付けていた。外見は意外に明るい雰囲気である。

 しかし中に入るとお祈り中の人達もいて、非常に厳粛な雰囲気だ。雨上がりの優しい光が射し込んでいる。ひんやりとした空気。足音をたてないように、自然に歩が遅くなる。そして小さいが手入れの行き届いた美しい祭壇。ドン・ペリニョンに感謝の祈りを捧げる。

 酒庫はどこにあるのか分からなかったが、シャンパン好きが感謝の気持ちを捧げるのにはこの修道院ほど相応しい場所は無いだろう。絵葉書にそのまま使えそうな小さな可愛らしい看板が至る所に掲げられた軒並みも、見ているだけで楽しい。そして町中のレストランでは勿論シャンパンが格安でスタンバイ。エペルネまで来たなら、お昼時にでもちょっと立ち寄ってみたいおすすめの町だ。